離乳食最初のつぶしがゆは10倍がゆ?
離乳食の最初のおかゆは10倍がゆでもいいの?どうやって作るの?10倍がゆはダメだと聞きました…などなど、情報がいろいろあることでしょう。
まず、結論から申し上げますと「筆者の本では7倍程度に作っていますが、10倍でも何倍でもいいので、ドローっとヨーグルトのようにするおかゆ」がつぶしがゆであり、離乳食の最初のおかゆになります。
そのことについてみていきましょう。
目次
離乳食最初はおかゆがいい?
離乳食、最初のひとくち、何を食べさせようかなと悩みますよね。
授乳・離乳の支援ガイド2019年には、
つぶしがゆから始める。すりつぶした野菜等も試してみる。
厚生労働省研究班,「授乳・離乳の支援ガイド」2019年,P.34 [*1]
とありますので、つぶしがゆや、すりつぶした野菜などから始められるといいでしょう。
つぶしがゆから始めるか、野菜から始めるか
つぶしがゆから始めた方がいいのか、野菜から始めた方がいいのかという質問をいただきますが、それには回答はありません。おかゆでも、野菜でもお芋でも、始めやすいものから始めましょう。
授乳離乳の支援ガイドでも、何から始めるかは言及していません。
ただ、強いて言うなら
家庭の食習慣等を考慮した無理のない離乳の進め方、離乳食の内容や量を、それぞれの子どもの状況にあわせて進めていくことが重要
厚生労働省研究班,「授乳・離乳の支援ガイド」2019年,P.29 [*1]
とあるように、基本的に離乳食は「無理のない進め方」という理由から「その辺にあるものをちょっと煮てあげたらいいよ」という意味や、咀嚼の観点から米の場合は「つぶしがゆから始める」とされているだけです。

つぶしたおかゆでもつぶしたお野菜でも、身近にあるものをあげればいいですよ。ただパンなどは塩分が強かったり、アレルゲンも含んだりするので、できたら最初はごはんか野菜か芋類がいいですね。
食品は、子どもが口の中で押しつぶせるように十分な固さになるよう加熱調理をする。初めは「つぶしがゆ」とし、慣れてきたら粗つぶし、つぶさないままへと進め、軟飯へと移行する。
厚生労働省研究班,「授乳・離乳の支援ガイド」2019年,P.32 [*1]
と書かれていますが、これは「軟らかいものを」という意味であり、特に米に限定して話しているだけの文言なので、野菜でも米でも構わないでしょう。
あわせて読みたい:▶1歳のご飯は大人と同じでいいの?
離乳食最初の穀類は「つぶしがゆ」
今まで見てきたように、つぶした野菜でもつぶしがゆでもどちらでも構いませんが、穀類(主食)の中なら、つぶしがゆからはじめるのがいいかもしれません。
海外では、オートミールから始めることもありますが、あえて特別に用意をしないという意味から、身近にあるごはんをつぶした「つぶしがゆ」にしていますが、このあたりは特に細かい決まりはありませんので、オートミールがいいという場合はそれでも構いません。
つぶしがゆの作り方(5倍がゆ~10倍がゆ)

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材料
- 米 30g(大さじ2)
- 水 150~300ml
作り方
- 米に水を加えて30分浸水させておく
- 強火にかけ沸騰したら火を弱め、弱~中火で途中で何度かかき混ぜながら茹でる(この時点で水分が少なくなるまで茹でる)
- ブレンダーやうらごし器でつぶす
つぶしがゆの作り方によって、カロリーは異なる
上記のつぶしがゆの作り方は水分が150~300mlとかなり幅があることをお気づきでしょうか。
厳密にいえば、水300ml(米の10倍)と水150ml(米の5倍)では、呼び名が異なるので、全く違うように思われます。しかしながら、実際作ってみるとわかるように、同じ水300mlの10倍がゆでも仕上がりもエネルギー量(カロリー)も大きくことなります。
おかゆの硬さが異なる条件
・鍋や電子レンジ、炊飯器など調理器具による違い
・加熱量、加熱時間の違い
・かき混ぜる回数の違い
あわせて読みたい:▶炊飯器で作る離乳食のおかゆ
作り方と仕上がり(カロリー)の違い
以上の条件など作り方によって、仕上がり量が異なります。仕上がり量が異なれば、1さじあたりのエネルギー量(カロリー)も異なります。
米30g、水300mlで下記のような実験を行いました。
条件1(かきまぜなし)
:鋳物ホーロー、鍋蓋あり(穴なし)、加熱量(火力3)、加熱時間(40分+蒸らし10分)、かきまぜなし
条件2(かきまぜあり)
:鋳物ホーロー、鍋蓋あり(穴なし)での加熱量(火力3)20分、鍋蓋なしかき混ぜ20分+蒸らし10分

条件1は、鍋蓋をしっかりして、かきまぜがなく、蒸発最小限であったため、仕込み量330gに対し仕上がり量300g
条件2は、鍋蓋を途中で開けてかき混ぜたため、蒸発もあり、仕込み量330gに対し仕上がり量220g
となりました。

食品成分表上の10倍がゆ([水稲五分かゆ] 精白米)は仕込み量330gに対し仕上がり量310gでの計算値ですので、蒸発量がごく最小限の場合であると推測できます。離乳食は、とても少量で作りますので、実際このように作るのは、なかなか難しいかもしれませんね。

このように、見た目の量も大きく違うのと、米粒の大きさなども異なります

10倍がゆのカロリー
100gあたりのエネルギー(カロリー)は、米から換算して
条件1:かきまぜなし 34.2Kcal
条件2:かきまぜあり 46.6Kcal
となりました[*2]。
つまり、同じ「10倍がゆ」であってもかき混ぜるか否かで、仕上がり量やカロリーは大きく異なることがわかりました。
10倍がゆではカロリーが足りないのか
「10倍がゆでは、母乳よりカロリーが少ないから10倍がゆはよくない」という説があります。
これは、どこから生まれたのかというと、食品成分表という表から算出された33Kcalというところから来ているのでしょう。
たしかに母乳は61Kcalなので、おかゆのほうがカロリーが低いといえます。
たしかに、10倍がゆでは、カロリーは低いです。
ではほうれん草はどうでしょうか。ほうれん草ゆでは23Kcalであり、ほうれん草をペーストにしたら、18Kcal前後であると推測され、母乳よりもかなり低いカロリーです。
これは食べてはいけないのか考えてみますと、筆者の考えですが「カロリーが低くてもほうれん草は食べましょう」となるのではないでしょうか。
カロリーが低いものの時に注意をしたいのは、
・そればかりでおなかいっぱいにしない
ということです。特に離乳食期は水や麦茶でお腹を膨らませてしまうのはよくありませんので、そのような水分はとりすぎが心配です。
おかゆではスプーンであげるため、母乳と比較する意味はあまり多くはありませんが、カロリーが低くなりすぎなら、よくありません。
米と水の量 | 見た目 | 100gあたりエネルギー(Kcal) |
---|---|---|
米1:水10 蒸発少ない(成分表) | 水っぽい | 23 |
米1:水10 蒸発中程度(実測値) | 33 | |
米1:水10 蒸発多(かきまぜあり) | 46 | |
米1:水7 蒸発中程度 (実測値) | 60.4 | |
米1:水5 蒸発中程度 (実測値) | どっしり | 68.4 |
つぶしがゆは何倍で作ってもOK
上記の実験から10倍がゆであっても、かき混ぜるか否かなど蒸発量によってそのカロリーは大きく異なります。今回は鍋は同じもので実験をしましたが、鍋の種類や火力が変わるだけでももっと10倍がゆでもカロリーは高くなります。
あわせてよみたい:▶離乳食のおかゆの進め方:7倍がゆは必要?
作り方はそれぞれなので、「つぶしがゆは何倍でもOK」と言えるでしょう。
では、ポイントはどこにあるかというと「白色がしっかりしていて、スプーンからポターっとヨーグルトのように落ちる状況」がいいでしょう。
スプーンを傾けて落ちすぎる物は、濃度が低すぎ、また傾けて落ちないようなものは硬すぎて飲み込みにくいことがあるでしょう。
何倍かというところに注目するのではなく、「赤ちゃんが食べられるか」に注目します。
授乳離乳の支援ガイドあまりカロリーを高く作ろうとすると、ごはんは餅のように粘りが強すぎてしまうこともあります。
5-10倍くらいの水分量で、赤ちゃんが食べやすいように調整しましょう
つぶしがゆの目安

透明な水に米の粒が浮いているように見えるような10倍がゆでは、赤ちゃんが食べにくかったり、水分のところのカロリーが低かったりすることがあります。
全体的にトロ―っとヨーグルト状になっていれば、カロリーは母乳と大きくは変わりませんので心配はいりません。

食品成分表からエネルギー量を調べたければ、その項目はどのように算出されているかを考え、場合によっては原材料と仕上がり量から計算できるといいですね。
まとめ
離乳食のおかゆは、米1に対して水7-8倍くらいで作っても10倍で作っても「つぶしがゆ」です。
鍋の種類や火加減などで大きく変わってきてしまいますので、つぶしがゆが何倍であるかはなかなかいえません。
もっと詳しい理由などは当協会の離乳食アドバイザー(>>コチラ)の講座でもお伝えしてします。
「10倍がゆはいいか悪いか」ではなく、「つぶしたときにさらっとしすぎていないか」「食べられそうか」に注目したいですね。
参考文献
[*1]厚生労働省,授乳離乳の支援ガイド,2019
[*2] 文部科学省,日本食品標準成分表,2020
プロフィール

-
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
All About 「離乳食」「幼児食」「妊娠中の食事」ガイド
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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