BLWの利点と注意点、離乳食との違い
新しい離乳食のやり方として注目されているBLW。
本来の離乳食の手づかみと大きくは変わりませんが、新しいやり方だと思っていると危険かもしれません。
従来の離乳食とは何が同じで何が違うのかを知り、窒息や栄養欠乏には十分にご注意ください。
BLWとは
BLWとは、「Baby led weaning」の略です。Baby(赤ちゃん)がLed(主導の)Weaning(乳離れ)という、イギリスの訪問保健師Gill RapleyとジャーナリストTracey Murkettが提唱している赤ちゃん主導の食事システムです。
BLW離乳食とも呼ばれ、離乳食を始めるタイミングを赤ちゃん自身が決め、スプーンで食べさせたり、裏ごしをする必要はないとしています。
BLWの利点(BLWのメリット)
BLWは、赤ちゃんが自分で食べる順番や量、ペースを決めて、赤ちゃん自身が食べるまで待つという考えです。
・離乳食をはじめる目安は「座れる時期であり、なおかつ食べ物に自分で興味があって、自分で食べらればOK」
・赤ちゃんと家族と一緒に食卓を囲んで食べる
・赤ちゃんがいっぱい食べても、量が少なくても大丈夫
と、全体的におおらかに構えています。もし、離乳食に対して過剰な不安があるのであれば、これらの言葉が大きな魅力になるでしょう

管理栄養士
離乳食は、実はそれほど決まりは多くないのですが、何か大変なイメージがあって、どうしてもしっくりこないという人や、不安が大きくて進められないという人には魅力的にうつるかもしれませんね。
BLWと離乳食との違い
では、日本の離乳食と何が違うのでしょうか。
表にまとめてみました

日本の離乳食とは全く違うという印象の方も、日本の離乳食と同じという印象の方もいるかもしれません。
大きく違うのは、
・BLW…赤ちゃんが食べ物を選ぶ
・離乳食…大人が食べ物を選ぶ
という点でしょう。
また、
手づかみ推奨はどちらもしていますが、BLWのほうが推奨度合いは高く、スプーンは使わないことを推奨しています
筆者は、「日本の離乳食とBLWは、食卓を囲む大切さや赤ちゃんの食欲にあわせることは同じ」と感じます。
BLW、離乳初期のあげ方や開始時期
やわらかく調理をすることが望まれると思いますが、スプーンであげないと固執するなら、食材や調理が限られてくる可能性があるでしょう。
この辺りはよく考える必要があります。
流行っているといって安易に実施すると、「食べられないからあげなくてもいい」と放棄してしまうことも想定されます。5・6ヶ月でも離乳食から摂りたい栄養があることは考えておきましょう。
BLWと離乳食指導との類似点
どちらも「家族等と一緒に食べる」ことが赤ちゃんの食欲などには良い影響があると言っています。
これはBLWも日本の離乳食も言っていることは同じです。
しかし、現代の離乳食の状況はいかがでしょうか。
赤ちゃんのためだけに離乳食を作り、赤ちゃんだけが決まった時間に食べ、家族は赤ちゃんが寝た後などにこっそり食べるということをしていませんか?

大人もしっかり食事をとることが大切
育児が忙しいのでなかなかきちんと食べる時間がないので、赤ちゃんの食事だけでも食べさせて自分達のことをおろそかにしてしまったりしていませんか?
お気持ちはとてもよくわかりますが、それではママパパの栄養が心配です。
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、赤ちゃんの食事だけ別にするのではなく、「家族等と一緒に食べる」「共食」という言葉を複数回使って強調しています。
離乳食であっても、BLWであっても、共通している「共食の大切さ」については大切にしていきたいですね。

BLWの注意点
筆者は、BLWによる専門家講習を受講しました。
(2021年9月22日、BLW協会より変更の依頼があり、「 BLWのCertificate Of Completion を保持している」を一文を削除しました。)
ママパパの気持ちがそれでラクになるのであれば、BLWは良い方法と思う一方で、管理栄養士としていくつか気になる点はあります。
BLWを始める時に考えたい点
・赤ちゃんが選ぶ食べ物とはいえ、調理するのは大人なので、何をどのように調理するかは伝える必要があるのではないか
・窒息などの危険性はないか
(BLWの講習では「窒息の危険性は離乳食と同じ」としています。離乳食でも大きさにより窒息の可能性はゼロではありません)
・赤ちゃんが食べ物を選んで食べなかった時の栄養欠乏や、鉄やカロリーなど必要な栄養が足りそうかそうでないかの判断が難しいのではないか
・赤ちゃんが本当にバランス良く食べ物を選ぶか(単純な疑問)
・テーブルや床下などが汚れることを親がどこまで許容できるか(かえってストレスにならないか)
・アレルギーに対する考え方などがまだ不明瞭(伝達の必要性)
また、目を離すことはしないようにしたいですね。(これは離乳食でも本来一緒)
BLWの問題点
「赤ちゃんが自分で選ぶ」と放任してしまうと、栄養の偏りが出てしまうことが心配です

管理栄養士
BLWをやりたいと思ったときには、
まず家族の食事をメインと考えてやはり栄養バランスがとれた食事を用意することは忘れないようにしたいものです。
手づかみできるBLWレシピ
BLWなのか、離乳食の手づかみというのかはわかりませんが、もし手づかみしたいということがあれば、下記のようなまぐろの刺身を焼いたものなどのレシピもいいかもしれませんね。

BLWを通じて考える、離乳食を楽しむ大切さ

BLWは「赤ちゃんが選ぶから」という理由になるので、「食べてくれない」という発想で親が悩むことはないのかもしれませんね
管理栄養士としては栄養欠乏やアレルギー等が心配がぬぐえませんが、どうしても日本の離乳食が決まり事だらけで大変だと思って悩んでいたら、一度こんな考えもあるのだと知っておくことで気分をラクにすることはいいかもしれませんね。
離乳食でも
・何をいつからどの食材を何gとは決めていない(あくまでも多め?少なめ?と判断するための目安値)
・家族などと食卓を囲んで一緒に食べることが大切
・手づかみなど赤ちゃんの食欲をひきだしてあげることが大切
としています。
BLWという1つの手法を通じ、離乳食の基本を今一度考えるきっかけとなり、育児中のママパパが無理なく楽しく離乳食タイムが過ごせるようになりますように。

管理栄養士
離乳食は何g、何mmと決めているものではなく、乳児の発育発達と食欲にあわせてすすめていきましょう
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BLWと離乳食は何が違うの?
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根本的には一緒です。離乳食は一部の人に「離乳食は何㎜とか何gと難しい」と誤解されていることはあると思いますが、そのようなことはありません。量の目安は指導者が見るべきもの。赤ちゃんには赤ちゃんのペースもありますので、本来の離乳食の姿を再度考えてみてくださいね。また、家族で一緒に食べる大切さも忘れずに
参考文献
最後に
当記事はBLWを否定しているわけではございません。他社と意見の相違がございますことをご了承ください。
著者

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
著者の記事
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