昔と比べてどう違う?昭和の育児書にみる離乳食の考え方
子育て環境は今と昔は違う!とよく言われますが、実際のところはどうなのでしょうか。
「昔は家族が多くてラクだったのでは?」「ベビーフードがなくて大変だったのでは?」などいろいろな憶測が出てきますよね。
実際に今の保護者さんは、親から「昔はもっといい加減だった。今は細かいのね」などと言われていたりするなどとも聞きます。本当にそうなのでしょうか。

はじめに
この記事は、著者の研究をもとに一般の方向けにお話をします。
現代の子育てに悩まれている方がご自身の親や祖父母へ思いを馳せていただくことが目的です。

母から「ベビーフードではなくてかわいそう」と言ってくるのでイラっとしてしまい、口を利きたくないです。

出産の辛さを忘れてしまうように、育児経験者の人は自分のつらい経験は忘れてしまい、美化してしまうのかもしれませんね。話半分に聞き流せるといいのですが難しいですよね…今回は昭和の育児書から、「昔も同じ気持ちだったのね」ということを読み取っていただけると嬉しいです。
祖父母世代と子育て世代がいがみあうことなく「子育て」や「離乳食」を楽しんでいただけたらという気持ちを込めてお話しをします。
昭和の育児書にみる離乳食
昭和50年の育児書*には、離乳食のお悩みごとをつづったものがあります。
離乳の時期に育児ノイローゼになるおかあさんが少なくないようです。
昭和50年の育児書*より
それというのも、薄いおかゆに始まって野菜の裏ごし、次は卵黄の順にとか、1日1さじずつというような、従来の離乳食の進め方があまりにもめんどうなことも一因ではないでしょうか
なんと昭和50年でも、現代と同じように悩んでいたんですね。

「従来の離乳食の進め方がめんどうです!」って、まさに今同じようなことを思っています。そういえば、母子栄養協会の記事で野菜などは厳密に1さじずつではなくても大丈夫だと学習しました。

本当に昔もずっと同じことを言っていますね。当協会ではいろいろなことを発信していますが、まさに同じことが約50年前から言われているのですね。
ちまたにあふれる離乳食の情報に振り回されて悩んでしまう保護者の方は昔も今もいるんですね。
育児書にみる昭和の母たちの悩み
実際に昭和に発刊された本に書かれていることを一部抜粋しながら、書き換えてQA形式でご紹介します。
(著作権のこともありますので、原文とは異なりますことをご了承ください。フィクションとしてお読みください。実際はQA方式ではありません)
現在の離乳食の進め方は 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」をお読みください。
以下は昭和の育児書のうち、現状のガイドラインと大きくズレてはいないものをかいつまんでの紹介です。
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離乳食のうち、中期頃や後期頃のgをはかったほうがいいでしょうか
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離乳食についてもその栄養バランスの基本は成人の場合と同様です。
何を何gときっちり測らなくても、穀物、タンパク質食品、野菜をおおざっぱに分け、まんべんなく食べましょう。

当協会がいつも言っていることになりますが、「離乳食はgをしっかり測らなくて大丈夫。あくまでもざっくりとしたバランスです」ということは昔も言っているんですね
あわせて読みたい:▶ 1歳のご飯は大人と同じでいいの?食事量の目安やレシピ
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離乳食の量に悩みます
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赤ちゃんにあげる離乳食の量は、少量から次第に増やしていくことが基本となります。
しかしながら「1さじずつ増やす」とか「種類を増やすときは量を増やさない」など、そこまで厳密に考える必要はありませんよ。
あわせて読みたい:▶ 離乳食 1さじってどのくらい?
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はじめて離乳食をあげたら飲み込んでくれません
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赤ちゃんにとって初めて食べ物には、さまざまな抵抗を示すものです。それらは当然のこと。そのたびにおかあさんがびくびくしたり、いらいらしたりする必要はありませんよ。無理強いをしないことが原則ですが、軽い抵抗くらいであれば少しあげてみてもいいでしょう。

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うちの子は少ししか食べません
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赤ちゃんの食欲不振や少食、偏食に悩むお母さんは少なくないようです。しかしそのほとんどはお母さんの思い違いだといわれています。例えば、実際は少食ではないのに、育児書などに示されている標準の量と比較し、「うちの子は少食である」と思い込んでしまうことがあります。赤ちゃんの個人差として考えましょう。

現在も全く同じ現象が起きています。SNSや雑誌などにある離乳食の量と比較をせず、個人差としてとらえましょう。赤ちゃんが元気で発育しているかに注目すればいいのですよ
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本当に少ししか食べないくて困ります。
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おかあさんの誤解で案外多いのは、おやつを与えているのにそれを計算にいれていないケースです。
バナナやヨーグルトなどを食事時間以外にあげて、赤ちゃんがお腹いっぱいになることがあります。
あれこれ神経をつかって食べさせるより、空腹感を知ることも大切なので、食べなければほうっておくくらいでよいのです。健康な赤ちゃんなら自然におなかがすき、黙っていても食べるのです。

「黙っていても食べる」という言葉の選び方は、現代において私たちはなかなか使ってこれずに、少し言葉を変化させてきたかなとは思いました。はっきりしていてわかりやすいかもしれません。
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ベビーフードを使ってもいいですか?
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最近(昭和50年)は日本人の食生活全体がインスタント化し、若いお母さんは食事作りに手間をかけなくなっています。離乳食は1回の量も少ないのに裏ごすのは大変です。そこでベビーフードなどを使うといいでしょう。安全性や衛生面の管理は厳重にチェックされ、添加物などの心配もないので、適度に使うといいでしょう。欠点は割高であるということと中期以降はそしゃく訓練の意味は役立ちにくいです。しかし、このような欠点を補えれば手間を省くのに有用です。材料の1つとして使い、おかゆなどに混ぜたりするといいでしょう。
離乳食づくりに手間をかけるほどよいとは限りません。食事作りで疲れ切って赤ちゃんにあたることはよくありません。せっかく作ったからと無理強いするのもかえってマイナスです。じょうずに手間を省き、余裕のある時間には赤ちゃんと遊ぶようにしましょう。

昭和50年あたりは缶詰や瓶詰のベビーフードが数種類ある程度で、食材がごろっとはいるようなレトルトはなかったかと思います。そんな時代でも上手に手間を省いて、母子ともにリラックスすることが求められてきたんですね。
私たちもそのような発信を常に心がけていきたいものです。
あわせて読みたい:コンビニで離乳食を「かぼちゃとツナの和風リゾット」(セブンイレブン)
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おばあちゃんが赤ちゃんにお菓子をあげてしまい、離乳食を食べないことがあります。
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(昭和40年の育児書*より)
おばあさまは赤ちゃんにお菓子をあげるとうれしそうに食べるてくれる様子が好きで、ついそのかわいさにひかれて食べさせてしまうのでしょうね。よくおばあさまと話し合って、赤ちゃんの食事時間のうちの1回など時間を決めて食べさせていただいてはいかがでしょうか。 おばあさまと協力しあって赤ちゃんを育てていくことで、ときに若いママの有能な助手となるかもしれません。

この記事は昭和40年。つまり今の赤ちゃんの祖父母が生まれたあたりの話ですね。
今お菓子をあげてしまっている「今のおばあちゃん」のお母さんも同じことで悩んでいたようです。きっと自分が子育てしていたときも同じことで悩んだのでしょうし、なぜ今もあげてしまうのか・・・と面白いですよね。
離乳食の悩みは令和も昭和も同じ
以上、昭和の保護者の悩みを書きました。
言葉として「おかあさん」だけに限定して書かれているあたりには時代を感じるものの、内容としては大きく違いがなく、悩みは半世紀前でもほぼ同じなのではないかと筆者は考察します。
(もちろんアレルギーなど研究が進んでいる部分などは多少ありますが、実は思っているよりその差は軽微なものです)
皆様はどう思われましたでしょうか。
子育てに正解はありません。
赤ちゃんは泣いているだけでわからないので、誰もが新しい子育てにドキドキしてしまうものです。
自分の親や他の育児経験者の言葉に対して、時に深く傷つくことがありますよね。
そんな時に少しこの話を思い出して「昔だって同じ風に悩んでいたのに、忘れちゃうものなのね」とちょっと鼻で笑ってみてもいいかもしれません。
そして「アドバイスありがとう。私は私のやり方でやるけど、いちおうアドバイスは聞きましたよ」くらいの気持ちでいられるといいでしょう(難しいですけどね)。

当協会はコンビニで離乳食、炊飯器離乳食、ホットクックやフリージングなど、さまざまな離乳食についてのコラムやレシピを書いています。
半世紀前から、ずっと保護者は悩み続け、その都度時代にあった乗り切り方をしているんですよね。すごく励みになりました。
悩むことは多いものですが、少しでも皆様の気持ちが軽くなるお手伝いができたらと思います
さいごに
約50年も、育児書や雑誌では同じような悩みを抱えている保護者のよりどころとなっていることがわかりました。
なぜ離乳食の悩みは解決していかないのでしょうか。
それは、正解がないことに対して、答えを簡易的に見出そうとするからかもしれませんね。
また、出産育児は大変なことを忘れて、美化されてしまうことも原因かもしれません。(いずれも憶測)
この記事を数十年後の私や皆様がみつけて思い返し、
「離乳食はいつだってママパパにとっては悩むものなの。そういえば私も悩んでいたね」と思い返しになりますように。
あわせて読みたい:▶ 今と昔の離乳食の違い ~離乳食指針の変遷
参考文献
* 昭和50年および昭和40年の育児書の原著は、著者の研究のためこの場では書けません。
根拠がないものとしてとらえていただいて結構です。昭和50年±3年(または40年±3年)に発刊された育児・離乳食に関する書籍からの抜粋となります。
著作権の都合もあるので、一部改変をしています。原著についての質問は受け付けておりません。
Twitterの反応
Twitterでは1万イイネを超える反響がありました。
昔から変わっていないことに対する驚きの声が多いのかと思います
昭和50年の育児書に
— 母子栄養協会*離乳食・幼児食* (@boshieiyou) April 7, 2023
「離乳の時期に育児ノイローゼになるおかあさんが少なくないようです。それというのも、薄いおかゆに始まって野菜の裏ごし、次は卵黄の順にとか、1日1さじずつというような、従来の離乳食の進め方があまりにもめんどうなことも一因ではないでしょうか」という文章があって...→
プロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
All About 「離乳食」「幼児食」「妊娠中の食事」ガイド
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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