離乳食 食材チェックリストで考えたいこと:保育園入園
保育所や保育園などにご入園の際に、
「離乳食の食材を自宅で試して、チェックリストに記入して」
と言われたことはありませんか?
今回は、そんなリストの多量の食材リストに困っている人の参考になればと思います。
離乳食の 食材リストの必要性
このリストは「未食チェックリスト」や「摂取表」などさまざまな名前があります。
市町村で独自に考えられていたり、保育園単位で独自で定められています。
管理栄養士
市区町村や保育園によって、いろいろな表があります。全国的に決まったフォームではありません。
保育園で離乳食のための食材リストはなぜ必要なのでしょうか。
・保育園側はアレルギーが起きないように細心の注意をはらうため
・アレルギーのチェックのために保護者との相互の責任所在を明確にするため
にあります。
また、このことについては、
保育所におけるアレルギー対応ガイドライン1)に「家庭において可能であれば2回以上食べる」などの理想基準があるためです。
② 保育所で“初めて食べる”ことを避ける
厚生労働省,保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年版)p.41, 1)
(中略)保育所特有の対策として、保育所においては食物アレルギーを有する
子どもに“初めて食べる”ことを避けることが重要です。新規の食物にアレルギー反応が
起きるか否かは食べてみないと分からないことから、家庭において可能であれば2回以上、
保育所で提供する量程度、もしくはそれ以上の量を食べて何ら症状が誘発されないことを
確認した上で、その食物を給食で食べることが理想的です。特に給食に使用している高リ
スク食品については必ず確認します。
このため、保護者と事前に連携し、全入所児のこれまでの家庭における代表的な個々の
食物の摂食状況を調査把握することが前提となります。また、保育所は事前に献立を提供
し、これまで食べたことのない食物が給食にないか家庭でもチェックしてもらうよう依頼
し、事故を未然に防ぐ工夫をします。ただし、これまで食物アレルギーの診断がされてい
ない子どもが、保育所で初めて食物アレルギーを発症することもあることから、症状発現
時に慌てることがないよう、体制を整えておくことが必要です。
上記のように、
家庭で2回以上、
保育所と同じくらいの量やそれ以上を食べて何等症状が誘発されないこと
を確認してから、給食に出すのが理想とされています。
現実を考える重要性:家庭での負担と不安
すべての食品を保育園の同じ量食べさせてから給食に出すとなると、
保護者の負担はどのようなものでしょうか。
事例として下記のようなことが考えられます。
毎日のように少しずつ新しい食材を試さないと離乳食を出してもらうことができないらしいのです。
がんばらないと、保育園でお腹が空いてしまいそうだし、ミルクだけではかわいそうです!
おかゆもにんじん、じゃがいもは食べられるのですが、まだ小松菜を試していないので離乳食をだしてくれないそうです。
リストをクリアできるように頑張ります。
管理栄養士
野菜を試していないだけであれば、保育園などと相談をして、保育園ですすめてくれるかと思いますので、相談してみてくださいね
家で試して欲しい食材リストを絞って確実に
離乳食のために、事前に家で試してきて欲しいものは、
・卵 ・乳製品 ・小麦製品 ・肉魚類 ・果物
になります。
ナッツ類やそば類、甲殻類なども試した方がいいですが、離乳食時期に保育園給食に出さない食材は試す必要はあまりありません。
保育園でアレルギーが強く出る可能性のある、ピーナッツ、ナッツ類やソバ、甲殻類をあえてあげる必要はありません。
管理栄養士
もちろん保育所側は ナッツ類やそば類、甲殻類を乳児にださないように徹底的に管理しましょう。
アレルギー表示推奨品目は家庭でチェックを
乳児の食物アレルギーのほとんどは鶏卵・牛乳・小麦とはいえ、
ほかのものもいきなり保育園ではじめて何かあったら大変ですので、
アレルギー表示推奨品目は、家庭で試しておくと安心です。
しかし、かにやえび、くるみなどは保育園で出すことはないと思うので、急いで始める必要はないかと思います。
園に問い合わせをお願いします。
■食物アレルギー表示対象品目
表示義務 特定原材料(8 品目) | えび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生(ピーナッツ)、くるみ* |
表示推奨 特定原材料に準ずる(21 品目) | アーモンド・あわび・いか・いくら・オレンジ・カシューナッツ・キウイフルーツ・牛肉・くるみ・ごま・さけ・さば・大豆・鶏肉・バナナ・豚肉・ |
(※)くるみの表示については、令和5年に追記。令和7年3月31日までの経過措置期間が設けられています。
(※ マカダミアナッツについては、令和5年に追記。しばらく経過措置期間があります。
野菜はアレルギーリスクは低め
乳児期の食物アレルギー原因食物は、鶏卵 60.6%、牛乳 24.8%、小麦 10.8% でこの3つで全体の96.2%とされています2)。
つまり、この時期のアレルギーのほとんどが鶏卵、牛乳、小麦ですので、このアレルゲンを初めて食べる時は注意をする必要があります。
アレルギーはほとんどすべての食材で起こりうるので、可能性はゼロではありませんがアレルゲンの多くはたんぱく質であることから野菜がアレルゲンになることは極めて低いといえます。
幼児期以降になるとナッツ類やピーナッツ、果物のアレルギーもふえてきますが、離乳食期では野菜のアレルギーはごく稀です。
このため、野菜1種1種に注意を払うことができればいいかもしれませんが、野菜は数種類をまとめて食べてもいいですし、保育園ではじめて食べても構わないのであれば、その旨を書いても構いません。
管理栄養士
野菜はアレルギーリスクが高くはありません。
そこに注目するよりも、卵の加熱度合いやアレルギーの可能性の高い食品については、食べた量などを考える方が効果的ですね
【関連記事】市販の離乳食(ベビーフード)で初めての食材を試すのはアリ? アレルギーの心配について
保育園での離乳食 食材リスト
保育園での離乳食のリストでは下記のように、同じ小麦製品でもうどん、ひやむぎ、スパゲティマカロニ・・・など全て食べさせてチェックをするようにするものがあります。
しかしながらこのような必要はありません。
小麦粉製品、複合品(パンなど乳製品と小麦粉のもの)を試したら、他は試す必要はないといえるでしょう。
また、野菜も1種類ずつ試す必要はありません。
もし不安であれば、「園ではこの時期にこのような野菜をあげるので、
不安な人は食べてきてください」程度の情報提供にとどめておくのもいいでしょう。
離乳食の進め方:野菜
とはいえ、野菜のリストを埋めないと
給食をだしてもらえないという場合もあるでしょう。
そのようなときは、一度に複数種類の野菜を試しても構いません。
この「構いません」という言葉は、
「絶対アレルギーがおきない方法」というわけではありませんが、
絶対アレルギーが起きない方法というものは存在しません。
アレルギー発症の可能が高くはない野菜を1種類1さじずつはじめると、
なかなか離乳食が進みませんので、1種類ずつではなくてもよいでしょう。
1.ベビーフードで複数同時摂取
離乳食で野菜の種類を増やすときは、まとめて茹でてからブレンダーにかけて、
ミックスポタージュなどにしたり、ベビーフードなどを使うといいでしょう。
複数種類が1つになったベビーフードで、野菜などを試してもいいですか?
管理栄養士
はい。野菜類は構いません。
ただ、卵・乳製品・小麦・肉魚類は初めての食材が1つだけのほうが、なんらかの症状がでたときに特定しやすいといえますね。
では、野菜と白身魚をミックスした商品は、はじめてでも食べさせていいですか?
管理栄養士
はい。構いません。
ベビーフードは他にも小麦なども入っているかもしれないので、アレルギー表示を確認してくださいね。
また、アレルギーに絶対ならないという意味ではありません。もしアレルギーのような症状がでたら、食べさせた商品パッケージの写真、食べた時間、症状を医師にご相談くださいね。
2.まとめて茹でる
炊飯器や鍋の中に同時に野菜をいれてゆでるのがおすすめです。
赤ちゃんが食べないときのために1種類ずつ冷凍してもいいですし、
もちろんすべて1つにしてブレンダーにかけて「野菜ミックス 」を作るのもいいでしょう
保育園の方へ
保護者の負担を考えるだけではなく、実際の調理現場において、
野菜の除去・魚の細かい指定での除去食などをすることによってより管理が複雑化して
それによって本来やらなければならない鶏卵牛乳小麦などの除去食対応に
不備が出てしまったりすることは避けたいものです。
また、離乳食時期だけ気を付けて、途中入園や年齢があがったときに、いきなりナッツ類(くるみあえやピーナッツ和えなど)をだすなどはありませんでしょうか?
本来事故がおきないようにすべきこと、保育園給食とアレルギー管理について当協会では講演会を行っております。
宣伝にはなりますが、是非しっかり学んで、よりよい保育園給食管理のためにリストの見直しをお願いいたします。
参考文献
1)厚生労働省,保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019 年改訂版).2023年2月11日閲覧
2)消費者庁,令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書.2023年2月11日閲覧
3)消費者庁,加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック(事業者用)(令和3年3月).2023年2月11日閲覧
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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