はちみつは何歳から食べられる?:ボツリヌス菌
「はちみつ(ハチミツ)を食べてしまったけれど、大丈夫?」
「食べさせてみたいけど、なんか怖いな」
などと心配になりますよね。
まず、もし食べさせてしまったとしても、ボツリヌス菌の芽胞が入っている可能性は100%ではありませんので、しばらく、あてはまる症状がないか、様子をみておきましょう。
はちみつは、基本的に1歳未満の乳児には絶対に食べさせないようしましょう
加熱したら大丈夫かどうか、何歳なら食べられるかなど少し詳しく説明します。
ハチミツは1歳以降から食べられます
厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、「はちみつ(ハチミツ)は乳児ボツリヌス症予防のため満1歳までは使わない」こととしています。
保健所などの離乳食教室でもよくいわれていることですが、なぜハチミツを避けるのかの理由をご説明します。
ハチミツ、1歳未満は なぜダメ?その理由
ハチミツには、ボツリヌス菌が芽胞という状態で入っていることが稀にあります。
1歳未満の乳児の腸の中では、その芽胞がボツリヌス菌をたくさん増やし、ボツリヌス菌による症状を起こしてしまいますので、食べさせてはいけません。
1歳すぎたらすぐにいつでも大丈夫というよりも、少し具合が悪いなと思ったら消化吸収に問題がある場合もあるといけないので、1歳半くらいまでは具合が悪そうな時には避けた方が無難です。
幼児以降はハチミツOK
1歳以降になると腸管が発達して、そのようなことは起こりませんので、幼児や大人はハチミツを食べても問題ありません。
幼児や大人の腸内では、ボツリヌス菌が他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、通常、何も起こりません。ただし、2歳未満の場合には、からだの調子が悪いときにはあえて万一のことを考えて食べなくてもいいかもしれませんね。

管理栄養士
ハチミツは、ミネラルなども豊富なので、幼児期では試していきたい食品の1つです。
2才や3才でハチミツを食べる時に気を付けること
まず幼児になれば、基本的にハチミツを食べても問題ありません。ただし、1-2歳の時は、まだ胃腸の具合が万全ではない時などに食べると、可能性としてはゼロではないかもしれませんので、具合が悪い時は控えておくと安心といえるかもしれません。

ボツリヌス菌は加熱に強い
1歳未満でも、加熱調理をすれば大丈夫なのかという質問がよくあります。
ボツリヌス菌の芽胞は死滅するのにかなりの高温で時間がかかります*1)ので、普通に調理しても死滅しません。
例えば、離乳食に最適な蒸しパンを作るのに、ハチミツをいれて加熱したり、焼き菓子のオーブン設定を220℃にしても、お菓子の中身が220℃になるわけはないので、ボツリヌス菌の芽胞は死滅しません。

管理栄養士
一般的な家庭での調理法ではボツリヌス菌は死滅しないと考えましょう。
ハチミツ入りクッキーなども赤ちゃんにはダメ

ハチミツ入りの飲みものや、焼き菓子など、ハチミツ入りの加工品でも、加工する際の温度などが足りないため、1歳までは摂取しないようにしましょう。
ハチミツ入りのパンも乳児にはダメ
ハチミツ入りのパンでも1歳未満にはあげることができません。オーブン温度は高くても食材はそこまで温度があがらないためです。
最近は、高級パンなどが対面販売のものがブームだったりします。そういうものの中には、ハチミツを利用しているものもあります。
1才未満の赤ちゃんにあげるときは、食パンにハチミツを使っていないか聞いてみみましょう。
黒糖や他のもののボツリヌス症の危険性
日本では、乳児ボツリヌス症候群の発症事例は欧米比べて少ないと言われています。しかしながら、ハチミツは海外からの輸入品も多いので注意が必要なのではないかという見方もできます。
日本での死亡例は2017年の1件のみであり、発症事例は他には海外製の野菜スープ(缶)や、青果店での塵(もしくはスープ)、井戸水などもあります。
黒糖は、俗にいわれていますが日本での発症事例としてあがっていません。
乳児にハチミツを食べさせてしまったら
ハチミツの中に、ボツリヌス菌の芽胞が入っている可能性は、高くはありませんので、ハチミツを食べたからといって、必ず感染するわけでも発症するわけではありません。
しかしながら、数%の確率で乳児ボツリヌス症にかかる場合もありますので、下記の乳児ボツリヌス症の症状がみられないかどうかチェックしておきましょう
乳児ボツリヌス症の症状
芽胞を摂取したのち、3〜30日後から症状が始まります。
- 便秘
- 表情のこわばり
- 母乳やミルクの吸い込みが弱くなる
- 泣き声が弱くなる
- 動きが鈍くなり、筋力が低下する
- 呼吸をしにくそうにする
以上のような症状がないかどうかチェックし、あてはまるようなことがあれば「ハチミツを食べた」ことを含めて医師に相談しましょう。
大人にも見られるボツリヌス食中毒
ボツリヌス症は、乳児ボツリヌス症だけではなく、食品中でボツリヌス菌が増えたときに産生されたボツリヌス毒素を摂取したときにおこる「ボツリヌス食中毒」もあります。
ボツリヌス食中毒は大人にもみられます。
芽胞ではなく、毒素が生成されボツリヌス毒素が産生された食品を摂取後、8時間~36時間で、吐き気、嘔吐、視力障害、言語障害、えん下障害(ものを飲み込みにくくなる)などの神経症状が現れるのが特徴です。
重症例では呼吸麻痺により死亡することがあります。
ボツリヌス菌は空気のないところで多く繁殖する嫌気性菌なので、特に、レトルト(高熱高圧)加工していないパック製品で、冷蔵庫保管が必要なものを、あやまって常温保管してしまったものなどで発生します。
パック詰め製品で「要冷蔵」などと書かれているものは、必ず冷蔵庫で保管しましょう。

管理栄養士
乳児ボツリヌス症候群と、ボツリヌス食中毒は違います。赤ちゃんは芽胞を食べると体内で増やしてしまいます。大人は食品管理をしっかりと!ということですね
以前は「いずし」という魚を発酵させた寿司を自家製した際にボツリヌス菌が産生された事例がみられましたが、現在は自家製も少なくなり、その事例も少ないようです。
また「からしレンコン」でも、事例がありましたが、昨今ではその保存なども見直されています。
消費者としては、真空パックなどのパック詰め製品は、その表示をよく読み、「要冷蔵」「10℃以下で保存」とされているものは、冷蔵庫などで保管するようにしましょう。
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*1)ボツリヌス菌にはA~E型まで種類があり、死滅までの熱や時間はその型によって異なりますが、A型B型では、121℃、4分以上の加熱、比較的毒素が弱いE型は80℃、10分の時間と熱を要します。
参考文献
真空パック詰食品(容器包装詰低酸性食品)のボツリヌス食中毒対策:厚生労働省
感染症動向調査(乳児ボツリヌス菌):国立感染症研究所
乳児ボツリヌス症候群について 日本小児科医会 公衆衛生委員会
著者

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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