くるみアレルギーが食物アレルギー原因物質2位に!

くるみ和え、くるみパンなど、風味も豊かなくるみは、食卓を豊かに彩る食材です。
しかし今回、令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書が消費者庁から出されました1)
この調査報告書によると、くるみアレルギーが急激に増えました。
今回はこの調査をもとに、保育所の現場はどうしたらいいのか考えていきましょう。

くるみアレルギーが2位に

令和6年度の調査結果1)によると、即時型食物アレルギーの原因物質の調査においては、
全年齢の食品別調査において鶏卵に続いて、くるみが2位になりました(下図)。

令和6年度 くるみ アレルギー 調査 消費者庁 2位

この区分は、従来では「食品群」にわけられていたものを、食材別にしたものです。

今まではクルミは「ナッツ類」として分類されていましたが、その割合がとても多くなったため、食品群ではなく食材ごとにしました。

これを従来通り、「木の実類」としてカウントすると、ほぼ鶏卵と変わらないほどの数になりました(下図)。

2024年(令和6年度) 即時型食物アレルギー原因物質

近年のアレルギー原因物質の変化(ナッツアレルギーが3倍に)

2018年、2021年、2024年と最近の即時型アレルギーの原因物質の変化を見てみると、今まで牛乳だったところを、大きく「木の実類」が抜いていることがわかります。
母数が違うものの、木の実類は2018年は8.2%にすぎなかったところ、2024年は24.5%となっています。
木の実類のアレルギー原因は、比率でみると約3倍にも跳ね上がっています。

食物アレルギーの原因物質の推移 令和6年、令和3年
木の実類(ナッツ類)のアレルギーの年次推移

【関連記事】食物アレルギー診療の手引き2020 改定の主なポイント

くるみアレルギーはなぜ増えたのか

このように、木の実アレルギー、とくにくるみアレルギーが多く増えたことがわかりますが、
なぜ増えたのか心配になりますよね。

くるみの消費量が35倍に激増!

これにはくるみの消費量に注目してみましょう。

下図は農林水産省のデータからくるみの消費量のみを抽出し、グラフ化したものです。1995年のデータを見つけることができませんでしたが、およそ10年毎にプロットしたところ、下図のように急激な上昇傾向がみられました。

くるみの消費量 生産量 変化 アレルギー


くるみの消費量は、55年間で約35倍も消費が増えたことがわかりました。(くるみの国内消費量 1965年1593t、2020年56,478tの比較)。
尚、現在日本においてほとんど生産数はデータにはなく、海外からの輸入のみとなっています2)

これを理由にして、くるみのアレルギーの増加と、消費量増加を結びつけることは、
推測にしかすぎませんが、増加理由の1つとはいえそうです。

くるみアレルギーを保育所ではどう考える?

保育所などにおいては、「初めてのものを家庭で食べさせてから」という考えがあります。
しかしながら、だからといってアレルギーになる可能性の高いものを
あえてあげる必要はありません。


鶏卵はさまざまなレシピにも入りますし、
タンパク質や鉄が摂れるので、必要かもしれませんが、
くるみは他のもので代替ができるものです。

また、硬いナッツ類は、窒息防止の観点からもあげないほうがいいでしょう。

近年、ここまでくるみアレルギーが増えているのであれば、
保育園でくるみをあげることは控えたほうがいいと筆者は考えます。

「食育だからあげる」などという考えもあるかもしれませんが、
安全を超える食育はないのではないでしょうか。

【関連記事】保育園入園時の食材チェックリスト

くるみのアレルギー表示は2025年3月から完全義務

市販品の食物アレルギーの表示では、「くるみ」が特定原材料に追加になりました。

現在は移行期間中ですが、
2025年3月からは表示しなければならないことになります3)

さいごに:くるみの楽しみ方と配慮

私たちの食生活は、さまざまな事由により変化をしていきます。
近年のナッツ類の消費量の増加のように、
新しい食生活は新しいアレルギーを増加させるかもしれません。

食物アレルギーを予防することは、
現時点でさまざまな説があるものの確立されたものはありません。

管理栄養士

管理栄養士

症状が出て初めてわかるので、ちょっとドキドキしてしまうかもしれませんが、
くるみを初めて食べる時にはちょっと注意をしてみたり、
他人にくるみ入りのものを差し入れる時などには、「くるみは大丈夫?」と聞くなどの配慮があるとより良いですね。

最初にもお話ししましたが、くるみは風味豊かでとてもおいしい食材です。

今回は、保育所において、くるみを考えていただきたいと思い記事にしました。

ご家庭では、くるみを無理に避けたりする必要はありません。正しい情報をもとに怖がらず楽しんでいただけますと幸いです。

【関連記事】ブロッコリーのくるみ味噌和え

参考文献


1)消費者庁,令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書,2024年9月,(2024年11月12日閲覧),

2)農林水産省,特用林産物生産統計調査-くるみ‐消費量,各年次推移(2024年11月12日閲覧)

3)消費者庁,くるみの特定原材料への追加及びその他の木の実類の取扱いについて(令和5年3月9日) (2024年11月15日閲覧)

【関連記事】平成30年 食物アレルギー調査概要

著者執筆の記事一覧

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている