離乳食の進め方とは?離乳食期別ポイント(管理栄養士解説)
離乳食の進め方は、なにが正しいのかと心配になるかと思います。
まず基本として覚えておきたいのは、離乳食の進め方を考えるときは、
赤ちゃんが成長しているかを確認することがとても大切です。
量にとらわれすぎず、
赤ちゃんの動く量や体格によっても必要量が異なることを覚えておきましょう。
離乳食期とは
離乳食期とは、咀嚼を意味する場合と量を意味する場合があります。
2007年「授乳・離乳の支援ガイド」を厚生労働省科学研究班を検討していた際の議事録である、 「『授乳・離乳の支援ガイド(仮称)』策定に関する研究会 」では、乳児は、連続した中で移行していくため、〇〇期という表現はやめるようにしました*1。
下の左図をみると、離乳初期などの文言がないことがお分かりいただけるでしょう。
しかしながら2019年の改訂検討会において、
育児雑誌編集者より、何ヶ月という表記では、情報発信しにくいという提言があり、
離乳期が再び掲載されるようになりました*2。
本来、医学的に考えれば、乳児が段階的に育つものではないので、
2006年のガイド策定時のように「連続した中で移行していくという考え方」になります。
離乳食の開始
離乳食を始めるタイミングは、生後5〜6ヶ月頃が適切です。
この頃になると、支えてあげれば座ることができ、いわゆる「首が座っている」状態になっているでしょう。
但、首が座っているからといって早くに始める必要はありません。
母乳やミルクの量に影響があるといけませんので、離乳食は生後5ヶ月を過ぎてから慌てずにあげる機会をみていきましょう。
修正月齢がある場合は、医師と相談の上、修正月齢を参考にすすめてもいいでしょう。
開始は6ヶ月からでもOK
離乳食を6ヶ月頃までに始めるといい理由は、
母乳だけでは少しずつ成長のための栄養が足りなくなってくるためです。
5ヶ月頃はその準備期間のような考え方なので、
このため、5ヶ月で離乳食を始めてもいいですし、始めなくても全然大丈夫です。
5ヶ月はあくまでも準備期間と捉え、焦って離乳食始める必要はありません
補完食の進め方
補完食というのはWHOが提唱する発展途上国もあわせた全世界における離乳食の意味をあらわすことばです。
日本の離乳食も補完食も大きくは違いません。
補完食では6ヶ月頃から始めるとされており、離乳食では5-6ヶ月頃から始めるとされています。
WHOの補完食では4ヶ月未満では食事あげないこととすると書いてあることから、離乳食では5-6ヶ月と書かれていますので、つまり2つの開始時期は同じです。
日本の厚生労働省のガイドでは、
「母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくる
エネルギーや栄養素を補完するために、乳汁から幼児食に移行する過程3)」
を離乳としています。
これはWHOの補完食の意味をとりいれているということであり、資料にも基になっているWHOの資料は引用されています。
【関連記事】赤ちゃんの成長を考えた「補完食」 始め方やスケジュール
管理栄養士
筆者は補完食も離乳食も同じだと思っておりますが、理論が知りたい方のために「補完食」の本も監修しています。
食材の進め方・種類の増やし方
初めて離乳食をあげる食品としては、つぶしがゆから始めることが一般的ですが、
つぶしてトロ―っとなるもので、苦みや辛みがなければ、何でも構いません。
しかし、小麦粉はアレルギーのリスクが少し高めの為、
・ごはん
・じゃがいも
・さつまいも
・かぼちゃ
・にんじん
・かぶ
などが、茹でてつぶしただけでもトロ―っとなりやすい食材なのでオススメです。
管理栄養士
ごはんは適度な甘さがあり、家でも常に準備してあるものなので、あまり無理せず
つぶしがゆから始めるのがいいのではないかな?と思います。
野菜の進め方
苦い野菜や辛い野菜は赤ちゃんが食べにくいので、無理にあげる必要はありません(長ネギ、にんにく、しょうが等)。
それ以外はあげても問題ありません。
さきほどあげた野菜がとろみがつきやすく食べやすいでしょう。
注)正しくは、「離乳初期」という呼び名ですが、離乳食としてわかりやすいようにここでは俗称である「離乳食初期」と記載します。
・離乳食初期(ごっくん期)
ペーストで飲み込みやすく
・離乳食中期(モグモグ期)
かんたんにつぶせる豆腐くらいの硬さで、舌で上顎におしつけてからのみこめるくらい
・離乳食後期(カミカミ期)
大人の指でつぶせるくらいの硬さの食材だと歯ぐきでつぶせる
・離乳食完了期(パクパク期)
大人が指と爪で何回か抑えると潰せるくらいの硬さだと歯ぐきで噛みつぶせる硬さくらい
離乳食の肉や魚はいつから始めたらいい?
特に決まりはありませんが、生後5ヶ月はまだ栄養はおもに母乳やミルクでとりたいので焦って進める必要はありません。
だいたい6ヶ月頃からで構わないので、お肉や魚、卵などを初めていきましょう。
気を付けたい点はいずれも「十分に加熱」です。
肉の進め方
最初はペーストにしていきます。
お肉の白いところは脂が多く、赤いところは鉄分やたんぱく質が多く含まれていますので、
なるべく赤い色のところがいいでしょう。
また、お肉はそのまま調理すると硬いので、
肉がやわらかい鶏肉からはじめると調理しやすいのでオススメです。
また、赤ちゃんは乳脂肪以外をなかなか分解できないのですが、
食べることによって脂を消化するための酵素がてくるため、
最初から山盛りで何十gも食べさせるということではなく、
あまり多くなりすぎない量から始めるといいでしょう。
少しずつペーストじゃなくても食べられるかもしれませんが、
離乳後期が指で潰せるくらいの硬さが望ましいので、それを考えると、しばらくどんなに硬くてもハンバーグ程度が望ましいといえるでしょう。
ヒラヒラした1㎝程度の肉などはとても噛みにくいので、そのまま飲み込むことも多いですし、
そぼろは硬くて口の中に残ることもありますので、ごはんとしっかり混ぜたり、全体的にとろみをつけるといいでしょう。
【関連記事】授乳・離乳の支援ガイド(厚生労働省 2019年改定)
魚の進め方
魚は授乳離乳の支援ガイドでは白身魚から始めるとされています3)ので、白身魚から始めるといいでしょう。
この理由は、白身魚は身が柔らかいためです。
また、肉と同様に脂が多すぎないことも特徴です。
白身魚を多少食べられたら、赤身魚(青魚)を試してみると、鉄も摂れるのでオススメです。
アレルギーが出やすい食品の離乳食での進め方
乳児期におきるアレルギーのほとんどは、鶏卵・牛乳乳製品・小麦の3種類で、これらは乳児期におきるアレルギーの95%以上を占めます4)。
ほとんどの食品でアレルギーの可能性はありますが、可能性はとてもたくさんですので、
1食品につきごく少量から様子をみていると時間が足りません。
気を付けるべきところをしっかり気を付けてあとは、食べることを楽しんでいきましょう。
小麦製品の離乳食での始め方・進め方
アレルギーのリスクが高い食材の1つが小麦粉です。
小麦粉のタンパク質の量とアレルギーの強さ(抗原量)は比例しますので、
ざっくりいうと、小麦粉をたくさん摂れば、アレルギーの強さは増します。
つまり、ほんの少しから試しておくと安心ではあります。
しかし、ほんの少しの量で小麦粉でアレルギー反応がでなかったからからといって、小麦アレルギーがないということはいえません。
うどんをすりつぶしたものなどを少しあげてみるといいでしょう。
このような場合は、食べた後2時間ほどしても病院にいけるようなときにあげておくと安心です。
乳製品の離乳食での始め方・進め方
乳製品もアレルギーのリスクが高いです。
育児用ミルクを問題なく飲んでいる場合は、大丈夫であると思っていいでしょう。
しかし、母乳だけであったり、育児用ミルクを生後すぐあたりは飲んでいたけれど数ヶ月飲んでいないまま離乳期になってしまったというような場合は、少量から試すと安心です。
乳製品もタンパク質の量とアレルギーの強さが比例するので、
バターなどは脂が多くタンパク質が少ないので、少量試してみても大丈夫なことが多く安心して試しやすいでしょう。
また、少しだけおかゆに牛乳や育児用ミルクを溶かしたものを加えてみる(小さじ1など)もオススメです。
卵の離乳食での始め方・進め方
卵はもっともアレルギーリスクが高いです。
卵アレルギーの中でも種類があるので、その種類にもよりますが、
とにかく「しっかり長時間加熱」を覚えておきましょう。
長時間茹でた固ゆで卵が一番アレルギーのリスクが低いです。
しかし、固ゆで卵だけで「卵アレルギーなかった!」というつもりになっていると、
卵ぞうすい、かきたまうどん、親子丼、茶碗蒸し、プリン などで卵アレルギーを発症することもありますので
しっかり加熱しつつも、卵焼きなども少しずつ様子をみて試せるといいでしょう。
くれぐれも急に卵の加熱が弱いものをあげないようにしましょう。
固ゆで卵1個食べられたからといって卵アレルギーがない ということではありません。
離乳食の量
厚生労働省の授乳離乳の支援ガイドを簡単に要約すると、下記のようになります。
しかし、これは決まりではありません。
「保護者の悩みの1つに量がわからないので不安ということがあげられている」
ということから、量をあくまでも目安として提示しているだけ です。
この量を守らないから大きくならないとか、
この量を食べないから将来の発達が・・・ということはありません。
赤ちゃんの体重が大きくなっているか、
母乳やミルク以外のものを食べようとしているかに注目してみましょう。
離乳初期は、量が決められていないので、
「食べることが怖くない」という状態であればOKです。
目安量が食べられなくて不安なとき
もし、1回に目安量が食べられなくて不安ということがあれば、
1日に2回の離乳中期であれば3回に増やしたり、
1日に3回の離乳後期であれば4回に増やしてみましょう。
まとめ
離乳食の進め方は、決まったことはそれほど多くなく、
赤ちゃんの成長や個別の体調に合わせて柔軟に、
「食べにくいかなー」とペーストにしてみたり、小さく切ってみたりして調整することが求められます。
しかし、実際は周りの子やレシピ本と比較して、同じでなくてはならない と思ってしまいがちですよね。
お子さんの身体の大きさや運動量、母乳やミルクの量などはそれぞれなので、お子さんが成長しているかが答えです。
食べる食品は、食べられるかの硬さで判断し、卵、乳、小麦のアレルギーには慎重にしていきましょう。
参考文献
1)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(仮称)』策定に関する研究会 第3回議事録,2006年12月20日,(2023年12月3日閲覧)
2)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会 第2回議事録,2018年12月27日,(2023年12月3日閲覧)
3)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」(2023年12月4日閲覧)
4)消費者庁,令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書.2023年2月11日閲覧
注)正しくは、「離乳初期」という呼び名ですが、離乳食としてわかりやすいようにここでは俗称である「離乳食初期」と記載しました
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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