母乳に含まれるn-3系脂肪酸と青年時のアレルギーとの関係のニュースから考える
ヨーロッパアレルギー臨床免疫学会誌では、母乳に含まれる多価不飽和脂肪酸(PUFA)と青年期のアレルギー性疾患および肺機能の関連を検証して下記のように発表しました。
n-3系多価不飽和脂肪酸が高い母乳は、小児が青年になったときのアレルギー性疾患増加に関連する傾向があるとのことで、特に12歳児ではアレルギー性鼻炎(OR 12歳時5.69、18歳時4.43)と18歳児では湿疹(同18歳時9.89)に影響するとのことです。
今までは多価不飽和脂肪酸を多く含む母乳は、アレルギーの疾患の予防に役立つという論文も多かっただけに、この発表は興味深いものではあります。ただ、研究期間が長く、様々な要因が絡んでいるようにも思え、一概にはいえないとは思いますが、今後の発展に注目したいものです。
一般的に、n-3系脂肪酸は抗炎症作用があるので、アレルギーの予防の効果があるように思われていましたが、そうとも言い切れないようです。ちなみに、n-3系脂肪酸を妊娠中に摂取した場合は、小児のアレルギー(喘息と卵アレルギー)を予防に効果があるとした研究(参照2)もありますが、この研究でも発表されているのは授乳中に摂取しても、アレルギーに予防効果はみられなかった(参照2)とのことです。
では、授乳中にn-3系脂肪酸をとらなくてもいいのでしょうか?
厚生労働省では、母乳育児の指導(参照3)の中で、「n-3系脂肪酸をとりましょう」としていますし、日本人の食事摂取基準(参照4)でも、妊婦と授乳婦は多くとるよう(目安量1.8g/日)に推奨されています。
サプリメントなどを無理に摂取することはなく、あくまでも普通の食事からとるのが望ましいというところでしょう。
妊娠中は、胎児のこれらの器官作成のため、より多くの n─3 系脂肪酸の摂取が必要とされます(参照4 P.120)し、魚などの摂取は、産後うつを予防する(参照5)という研究も明らかになりましたので、引き続き、妊婦、授乳婦(産婦)は、魚を摂取していくのがいいでしょう。
サプリメントに頼りすぎると多量摂取となり問題になることもあるかもしれませんので、普段の食事から魚の缶詰(サバ缶など)などをうまく使って、魚の簡単料理をいくつか覚えておき、無理なくとれるようにしておきたいですね。
<参照1:補足>
実験内容:メルボルン・アトピー・コホート(MACS)研究に登録された小児の母親の初乳サンプル194件と、
高リスクの出生コホート研究であるメルボルン・アトピー・コホート(MACS)研究に参加した子供の母親からの194の初乳サンプルおよび118ヶ月の3ヶ月間の母乳サンプルで測定された。
参照元:「Breast milk polyunsaturated fatty acids: associations with adolescent allergic disease and lung function」
<参照3>母乳育児もバランスよい食生活の中で(厚生労働省)
<参照4>日本人の食事摂取基準(2015 年版)脂質
<参照5>妊娠中のうつ、大豆・魚・ヨーグルトで抑制…愛媛大調査(ヨミドクター)
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著者

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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