妊娠中、ローストビーフを食べてもOK?

妊娠中、外食やホームパーティなど、普段とは違う食事内容になると、不安になることもありますよね。

そんなとき、妊娠中ならどんなことに気をつけて食事をしたらいいのでしょうか?
ローストビーフや、その他の似たような食品について、
気を付けたいポイントを見ていきましょう。

妊娠中に気を付けたいローストビーフ

クリスマスのメインメニューとして人気なのが、ローストビーフやローストチキン!

数年前、人気タレントが妊娠中にローストビーフを食べたとSNSにあげ、ファンの間で妊婦が食べていいものかどうかと話題になったことがあります。

ローストビーフ 妊婦

ローストビーフの加熱は安全?

食中毒の原因になるため、妊娠中は生ものを控えましょう。

管理栄養士

管理栄養士

ローストビーフは加熱肉ですが、実は注意が必要です!

ローストビーフの加熱温度は不十分

ローストビーフは中がピンクがかっているので生肉だと思われがちですが、
市販されているローストビーフは、
肉の中心温度が55℃~63℃で加熱しなければいけないなどの衛生基準があり、
加熱された肉になります(食品衛生法では「特定加熱食肉製品」となっています) [*1] 。

しかし、ローストビーフは、気を付けたい点がたくさんあります

特に自家製のローストビーフは食中毒リスクがあります

ローストビーフは生肉ではないものの、低温調理のため、加熱温度が不十分です。
特に家庭で作る場合は、加熱温度は中心温をしっかりあげられるようにしましょう。

内閣府食品安全委員会では
「塊肉の表面を焼いた後にアルミホイルで包んだり、
肉をジッパー付き袋に入れてお湯につけっぱなしにするなど
余熱を利用するレシピは、肉の温度が食中毒を防止できるほどには上がらないので、やめましょう。」としています[*2]。

胎児に移行するわけではありませんが、O157などの食中毒が心配です。

妊娠中に激しい食中毒はできるだけ避けたいので、
自家製のローストビーフは加熱温度が58℃のお湯にいれるなら100分以上は加熱しつづけるようにしましょう [*2] 。

現実、自宅で作るときはこのような余熱やお湯をつかうものは難しいと思います。

妊娠中はローストビーフの手作りは避けておくと安心でしょう。

妊娠中に気を付けたい食中毒

妊婦さんは、全般的に食中毒には気を付けていただきたいのですが、
特にリステリア菌とトキソプラズマには、妊婦さんには特別に気を付けて欲しいものです。

リステリアとトキソプラズマ

あくまでも、「リスクがある」ということであって、必ずなるというものではなく、
元気な成人であれば、食しても症状が出ることは少ないです。

ただ免疫が著しく落ちている場合に、稀に発症する可能性があります。

これらの感染予防として、肉を調理する際は中心部まで十分に加熱をすることが必要になります。

リステリア菌は65℃で数分加熱、
トキソプラズマは中心が67℃になるまでの加熱が必要になるため、
ローストビーフの加熱基準(中心温度が55℃~63℃で加熱)では不十分といえます。

トキソプラズマは牛肉に入ることはごく稀でほとんどありませんが、
なるべくリスクは回避できるといいのではないでしょうか。

妊娠中は、しっかり加熱したローストチキンがおすすめ

ローストチキン クリスマス チキン 妊婦
ローストビーフではなく、ローストチキンならOK

そのため妊娠中はローストビーフではなく、
安心のためにもしっかり中まで加熱されたローストチキンなどを選ぶとよいでしょう。

生ハム、スモークサーモンも避けておくと安心

生ハム チーズ 妊婦
前菜でありがちな、一部海外製のナチュラルチーズと生ハムは注意が必要です

リステリア菌は、

  • 生ハム (日本の食品衛生基準を満たしている場合は大丈夫なことは多い
  • スモークサーモン
  • 魚や肉のパテ
  • イクラ

も感染源となりますので、気を付けましょう。

イタリアンの前菜などによく出てきますので、外食するときは事前に知らせてもいいかもしれませんね。

日本の食品衛生基準を満たしている場合は大丈夫なことは多いので、過度な心配はいりませんが、「絶対安全」ともいいきれません。

また自家製や輸入物には特に注意をしましょう。

【関連記事】妊娠中、生ハムやスモークサーモン大丈夫?

まとめ

このクリスマスメニューに限らず、イベント時の食事はついつい色々食べたくなってしまうと思います。
もし、「これは食べても大丈夫な料理かな?」と迷ったら、しっかり”火が通ったもの”を選んで食べるようにすれば安心でしょう。

市販で売られているローストビーフなどは、食品衛生基準を満たしてはいますので食べてしまった場合は過度な心配は不要ですが、事前に考えられるならさまざまな食中毒予防の観点から「できるだけ加熱したもの」と覚えておけると安心です。

冷蔵庫の中のものを過信しすぎず、チーズの賞味期限内であっても開封したらその限りではありませんので、きちんと今まで以上に開封後の管理などはしっかりとし、楽しく安全な食生活を送ってくださいね。

参考文献

[*1]内閣府 食品安全委員会「 肉を低温で安全においしく調理するコツをお教えします!」
[*2]食品別の規格基準について(食肉製品) (厚生労働省)
トキソプラズマ症とは(国立感染症研究所)
加熱してもなぜ食中毒が起こるのでしょうか? (食品安全委員会)

著者執筆の記事一覧

長有里子
長有里子
管理栄養士/妊産婦食アドバイザー
自身の不妊経験をもとに、妊活、女性のホルモンバランスと栄養、妊娠期などの食事を研究。
書著に「生殖専門医と妊活栄養士が導く 授かるための2人の生活術(講談社)」