梨はいつからあげていい?離乳食には加熱したらOKの理由
梨は、甘くて食べやすい果物で、離乳食にぴったりの食材です。
梨の特徴
夏から秋の味覚として有名な梨。
シャリシャリっとしてる食感が楽しい食べ物ですね。
梨の旬
品種によりますが、7-10月頃が旬です。秋というよりも夏~秋といえます。
梨の栄養
梨は約9割が水分です。
他にも、梨にはビタミンCやカリウム、食物繊維等が含まれています。
梨のシャリシャリした食感は、石細胞という食物繊維によるものです。
食物繊維やビタミンC、カリウムなどの栄養素は、
梨だけを摂取しても十分には摂取できませんので、
梨以外にもさまざまな食材を組み合わせてあげましょう。
離乳食でも大人でも、
栄養素を期待して1種類の食材を多量に食べるようなことは避けましょう。
管理栄養士
例えば、ビタミンCを摂りたいから梨ばかり!という考えは離乳食にはむきませんし、梨を食べたから他の野菜は食べなくてもいいということにもなりません。
保存方法
梨はあまり長くは日持ちしません。追熟しない食べ物なので、購入した後はなるべく早く食べましょう。
梨のアレルギーの種類
アレルギーは、梨にもありえます。
しかし、それほど頻度は高くはありません。
梨はリンゴなどと同じ「バラ科」です。
アレルギーのもととなるアレルゲンの種類はいくつか考えられますが、
おもに2つがあります。
梨の種類によってどちらかが含まれるというものではなく、両方含まれており、ひとによってどちらに反応するかがかわります。
加熱して弱まらないアレルゲン(LTP)
脂質輸送タンパク質(LTP)に反応する場合は、梨を加熱してもアレルギーのちからは弱まりません1)。
PFASの原因となるアレルゲン
PFAS(口腔アレルギー症候群の一種)の場合*は、加熱をすると低アレルゲン化されます。
*PFASの原因となるアレルゲンの名称は「Bet V 1 ホモログ 」です1)
乳幼児期には梨のアレルギーの過度な心配はいりません
アレルギーの種類を複数かくと、まるで梨のアレルギーが多いように感じてしまうかもしれませんが、果物アレルギーの多くはキウイ、そのあとにバナナやりんごと続き、梨はアレルギーの頻度は高くないので、過度に心配をする必要はありません。
離乳食に梨をあげるときに気を付けたいこと
梨を離乳食として、初めてあげる場合は緊張するものです。
しかし、乳児に多いアレルギーは卵・乳・小麦になります。それ以外はとても稀です。
加熱せずに食べることは、誤嚥の観点からおすすめできないため、はじめて梨を上げるときは加熱をしてあげることになるでしょう。
加熱した梨は、アレルゲンの1つが低減するため、アレルギーの心配が少しは減ります。
しかし、アレルギーにならないとかアレルギーになりにくくする方法などではありません。そもそもPFASは乳児では考えにくいことから、それほど気にしなくてもいいでしょう。
管理栄養士
とはいえ、PFASは花粉との交差が多く、乳児期にこのアレルギーになる可能性は極めてまれです。
加熱したい理由は主に「硬さ」であって、アレルギーの意味はあまり考えなくてもいいかもしれませんね。
梨は、生後5~6ヶ月頃から与えることができます。ただし、梨はシャキシャキした食感なのでちょっと注意が必要です。
梨は離乳食でいつからあげられる?
離乳食を開始する5-6ヶ月以降であれば、梨はいつからでもあげられます。
梨に限らず、離乳食では食材をいつから食べられるということは、あまり決まっていません。
アルコール、油が多いもの、硬くて小さくて丸いものはあげないほうがいいでしょう。
また、5-6ヶ月はまだまだ母乳やミルクから栄養をとりたい時期なので、あえて梨をあげる必要はあまりないかもしれません。
あげてはいけないわけではありませんが、あげなくてもいいでしょう。9ケ月頃になって徐々に栄養を食事からもしっかりとれるようになって食欲がたくさんあるようでしたら、さまざまな食材の1つとしてあげてもいいかもしれませんね。
梨の離乳食での調理法
梨は離乳食であげるときに、どのようにしたらいいのでしょうか。
厚生労働省「授乳離乳の支援ガイド」にある硬さを指標にして考えてみましょう。
離乳初期(5・6ヶ月頃):ヨーグルト状のようにボターっとさせる
加熱してすりおろしたり裏ごしがいいでしょう。ミキサーでつぶしてもいいですね。
果汁だけでもいいです。しかしながら、この時期はスプーンや食べることになれる時期ともいえるので、あえて梨をあげる必要はないともいえます。あまりあげずに、おかゆや肉魚、野菜をメインに考えておいたほうがいいでしょう
離乳中期(7‐8ヶ月頃):ジャムのようにぺタっと煮る
加熱してジャムのように煮ます。砂糖をいれず水だけでゆでるのがおすすめです。
ちょっと手間なので、あえてがんばってあげる必要もないかもしれませんが、あげてはいけないということではありません。
離乳後期(9‐11ヶ月頃):クタっと加熱する
3mm程度の薄切りにして加熱します
離乳完了期(12‐18ヶ月頃):クタっと加熱する
5〜7mm程度の薄切りにして加熱します
幼児期の調理(1歳半~3歳):薄切り
加熱しなくても食べられますが、なるべく薄く切りましょう。
梨を加熱する理由
総務省が発表した、事業者向けのガイドライン「教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン」の取り組み紹介の1つとして、「梨は離乳完了期までは加熱する」と記載があります。
これはアレルギーの意味ではなく、誤嚥事故防止のためです。
梨は硬いので、薄く小さく切っても、軽いため吸ったときに気管に入ることが考えられます。
加熱することによって重くなるので事故防止にもなります。
【関連記事】乳幼児期に気を付けたい果物:保育園給食のガイドラインからのから学ぶ!
Q.梨を食べられたら梨アレルギーではないということでいいですか?
梨を離乳食であげて、3口くらい食べました。そうしたらこの子は梨アレルギーではないと判断していいですか?
A.あくまでも現時点でその量、その調理方法で食べられるということです
梨のアレルギーはそれほど多いものではありませんので、過度な心配は不要です。
しかし、今、梨が食べられたからといっても、大きくなってからアレルギーになったりすることはあります。特に花粉との交差があるPFASなどはその可能性もあります。
かといって毎回ドキドキして食べる必要はありませんが、あくまでも現時点でその量をその調理法(加熱など)で食べられるということだけになります。
まとめ
- アレルギーの可能性はゼロではないものの、赤ちゃんは発症頻度が高くないので過度な心配は不要です
- 梨を離乳食としてあげる場合は、誤嚥のリスクを考慮して離乳期の間は、煮てからあげましょう
- 離乳食は食べることになれる意味もあるので、あまり月齢の早いうちにあげる必要はありません。大人が食べるついでにあげる程度に考えておくといいでしょう。
参考文献
1)日本小児アレルギー学会,食物アレルギーの診療ガイドライン2021,協和企画
2)厚生労働省,授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)(2023年8月26日閲覧)
2)総務省,教育・保育施設等における事故防止及び 事故発生時の対応のためのガイドライン 【事故防止のための取組み】 ~施設・事業者向け~(2023年8月26日閲覧)
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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