妊娠中、生ハムやスモークサーモン大丈夫?:リステリア菌
妊娠中に生ハムやサーモンは食べても大丈夫なのでしょうか?
妊婦さんが普段の食事においてなにをどのように気を付けたらいいのか、管理栄養士が解説します。
妊娠中に気を付けたいリステリア菌とは
リステリア菌とは、河川水や動物の腸管内など環境中に広く分布する細菌です。
最初はペットからヒトにうつるものとされていましたが、
1980年頃から欧米諸国で牛乳やチーズにみられるようになりました1)。
健康な成人の場合には感染しても軽い胃腸炎症状や無症状であることも多いものですが、
高齢者や免疫不全症(抗がん剤治療中やHIVエイズの方など)の方、
乳幼児などは重症になることがあります。
妊婦は流産や早産、死産の原因になることから、
妊婦に対するリステリア菌予防が日本でも指導されるようになりました。
日本では、リステリア食中毒の事例はありません1)が、
欧米では、ナチュラルチーズなどの乳製品、
生ハムなどの食肉加工品、
スモークサーモンなどの魚介類加工品、
コールスローなどのサラダなどでリステリアによる集団食中毒が発生しています。
また、国内では、乳製品、食肉加工品や魚介類加工品などから、とても菌数は少ないですが、リステリアが検出されています。
念のため注意して不安に思ったら違うものを選択できると、より安心できるでしょう。
妊娠中に注意したい食材1:生ハム
欧米では、ナチュラルチーズなどの乳製品、生ハムなどの食肉加工品、
スモークサーモンなどの魚介類加工品、
コールスローなどのサラダなどでリステリアによる集団食中毒が発生しています2)。
また、国内では、乳製品、食肉加工品や魚介類加工品などから、とても菌数は少ないですが、リステリアが検出されています2) 。スモークサーモンや生ハム、(輸入品などの)非加熱ナチュラルチーズは気が付いたら避けておくと安心です。
国産の生ハムは、リステリア菌はほとんど検出されません
生ハムの製造については、日本では厳しく設定されており、
リステリア・モノサイトゲネスの規格は100cfu/g以下とされています。
また、多くの企業が「陰性=細菌数ゼロ」を目指して製造しているので、ほとんど問題がないと思われます。
しかしながら、厚生労働省が妊娠中に避けた方がいい食材の中に「生ハム」を掲げています1)ので、
その手前、大丈夫とは言えない状況です。
管理栄養士
例えば、避けられるのであれば違うものを選ぶと、より安心かと思いますが、食べてしまった場合は、日本製の生ハムであればリステリア菌は食品衛生法で厳密な管理をされているため、過剰な心配は要らないでしょう。
生ハムはリステリア菌以外にトキソプラズマの可能性もある⁉
ただ、生ハムはリステリアだけではなく、トキソプラズマの危険性もあります。
トキソプラズマの予防のために、避けるておくと安心です。 念のため医師にご相談ください。
注意したい食品2:スモークサーモン、いくら
欧米では、スモークサーモンなどの魚介類加工品による食中毒が発生していますので、
スモークサーモンも念のため注意が必要です。
リステリア菌は、冷蔵庫内でも増殖できてしまうので、
冷蔵庫など適切に保管していても、生食ではリスクがある細菌です 。
リステリア菌による食中毒は健常な大人では重症化する例は稀で、
感染しても気付かないことも多いものです。
サーモンは、もちろん加熱すれば食べることができますので、加熱して食べるようにしましょう。
また、いくらにもリステリア菌の可能性があります。
いくらは加熱をしておらず、しょうゆ漬けになっていますが、
しょうゆの塩分濃度でもリステリア菌は増殖する可能性があるので、妊娠中は食べないほうが安心です。
妊娠中にサーモンは食べられる?
スモークサーモンではなく、サーモンの刺身が食べられるかもあわせて考えましょう。
まず、鮭はアニサキスがいる可能性があるので、基本的に刺身で食べることはありません。
サーモンは養殖されたものが多く、アニサキスはいないことが多いので、あまり心配はいりません。
しかしながら、刺し身は調理しているまな板などや魚自体の鮮度など
さまざまな条件によって食中毒リスクが高まります。
食べても大丈夫なことが多いかとは思いますが、もし事前に気を付けることができそうなのであれば、
焼いたり炙ったものにしたりすることをおすすめすます。
注意したい食品3:非加熱のナチュラルチーズ
リステリア菌といえばナチュラルチーズが注目されがちですが、実は妊娠中でも食べることはできます。
日本で流通しているもののほとんどは、加熱牛乳で作られていますので心配ありません。
ナチュラルチーズは日本のメーカー品は大丈夫
ナチュラルチーズは、カッテージチーズやカマンベールチーズ、ゴーダチーズなどをさしますが、
あくまでも避けるものは非加熱牛乳で作ったものであり、
日本の大手メーカーのナチュラルチーズのほとんどは、原乳の時点で加熱されており、出荷前に検査しています*ので、心配ありません。
もしどうしても心配であったり、
海外からのチーズで非加熱乳かどうか不安が払しょくできない場合は
ピザやグラタンなど加熱して食べるといいでしょう。
アボカドにも検出されたリステリア菌
アボカドは、葉酸が豊富なので妊活期や妊娠初期には積極的に取りたい食材のひとつです。
しかし、米国内で流通する国産・輸入アボカドを調査したところ、
皮のサンプルの約18%からリステリア菌が発見されたとの報告が米食品医薬品局(FDA)から発表されました。
これは2014年〜2016年に米国内産及び、メキシコやペルー、チリなどから輸入したアボカドのサンプルを調査したところ
、約1/5のものにアボカドの皮にリステリア菌が見つかったと発表されました4)。
さて、この結果をわたしたちはどう解釈したらいいでしょうか。
まず、この菌が陽性かどうかというだけで、菌数がわからないので、
発症するレベルかどうかをもう一度考え直さなければいけないのと、
菌がついているのは皮であるので、
皮を洗えば問題ないと考えることができます。
このことから、日本においては、万全を期して
「アボカドは皮を洗ってから食べましょう」という程度で考えておけば問題ないでしょう。
リステリア菌の予防方法
まずは家庭で予防するように心がけましょう。これらは食中毒全般にも言えることなので、妊娠中から気を付けて、赤ちゃんが生まれてからも継続できるといいですね。
1.生野菜や果物などは食べる前によく洗いましょう
今回の事例にあったアボカドも、皮をきれいに洗えば問題ありません。皮を剥くからと過信せず、包丁についてしまうと中まではいってしまうので、事前に洗うようにしましょう。
2.賞味期限内に食べきりましょう
賞味期限や保存方法を守っていれば、食中毒が発生するほどの菌数にはなりません。リステリア菌は4℃以下の低温や、12%食塩濃度下でも増殖できるので、塩蔵製品も気を付けましょう。
3.開封後は、期限にかかわらず、なるべく早く食べきりましょう
一般的に、賞味期限や消費期限は開封前のことを指します。
冷蔵庫保管でも菌は増殖するので、開封後は期限にかかわらず早く食べきるようにしましょう。
4.冷蔵庫を過信しすぎないようにしましょう
リステリアは4℃以下の低温でも増殖できるので、冷蔵庫内でも増えてしまいます。
5.加熱してから食べましょう
リステリアは加熱により死滅するので、加熱して食べることも、予防対策の一つです。
さいごに
国内では、発生事例は毎年約 83 件でありますが、発生源がわかっておりません5)が、
輸入品も手に入りやすくなった昨今、
安心して妊娠生活を送るためにも、可能であれば、ストレスにならない程度で、気を付けておくといいですね。
赤ちゃんとお母さんの健康のためにも、
きちんと食材を洗ったり賞味期限をまもって楽しく食べていきましょう。
参考文献
1)厚生労働省「リステリア菌による食中毒 」
2)平成 21 年度食品安全確保総合調査 「食品により媒介される感染症等に関する文献調査報告書」
より抜粋 (社団法人 畜産技術協会作成)
・森永乳業 お客様相談室
・明治乳業 お客様相談室
4)USA TODAY「Eat avocados without washing them? That's an avoca-don't, FDA says」
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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