米粉は生米。離乳食のおかゆ向けではありません 管理栄養士解説

米粉は近年注目を集めている食材の1つです。ケーキや揚げ物に使ったり、とろみ付けにも使えるので重宝します。しかしながらここ数年、離乳食のおかゆにするというライフハックが出回っています。
しかし、米粉は生米なので、湯を加えるだけでおかゆにするのは決して良い方法とは言えません。
この件について管理栄養士である私が詳しく解説します。

米粉と米のアルファ化(α化)
米のα化(アルファ化)
私たちは、米を食べる時、生では食べず、必ず炊飯をします。
これは、やわらかくするという意味の他に、デンプンを消化しやすいように変えることを意味します。
米のデンプンを加熱して食べやすくすることを、アルファ化(α化)または、糊化といいます。
アルファ化とは、デンプンの結晶構造が崩れて消化しやすい状態になる現象です。
米のアルファ化の必要性
アルファ化をするには、お米に十分な水を加えて加熱することで、デンプンが分解されて甘みを感じることができます。
生のお米はベータ-デンプン
お米の炭水化物は、多糖類「デンプン」という形で含まれています。
生米はβ-デンプンと言われています。そもそも、米のデンプンの結晶構造が規則的に整列しているので、水が入りにくい状態ですので、じっくり浸水させて加熱する必要があります。
このデンプンの形では、ほとんど甘みを感じません。
しかし、この米のデンプンを単糖類「グルコース」まで分解すると、甘みを感じることができます。
これをアルファ化と言います。
このように消化しやすい糖に変える(α化する)には、水を加え加熱する必要があります。
加熱すると、粘りのある糊(のり)のようになることから糊化とも呼ばれるのです。
米粉の種類
一般的な米粉は、生のうるち米から、加熱せずに作られている
米粉にはたくさんの種類があり、うるち米から作る「上新粉」、もち米から作る「白玉粉」などがあります。
一般的に売られている「米粉」と呼ばれるものは、生のうるち米から加熱せず作られています。
これらの米粉は加熱前の粉なので、甘さはほとんどありません。
米粉の料理用やパン用などの主な違い
この一般的な「米粉」と呼ばれるものにもさらに種類があります。
米粉の種類には製菓用、料理用、パン用などがあり、違いは粒子の細かさです。また、吸水率も異なることが多い印象です。
加熱済米粉「アルファ化米粉」
アルファ化米粉とは、炊飯された米を加熱により急速乾燥させたアルファ化米を製粉した米粉です1)。
アルファ化(α化)=やわらかくなる+消化しやすくなる

離乳食における米粉の選び方・使い方
SNSやウェブ記事などに時折、「米粉でかんたんにおかゆが作れる」というものがあります。
なかには医師が発信しているものもありました。これらは「α化されているおかゆ用のもの」を意味しているのかもしれませんが、多くは米粉とは生米を意味するので、望ましくはありません。
母子栄養協会のTwitter(x)でも、本件を書いたところ「知らなかった」と引用されています。
2021年に母子栄養協会の調査によると、「米粉で作るおかゆ」というタイトルで想像する米粉とは、生米の米粉を想像する人がとても多く、製菓用米粉を連想する人が48.7%、乳児用のおかゆの素を想像する人を上回りました(下図)。パン用や上新粉などもあわせて考えると、6割以上の人が、生米の米粉を連想しています。

また、この調査の中で、製菓用米粉やパン用の米粉を使っておかゆを作ったことがある人(77名)のうち、お湯を溶いただけであげた人は11名(14.3%)、電子レンジで1分以内の加熱であげた人は16名(20.8%)と、ほとんどアルファ化されていない間違えた使い方をしている人がいることがわかりました。
表:非加熱米の米粉を使っておかゆを作ったことがある方の調理法
調理法 | 人数 |
---|---|
お湯で溶くだけ | 11名(14.3%) |
電子レンジで1分以内の加熱 | 16名(20.8%) |
電子レンジで2分以上の加熱 | 17名(22.1%) |
鍋で2分以内の加熱 | 5名(6.5%) |
鍋で3分以上の加熱 | 28名(36.4%) |
離乳食のおかゆを米粉にするなら、おかゆのもとを
米粉でもアルファ化されている米粉であれば問題ありません。
つまり、お湯で溶くだけで使う場合は下記のようなものがいいでしょう。
- ベビーフード用のおかゆフレーク(まつやのおかゆシリーズや和光堂の米がゆなど)
- 災害用の保存ができるおかゆフレーク
- その他「アルファ化米」と書いてあるもの
もちろん、ドライタイプではなければ、普通に売っている大人用のおかゆなども食べることができますので、そのようなものを冷凍しておくのもいいでしょう。
普通の米粉をおかゆにする場合
基本的には、普通の料理用米粉(α化されていないもの)を赤ちゃんのおかゆにすることはおすすめできません。
しかしながらもし、おかゆにしたいという場合には下記のことに気を付けましょう。
- 米粉と水を混ぜ合わせ、ダマがなくなるまでよく混ぜておく
- 弱火~中火で最低でも3分以上、(できたら5分以上)透明感が出るまでしっかり加熱する
- 突沸しやすく、局所的に温まるため、電子レンジは避ける
米粉を離乳食に使う場合
おかゆにするには、甘さを十分に引き出すことができなかったり、糖を吸収しやすい形にできないことからおすすめできません。
しかし、下記のようなことなら使うことができます。
- とろみをつける(片栗粉のように水で溶いてから使います)
- 焼き物や揚げ物の衣
揚げ物はあまり離乳食ではしないかもしれませんが、つなぎのようなかたちにも問題なく使うことはできます。
蒸しパンなどは、もちっとした食感になり、噛み切りにくくなることもあるので、ちょっと注意したいですね。
まとめ:おかゆ用米粉か、しっかり加熱を
米は必ず加熱をしてから使うことで、甘くおしくなり、なおかつ消化しやすくなります。一般的な「米粉」は生であるため、米粉をおかゆとして食べることはおすすめできません。
おかゆとして食べるときには、「おかゆ用」として売られているものを利用するようにするといいでしょう。
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米粉をお湯で溶いて離乳食のおかゆにつかってもいいですか?
米粉といっても「おかゆのもと」として売られているものなら大丈夫です。普通の米粉は生米なので水を加えてじっくり加熱をしましょう。お湯で溶くだけではダメです
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米粉と水を加えて電子レンジ加熱でもいいですか?
普通の米粉では、水とともにしっかり加熱することで甘くなります。電子レンジ加熱だけでは消化しやすいデンプンにするには不十分ですのでおすすめできません。
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米粉は離乳食に使えないのですか?加熱が不十分だとダメですか?
おかゆとして食べるにはしっかりと加熱する必要があります。しかし、片栗粉のようにとろみをつけるのであれば、量も少量ですし、糖としてそれほど多くを食べるわけではありませんので、それほど長時間の加熱ではなくても構いません。目的にあった米粉にしましょう。
参考文献
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
記事
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