離乳食の鉄分摂取は何をどのくらい?

離乳食の鉄分は、なにかと話題で心配になりますよね。
赤ちゃんは、成長が著しく、母乳育児の場合は、6ヶ月頃から貯蔵鉄が少なくなるため、鉄分をしっかり食事などから補う必要があります。
では、何をどのくらいとったらいいのかみていきましょう。
(正式には栄養素は「鉄」と呼ばれますが、わかりやすく「鉄分」と表記しますが同じ意味です)
赤ちゃんの鉄分必要量

赤ちゃんに必要な鉄分の量について、上記のWHOの表で説明をしましょう。
”Absorbed Iron(吸収された鉄)”が6-8か月で0.8㎎程度となります。
これは食事の量ではなく、
「吸収させるべき鉄」というところがポイントです。
食事からとるときは、この0.8mgは指標になりません。
日本食事摂取基準(2025年)でみると6-8か月の鉄は、
推定平均必要量:3.5㎎/日
推奨量:約4.5㎎/日
となります(下図)。
鉄は、このくらいの量を食品から摂れるといいといえる1つの指標とはいえるでしょう。

できるだけ、4.5㎎の推奨量を目指したいのですが、
まずは、推定平均必要量3.0mgをしっかり補うことに注力したいものです。
また、これらの数字は鉄の吸収率を16%であると仮定したものであることはポイントです。
乳児の鉄の吸収率は、現時点ではわかっていません。
この数字だけを追いすぎない方がいいともいえます。
ちなみに、食事摂取基準2020年版では、推奨量5.0mgであり、資料によっては違うかもしれません。
【関連記事】日本人の食事摂取基準(2025年版)乳幼児での変更点等を解説
鉄分が摂れる食品とは?
どのような食材からどのように鉄分を補うのがいいのでしょうか。
鉄は食品によって吸収率が異なるといわれちえます。
鉄分の吸収率の良い食品
一般的に、ヘム鉄の吸収率は約 25%、
非ヘム鉄の吸収率は約 5%ほど等のデータがあります。
しかし、このデータには他にも多数事例あり不明の部分が多いです。
また、鉄の吸収率は、低い値であった場合も「均衡性」をもちます。
同じ食べ物であっても人間の状態によって吸収率が異なります。
数値は大人の場合であり、なおかつ諸説あります。
しかし、いずれにしてもヘム鉄のほうが吸収率が高いので、ヘム鉄から摂れるといいでしょう。
- ヘム鉄…レバー、赤身の肉、赤身の魚など
- 非ヘム鉄…ほうれん草、大豆(豆腐、きな粉)、卵など
3.5㎎という数字などは吸収率が大人と同等で扱われていますので注意が必要です
3.5㎎という数字などは吸収率が大人と同等で扱われていますので注意が必要です

管理栄養士
ミルクや飲み物に含まれる鉄分
母乳育児の場合、母乳中の鉄含有量はとても低いことがわかります。
このことから、育児用ミルクやフォローアップミルクを飲んでいる赤ちゃんは、特に鉄を心配する必要はありません。

管理栄養士

このグラフでいくと、豆乳が多いように見けられますが、
大豆類に含まれているフィチン酸塩は非ヘム鉄の吸収を阻害してしまうことから、
吸収率を考えると特段に高いものとも言い切れません。
一方で、動物性タンパク質は、非ヘム鉄の吸収を助けますので、
肉や魚類は鉄が多い食品だけではなくしっかり摂ることを意識しましょう。
牛乳貧血とは
母乳や牛乳は、ほとんど鉄分を含んでいません。
「1歳までは、牛乳をごくごく飲むことは控える」といわれている理由はここにあります。
牛乳をごくごく飲んでしまうと、お腹いっぱいになり食事に影響がでてしまいます。
食事がとれないと、貧血が心配です。
よって、1歳未満では、牛乳は料理に少し使う程度にとどめましょう。
おもな食品の鉄分量

この表からわかるように、食事から1日あたり3.5mgの鉄分をとるには、レバーを1日あたり30gほど摂るか、育児用ミルクやフォローアップミルクを料理につかっていくより他にありません。
しかしながら、乳児における鉄の吸収率はデータが乏しいことを忘れてはいけません。
鉄の含有量をおいすぎないのが望ましいでしょう。

管理栄養士
下記のレシピなどを参考にしてください
毎日レバーで大丈夫というようなことにならないように、いろいろな食品から摂りましょう。粉ミルクを離乳食に使うのがおすすめです。
毎日レバーで大丈夫というようなことにならないように、いろいろな食品から摂りましょう。粉ミルクを離乳食に使うのがおすすめです。

管理栄養士
鉄分 以外の注意
鉄分の吸収を高めるには、たんぱく質やビタミンCなどがあげられます。
また、
貧血予防には、鉄のほかにも、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ビタミンC、銅なども必要です。
鉄だけを補おうとせず、あくまでもバランスのよい食生活が望まれます。
肉、野菜、穀類のバランスを大切にしたいですね。
鉄分を補給するベビー用お菓子やふりかけもオススメ
離乳食メーカーから販売されている、赤ちゃん用の鉄入りのおやつや、ふりかけなどがあります。
また、レバーのペースト、オートミール、鉄強化のライスシリアルなどもあります。
どれか1つに頼りすぎることなく、いろいろなものから無理なく補うことがとても大切です。
例えば、オートミールなどはフィチン酸という鉄吸収を阻害する成分も含んでいます。

管理栄養士
*このコラムは、「鉄」をわかりやすくなじみのある「鉄分」という言葉で表しています。
参考文献
・厚生労働省,授乳離乳の支援ガイド2019年
・厚生労働省,日本人の食事摂取基準 2025年
・日本食品標準成分表 八訂 2020年
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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