コンビニなどのカット野菜は栄養がない?危険? ちまたの噂を管理栄養士が解説
コンビニエンスストアやスーパーにあるカット野菜を「栄養がない」「薬漬けで危険」ととらえる人がいらっしゃるようですね。今回は、カット野菜や冷凍野菜について考えてみましょう。
管理栄養士がカット野菜や冷凍野菜をすすめる理由
管理栄養士である私が食事指導、食事相談などをする際に、野菜がなかなか摂れない方に対して、カット野菜をオススメすると、
よく「カット野菜は危ないので使いません」というお言葉を頂戴します。
果たして、カット野菜の危険性は、必要性を上回るのでしょうか。
筆者がカット野菜をおすすめする方は、あくまでも「野菜がなかなか摂れない方」です。
食事相談は、全員に回答が同じではありません。
例えばいつも料理作りを楽しんでいて、野菜を充分にとっている方に、カット野菜をお勧めすることはないです。
管理栄養士がカット野菜をすすめる理由は、野菜の量を少しでも増やしてほしいからです。
カット野菜ではなくてもいいですが、なるべくとりやすく、無理のない方法を模索した上でのカット野菜になります。
その方がもっとも摂りやすい方法で、とにかく野菜を増やしていただきたいので、カット野菜はその上で良いかと思いますが、もちろん野菜を丸のまま購入するのは大歓迎ですし、冷凍野菜でもいいですし、惣菜などから摂ってもいいでしょう。
たくさんいろいろな提案をする上での1つが「カット野菜」になっただけです。
カット野菜にはどのような利点があるでしょうか
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カット野菜の利点
カット野菜の利点はいろいろありますが、下記の3つでしょう。
・皮むきやカットが不要
・購入しやすい(コンビニエンスストアなどで購入可能)
・塩分などの味付けがされていない
お惣菜などと比較して塩分がないので、好みの味に調理できるというのがメリットです。
また、皮むきやカットの必要がないので、料理したくない時や忙しい時などに、パッと使うことができます。

「野菜は面倒だから使わない」ではなく、少しでも野菜をとってみましょう。
カット野菜は栄養がないのか
では、利点はわかったものの、カット野菜や冷凍野菜は、栄養がないのでしょうか。
多くの方がおっしゃる「栄養」とは「栄養素」のことかと思いますが、ここでは一般的に使われる「栄養」という言葉をあえて使います。
栄養素とは、エネルギーを作る3大栄養素(糖質・脂質・たんぱく質)と、ミネラル、ビタミンに大別され、このほかにも、食物繊維、ビタミン様物質、フィトケミカルなどがあります。
*ビタミン様物質:ビタミンUやFなど
*フィトケミカル:イソフラボン、カカオポリフェノールなど
生物(動物や植物)は、何らかの栄養素が入っていると考えますので、「栄養がない」ということはありません。
カット野菜でも栄養はあります。

新鮮野菜とカット野菜の栄養的な違い
野菜は、収穫された瞬間から栄養素が変わっていきます。
有名なのが、ビタミンCです。
冷蔵庫で長い時間保管されていたり、切ったり水にさらしたりすると、ビタミンCは減っていきます。
つまり、収穫後すぐの野菜と、
よく洗浄されてカットされてさらに洗浄されている野菜とでは、
ビタミンCは減少しているといえるでしょう。
しかしながら、私たちが食べるときも同様にカットしたり洗ったりはしますので、食べる段階ではあまり大きな違いはないのです。
冷蔵庫の中で長期間眠っている野菜より、カット野菜のほうが多い栄養素もあるかもしれませんね。


カット野菜ってビタミンCがないんですよね。

たしかにビタミンCは収穫後から少しずつなくなります。
長期間保管したり、洗ったり、加熱したり…と何かと少なくなります。
でもゼロになるわけではありませんし、他にもいろいろな栄養素があるのです。
それらも考えて、野菜を1日350gとることが健康でいるための指標とされていますので、
気にせずまずは1日350gを目指しましょう!
カット野菜でもいいので、しっかり量を食べましょう
確かにビタミンCなどの一部の栄養素は、収穫時に比べると減っていきますが、収穫後すぐに生で食べるのはほぼ不可能であるので、口に入るまでのことを考えるとカット野菜でも私たちが調理するものでも大きくは変わりません。
もし栄養が少ないというのが気になるのであれば、「選択しない」のではなく、100g食べるべきところを120gとるように心がけるといいですね。

カット野菜は衛生と袋で日持ちする!
自宅ではカット野菜はすぐに傷むのに、コンビニなどのカット野菜は日持ちするのでしょうか。
1つは衛生、1つは保存袋です。
衛生は、大量調理施設衛生基準マニュアル1)に基づいて、次亜塩素酸ナトリウム溶液等や電解水で消毒されています。これは給食などであれば行っていることで、衛生的に生野菜を食べるために必要な工程です。次亜塩素酸ナトリウムは、そのまま原液をガブガブ飲めば危険でしょうが、かなり薄めて使うので人間に被害はありません。また、たんぱく質とあわさると「塩」になりますので問題ありません。
保存袋は、コンビニの保存袋は、衛生的に管理され、なおかつ特殊な鮮度保持フィルムが使われています。
一度開封されるとそれほどはもちませんが、開封する前なら鮮度がある程度もつカット野菜の秘密は「衛生」と「袋」に秘密があったわけです。
カット野菜の栄養素は、学校や給食とほぼ同様
給食も、同じように次亜塩素酸ナトリウム溶液等でしっかり洗ってから作られていますので、給食などとほぼ同じです。
また、たんぱく質とあわせれば塩になる危険ではない溶液です。
もちろん原液をそのままごくごく飲めば危険ですが、微量であれば人体には全く影響がありません。
私たちが食中毒を起こさないように配慮されて管理されています。

もちろん保存期間は少し異なるので若干の差はあるかもしれませんが、そのごく微量のビタミン量を気にするなら、10gでも多く野菜を食べてみませんか?
カット野菜の栄養成分(キャベツ)
キャベツ(生)の栄養成分は、八訂食品栄養成分表をもとにすると下記の通りになります。
エネルギー 21Kcal、たんぱく質1.3g、脂質0.2g、炭水化物5.2g、食物繊維1.8g
八訂 日本食品成分表 キャベツ生 100g 2)
鉄 0.3㎎、カルシウム 43㎎、カリウム200㎎、ビタミンC 41㎎*
*カットして浸水させるとビタミンCは減少が想定されます
カット野菜でもこの数字があてまるかわかりませんが、季節などによっても食材は多少の栄養素のばらつきはあるものです。
そこまで細かいことをきにせずしっかり食べることが大切です。
まとめ
カット野菜の衛生や薬剤、栄養の減少などがそれでも気になる場合は、無理に食べることはありません。本記事は無理にすすめるものではありません。
この記事は、さまざまなことが気になってカット野菜に手がのびないけれど、自分で野菜を切ったりする手間を考えてなかなか野菜が不足してしまうような方にむけての記事になります。
大人は、1日350gをむりなくとっていきたいですね。
幼児には特に目安がありませんが、1日に210-280gはとれるといいですね。
あわせて読みたい:▶ワーキングマザーのための時短レシピ(晩御飯編)
参考文献
1)厚生労働省,大量調理施設衛生管理マニュアル,平成29年6月(2022年12月3日閲覧)
2)文部科学省,日本食品標準成分表2020年版(八訂)(2022年12月3日閲覧)
著者

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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