BLW(赤ちゃん主導の離乳食)の基礎知識と注意点

新しい離乳食のやり方として注目されているBLW。

本来の離乳食の手づかみと大きくは変わりませんが、新しいやり方だと思っていると危険かもしれません。

従来の離乳食とは何が同じで何が違うのかを知り、窒息や栄養欠乏には十分にご注意ください。

BLWとは?

BLWとは、「Baby led weaning」の略です。Baby(赤ちゃん)がLed(主導の)Weaning(乳離れ)という意味で、
イギリスの訪問保健師Gill RapleyとジャーナリストTracey Murkettが提唱している
赤ちゃん主導の食事システムです。

これはBLW離乳食とも呼ばれ、
離乳食を始めるタイミングを赤ちゃん自身が決め、
スプーンで食べさせたり、裏ごしをする必要はないとしています。

つまり、
BLWとは、赤ちゃんが自分で食べようとする意志を尊重しながら進める
お食事方法のことです。

BLWと従来の離乳食の違い

開始時期の考え方

では、離乳食の始める目安 はBLWと離乳食では、離乳食の始める時期の目安は違うのでしょうか。

結果からいえば、「どちらも同じ」です。
強いて言うなら、BLWと離乳食における始める時期の違いは、
授乳・離乳の支援ガイドでは、6ヵ月頃から母乳だけでは少しずつ成長に必要なエネルギーが足りなくなってくるので、
食事は6ヵ月頃には始めてもらうことから「生後5-6ヵ月頃から始める」としている点です。


BLWにおいては、栄養の過不足については触れられていないので、
その点、いつでもいいか、そのうち食べるようになるかなとおおらかに構えることができるのかもしれませんね。

BLW:座れる時期目安が目安

BLWの考えでは、座れる時期であり、なおかつ食べ物に興味があり、
自分で食べられればOKとしています。

従来の離乳食:5~6ヶ月頃が目安

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」では、開始時期については
・首のすわりがしっかりしていて寝返りができ、5秒以上座れる
・スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことがなくなる
・食べ物に興味を示す
・生後5-6ヵ月頃から(ただし個人差があり月齢は目安)
・子どもの食べたがっているかのサイン
としています。

赤ちゃんのはじめての食事は、やわらかく調理をすることが望まれると思いますが、
スプーンであげないのであれば、食材や調理が限られてくる可能性があるでしょう。

流行っているといって安易に実施すると、
「食べられないからあげなくてもいい」と放棄してしまうことも想定されます。

6ヶ月でも離乳食から摂りたい栄養があることは考えておきましょう。
赤ちゃんのはじめての食事は、やわらかく調理をすることが望まれると思いますが、
スプーンであげないのであれば、食材や調理が限られてくる可能性があるでしょう。

流行っているといって安易に実施すると、
「食べられないからあげなくてもいい」と放棄してしまうことも想定されます。

6ヶ月でも離乳食から摂りたい栄養があることは考えておきましょう。
管理栄養士

管理栄養士

例えばスプーンであげても、自発的に食べることができたらBLWとする…など、少しゆるい考え方にしておくといいでしょう。

食べさせ方の違い

食べ方については、
BLWは赤ちゃんが食べたいものを好きに食べるという感覚があり、
手づかみで食べたかったらどうぞというスタンスです。
これに対し、離乳食では
最初のうちは赤ちゃんの嚥下や咀嚼を考えてペーストとする考えです。

BLW:手づかみを中心に、赤ちゃんのペースを尊重

食具は使わず手づかみ。テーブルに2-3種類置き、赤ちゃんが食べたいと思うものを好きに食べる。

従来の離乳食:ペースト状からスプーンで与えるやり方

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」では、
最初は固形のものが食べられない(咀嚼上の危険がある)ことから、
スプーンでヨーグルトのようにポターとしたものから始めることとし、
つぶしたおかゆやポタージュやペーストから始めるため、
手ではなくスプーンで上げるほうが栄養を摂取しやすく、
嚥下もしやすく事故も少ないと考えられています。

また、手づかみをしようとしたら阻止をせず、手づかみで食べる気持ちを尊重し、手づかみを推奨しています。

日本の離乳食とは全く違うという印象の方も、日本の離乳食と同じという印象の方もいるかもしれません。

BLWと離乳食の大きく違う点は、
・BLW…赤ちゃんが食べ物を選ぶ
・離乳食…大人が食べ物を選ぶ
という点です。

また、
手づかみ推奨はどちらもしていますが、BLWのほうが推奨度合いは高く、スプーンは使わないことを推奨しています。

筆者は、「日本の離乳食とBLWは、食卓を囲む大切さや赤ちゃんの食欲にあわせることは同じと感じます。

BLWと離乳食を比べて、どちらの手法がいいか悪いではなく、家族等と食卓を囲むことはとても大切です。
BLWと離乳食を比べて、どちらの手法がいいか悪いではなく、家族等と食卓を囲むことはとても大切です。
管理栄養士

管理栄養士

BLWの利点(メリット)

BLWは、赤ちゃんが自分で食べる順番や量、ペースを決めて、赤ちゃん自身が食べるまで待つという考えです。

・離乳食をはじめる目安は「座れる時期であり、なおかつ食べ物に自分で興味があって、自分で食べらればOK」
・赤ちゃんと家族と一緒に食卓を囲んで食べる
・赤ちゃんがいっぱい食べても、量が少なくても大丈夫
と、全体的におおらかに構えています。

そこで、もし、離乳食に対して過剰な不安があるのであれば、
これらの言葉が大きな魅力になるでしょう

離乳食は、実はそれほど決まりは多くないのですが、何か大変なイメージがあって、どうしてもしっくりこないという人や、不安が大きくて進められないという人には魅力的にうつるかもしれませんね。
離乳食は、実はそれほど決まりは多くないのですが、何か大変なイメージがあって、どうしてもしっくりこないという人や、不安が大きくて進められないという人には魅力的にうつるかもしれませんね。
管理栄養士

管理栄養士

BLWの注意点・問題点

筆者は、BLWによる専門家講習を受講しました。
ママパパの気持ちがそれでラクになるのであれば、BLWは良い方法と思う一方で、
管理栄養士としていくつか気になる点はあります。

窒息リスクへの配慮

BLWだからというわけではありませんが、赤ちゃんが大人の監視下を離れて食べるときは、常に危険が伴います。スプーンで一口大のものをゆっくりあげるのであれば、その危険度は低いものの、

赤ちゃんのペースで赤ちゃんの好きなものを食べさせる。
硬いものでも何でも構わない…とした場合には、注意が必要です。
(BLWの講習では「窒息の危険性は離乳食と同じ」としています。
離乳食でも大きさにより窒息の可能性はゼロではないとされています。)

栄養不足の可能性

「赤ちゃんが自分で選ぶ」と放任してしまうと、栄養の偏りが出てしまうことが心配です。

本当にバランス良く食べ物を選ぶかというのはギモンです。
赤ちゃんが選ぶ食べ物とはいえ、調理するのは大人なので、
何をどのように調理するかは伝える必要があるのではないかと考えます。

BLWをやりたいと思ったときには、
まず家族の食事をメインと考えてやはり栄養バランスがとれた食事を用意することは忘れないようにしたいものです。
BLWをやりたいと思ったときには、
まず家族の食事をメインと考えてやはり栄養バランスがとれた食事を用意することは忘れないようにしたいものです。
管理栄養士

管理栄養士

また、赤ちゃんが食べ物を選んで食べなかった時の栄養欠乏や、
鉄やカロリーなど必要な栄養が足りそうかそうでないかの判断が難しいのではないかとも思います。

手づかみによる弊害など

また、食に関心をもつことは、とてもよいことですが、テーブルや床下などが汚れることを親がどこまで許容できるか、かえってストレスにならないかも考えたい点です。

アレルギーに関する危険性

アレルギーの強いものなどを手づかみしたり、不衛生なものを手づかみしないようにすることも伝えたいものです。

また、アレルギーの可能性が多い食べ物などを一度に複数種類食べないようにするなどの配慮は、従来の離乳食と同様に必要です。

例えば、卵の加熱時間が少ないものをいきなり手づかみで食べるようなことは出来たら避けたいものです。

BLWと離乳食の類似点

食環境については、BLWでも離乳食でも、赤ちゃん1人が食べるのではなく
大人が一緒に食べることをとても大切にしており、どちらも全く一緒です。

BLWおよび従来の離乳食:食卓を囲んで、大人も一緒に食べましょう

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」には、家族等と食卓を囲み、
共に食事をとりながら食べる楽しさの体験を増やしていくことで、1人ひとりの子どもの食べる力をはぐくむとしています。

どちらも「家族等と一緒に食べる」ことが赤ちゃんの食欲などには良い影響があると言っています。

これはBLWも日本の離乳食も言っていることは同じです。

しかし、現代の離乳食の状況はいかがでしょうか。

赤ちゃんのためだけに離乳食を作り、赤ちゃんだけが決まった時間に食べ、
家族は赤ちゃんが寝た後などにこっそり食べるということをしていませんか?

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、
赤ちゃんの食事だけ別にするのではなく、
「家族等と一緒に食べる」「共食」という言葉を複数回使って強調しています。


離乳食であっても、BLWであっても、
共通している「共食の大切さ」については大切にしていきたいですね。

手づかみできるBLW離乳食レシピ

離乳食の手づかみと、BLWとの違いはわかりにくいものです。

本来は、自分のちからで食べるということがBLWであるとするなら、
手づかみして自分で食べる離乳食と大きな違いはないようにも思えます。

もし、手づかみしたいということがあれば、
下記のようなまぐろの刺身を焼いたものなどのレシピもいいかもしれませんね。

【関連記事】まぐろの刺身で鉄分補給レシピ

BLWから考える、離乳食を楽しむ大切さ

BLWは「赤ちゃんが選ぶから」という理由になるので、
「食べてくれない」という発想で親が悩むことはないのかもしれませんね

管理栄養士としては栄養欠乏やアレルギー等が心配がぬぐえませんが、
どうしても日本の離乳食が決まり事だらけで大変だと思って悩んでいたら、
一度こんな考えもあるのだと知っておくことで気分をラクにすることはいいかもしれませんね。

離乳食でも

・何をいつからどの食材を何gとは決めていない(あくまでも多め?少なめ?と判断するための目安値)

・家族などと食卓を囲んで一緒に食べることが大切

・手づかみなど赤ちゃんの食欲をひきだしてあげることが大切

としています。

しかし、BLWという1つの手法を通じ、
離乳食の基本を今一度考えるきっかけとなり、
育児中のママパパが無理なく楽しく離乳食タイムが過ごせるようになりますように。

離乳食は何g、何mmと決めているものではなく、乳児の発育発達と食欲にあわせてすすめていきましょう
離乳食は何g、何mmと決めているものではなく、乳児の発育発達と食欲にあわせてすすめていきましょう
管理栄養士

管理栄養士

【レシピ】手づかみ焼うどん

よくある質問

  • Q BLWと離乳食の違いは?
    A

    根本的に、BLWも離乳食も一緒です。
    離乳食は「何㎜とか何gと難しい」と誤解されていることはあると思いますが、
    そのようなことはありません。
    量や大きさはだいたいの目安にすぎません
    赤ちゃんには赤ちゃんのペースもありますので、
    本来の離乳食の姿を再度考えてみてくださいね。
    また、家族で一緒に食べる大切さも忘れずに

  • Q BLWは危険ですか?
    A

    その答えは「何をもってBLWと呼んでいるのか」によると思います。
    たとえば、BLWの手法だからと硬い豆や皮が付いたミニトマトなど、
    なんでもいいから手づかみで食べさせてみる…というようなことは危険です。

    BLWは、食べさせるものは何でもいいとは言っていないので、BLWでも離乳食でも赤ちゃんの前に置くものはある程度考えておく必要はあるでしょう。

    また、卵やソバなど、アレルギーが強くでる可能性があるものを手づかみで量を気にせず最初から食べさせることも、望ましいとはいえません。

    つまり、BLWだから危険とか、離乳食だから安全ということではなく、
    BLWというものをどのように考えているか というところに回答があります。

    まだドロドロとしたものだけを食べる時期に、無理に硬いものを食べさせても咀嚼機能がうまくいかずに、のどにつまらせたり全部便にでてしまうこともあります。舐めるだけで食べないこともあるでしょう。しっかり栄養をとるためにはある程度ドロドロのものも必要なので、離乳食と同じだと考えていただけると嬉しいです。

【関連記事】補完食とは?離乳食と何が違う?

参考文献

厚生労働省:授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)2024年5月1日 リンク先をこども家庭庁に変更

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
コピーしました

お問い合わせ

母子栄養協会のWebサイトをご覧いただきありがとうございます。
当協会の事業内容や資格講座についてのお問い合わせは下記のフォームより承ります。

※資料請求、最新情報が受け取れるメールマガジンへの登録もこちらのフォームで承ります お問い合わせフォーム