赤ちゃんの成長を考えた「補完食」 始め方やスケジュール

赤ちゃんのはじめてのお食事を「離乳食」といいますが、近年「補完食」という言葉があります。

補完食とはどのようなものなのか、「赤ちゃんのための補完食 入門」を監修した管理栄養士の川口が説明させていただきます。

>著者 相川晴 さんの補完食ブログ

補完食とは?

母乳やミルクは、赤ちゃんの成長に必要な栄養素をバランスよく含んでいますが、生後6ヶ月頃以降は少しずつそれだけでは不足してしまいます。

補完食とは、母乳やミルクだけでは不足しがちな栄養を補うために、赤ちゃんにあげる食事のことです。

赤ちゃんの成長のほうが大きく、母乳やミルクだけでは補いきれなくなっていきます。そのため、食事を追加していき、赤ちゃんの成長を助けます。これが補完食といわれています。これは日本では離乳食と呼ばれています。

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補完食を選ぶ際には、以下の点に注意しましょう。

尚、この記事では補完食と書きますが、離乳食でも同様のことになりますので、離乳食を選ぶときでも同じことが必要です。

離乳食完了とは 離乳食とは 離乳完了から幼児食への移行

補完食はいつからいつまで?(スケジュール)

赤ちゃんの栄養の必要性が母乳だけで賄えなくなった時、つまり生後6ヶ月頃が補完食開始の目安です1)
適切な時期に食事を始めることで、赤ちゃんの成長が助けます。

この頃には食事をあげるようにしましょう。

補完食のスケジュールとしては生後6ヶ月頃から始めるのが望ましいでしょう。

補完食はいつからはじめる?(開始時期)

舌の動きをコントロールできるようになる生後4~6ヵ月になると、
とろみのあるおかゆやピューレ、すりつぶしたものを食べさせやすくなります。

この頃になったら少しずつ焦らず補完食をスタートしましょう4)

・舌を上手にコントロールできる。
・上下に「もぐもぐ」動き始める。
・歯が生え始める。
・口に物を入れたがる。
・新しい味に興味を持ち始める。

などがみられれば開始のサインです。

管理栄養士

管理栄養士

5・6ヶ月頃から少しずつ始めるという離乳食はこの考えに基づいています。開始のサインもとても似ていますね。
ちまたで離乳食は5・6ヶ月と幅があり、補完食は6ヶ月などともいわれていますが、原著には6ヶ月頃には栄養補助の意味からたべさせるとよいという意味であり、実際始める時期は4-6ヶ月の間に少しずつとされていますのでこのあたりも同じです。

補完食はいつまで?

WHOでは6ヶ月から24ヶ月頃まで、母乳育児を続けながら補完食を始めることを推奨しています2)

しかし、この終わり時期は「おもにエネルギーが食事からとれるくらいの時期」という意味であり、この終了時期はなだからなもので、卒業や辞めるという言葉がありません。

いつまでということを意識するのではなく、母乳はそのまま続けても構いません。

補完食の回数

6ヶ月頃からはじめますが、最初のうちは1日2~3回が望ましいとされています。

6~8ヶ月になったら1日3~4回に増やします1)

12~24ヶ月では、1日3回の食事に追加として必要に応じて1日1~2回、間食をあげるようにします1)ので、1日5回くらいともいえます。

補完食の始め方と量

  • 1日2回、ティースプーン 1~2杯から始めましょう4)
  • 量と種類を徐々に増やしてください

とされています。

管理栄養士

管理栄養士

「少しずつ」「徐々に増やす」なども離乳食と同じですね。

補完食のあげ方

補完食であげ方は細かくは指導されていませんが、下記のように書かれています。

あげるタイミング

赤ちゃんの空腹感や満腹感の合図に合わせて、
年齢に応じた適切な頻度と量であげるようにします。

また、赤ちゃんに食事をあげる人は赤ちゃんの空腹の合図に気づき、

食べることを促すようにしましょう。

食器など

補完食は清潔に保管、調理し、清潔な手で清潔な食器を使って与えます1)
哺乳瓶や乳首は食事をあげるときには使わないようにしましょう1)

補完食の食事の種類や硬さ

赤ちゃんの成長に合わせて、十分なエネルギー、たんぱく質、ビタミン、ミネラルをあげるようにします1)

特に、エネルギー、鉄、亜鉛、ビタミンAは少なくなりがちなので気をつけましょう4)
としています。

補完食の硬さの目安

赤ちゃんが成長するにつれて、徐々に食事の硬さと種類を増やしていき、赤ちゃんの必要性と能力に合わせましょう。

生後6ヶ月頃~すりつぶした食べ物やマッシュした食べ物、半固形の食べ物を食べることができます。
8ヶ月頃~多くの赤ちゃんで手づかみ食べがみられるようになります。
12ヶ月頃~家族と同じ種類の食べ物を食べることができます。
ただし、肉、鶏肉、魚、卵、乳製品などの動物性食品など高エネルギー食品はあげすぎに注意しましょう。

誤飲誤嚥事故の防止のために、窒息を引き起こす可能性のある食べ物、例えば丸ごとのブドウや生のにんじんなどは避けましょう。

飲み物

補完食では、
栄養価の低い飲み物や、お茶、コーヒー、甘い清涼飲料水を避けましょうとしています。

ジュースの量も制限して栄養価の高い食べ物を優先するようにします1)

飲み物は、固形食や母乳の代わりにはしないようにします4)。食事と一緒に飲み物を与える場合は、ほとんどを最後に残しておくといいでしょう4)。子供が食べなくなることがあるためです。

紅茶やコーヒーは鉄の吸収を低下させます。食事と一緒に飲んだり、食事の前後2時間には避けましょう4)

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管理栄養士

管理栄養士

日本では緑茶やほうじ茶も、出来たら食事中や食事前後は避けておくと安心ですね

衛生

WHOの補完食の紹介記事では「飲水は沸騰させるか飲水フィルターを通す。未殺菌の牛乳は沸騰させる。ジュースにする果物の外側を洗うように」 などと書かれています。

これらでわかるようにWHOの補完食は発展途上国のヤセを問題視しています。これらに向けてのメッセージが他でも多く散見されますので、
日本においてあてはまるのかどうなのかを読みこむ必要があります。

補完食で大切なポイント「成長をしているか」

補完食で大切なポイントは「成長をしているか」という点です。

成長はどのようにみるかというと、
成長曲線に沿っているかと元気があるかで判断します。

世界保健機関(WHO)は、2025年までに5歳未満の低身長児を40%削減するなど、6つの目標を含む「Comprehensive implementation plan on maternal, infant and young child nutrition(母子栄養に関する包括的実施計画)」の実施に取り組んでいて、それを踏まえた対策の1つがこの補完食になります。しっかり栄養が摂れるように支援していきます。

また、「乳幼児栄養に関する世界戦略」では、適切な乳幼児栄養を保護、促進、支援することを目指しており、それらを踏まえて多くの子どもが衛生的な食事を摂れるように支援が望まれています。

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補完食は厚生労働省のガイドラインに書いてあるか

補完食については、厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定 に記載があります。

離乳とは、成長に伴い、母乳又は育児用ミルク等の乳汁だけでは不足してくるエネルギーや栄養素を補完するために、乳汁から幼児食に移行する過程をいい、その時に与えられる食事を離乳食*という。

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定

この上記の*のところはページ末に

*WHOでは「Complementary Feeding」といい、いわゆる「補完食」と訳されることがある。

厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定

と書かれています。

つまり、離乳食とは、WHOでは補完食と訳されていますよ。ということになります。

管理栄養士

管理栄養士

同じ意味とされているので、離乳食と補完食とは違うと決めつけず、栄養に気を付けながら離乳食を進めていきましょう。

補完食のレシピ

補完食のレシピは無限大といえます。離乳食でも同じことがいえますが、それは普通の大人向けのレシピよりも食べやすくしたものであれば構わないためです。

WHOのComplementary feeding: family foods for breastfed children4)には、
1⃣特別に赤ちゃんのために調理された食品
2⃣特別に調理された食品と、通常の家庭の食品を食べやすくし、十分な栄養素を摂取できるように改良した食品

があるとしています。

これは、いわゆる1⃣赤ちゃんのために作るものと2⃣とりわけ離乳食 を意味しています。

キャッサバとピーナッツのシチュー

同書では続いて例として「キャッサバとピーナッツのシチュー」をあげています4)

作り方とあげ方

・離乳食を始めるころは最初はお粥を用意しておく。

・赤ちゃんが大きくなったら、大人のキャッサバとピーナッツのシチューを取り分けて、キャッサバをつぶしてあげるようにする。つぶすことでペーストのようになり、とろみがうまれて赤ちゃんが食べやすくなります4)


このキャッサバとピーナッツのシチューに、ビタミンAを追加するためにマンゴーのかけらを加えたり、鉄分を追加するためにレバーを加えたり、エネルギーを追加するために油やマーガリンを加えたりしましょう。と書いてあります。

まとめ

補完食は、母乳やミルクだけでは補えない栄養を食事で補うというもので、離乳食と同じ、赤ちゃんの健やかな成長をサポートするために欠かせないものです。1歳までは母乳だけでいいということはなく、母乳だけでは赤ちゃんの成長に足りませんので、6ヶ月頃から赤ちゃんには食事をあげるようにしましょう。

基本的に補完食は発展途上国に向けての成長不良改善、および先進国での肥満を対象にして作られています。水や食品の安全や栄養の補給などは日本に当てはまらないところも多くあります。

補完食でも離乳食でも基本は同じことですが、もし離乳食は難しい細かい…と感じたら、このくらいざっくりとした「栄養を補えばいいんだ」という程度に考えておくといいかもしれません。

離乳食は、なにを〇gと細かく種類や量を決めがちですが、本来離乳食にそのような決まりはありませんので、細かく気にすることなく、赤ちゃんの成長を見ながら進めていけるといきましょう。

参考文献

1)WHO,Complementaly feeding(2023年10月10日閲覧)

2)Chessa K Lutter ,Complementary Feeding~Biological, behavioural and contextual rationale,WHO,2017年09月(2023年10月10日閲覧)

3)WHO,Comprehensive implementation plan on maternal, infant and young child nutrition(2023年10月10日閲覧)

4)Complementary feeding: family foods for breastfed children,WHO,2020年3月(2023年10月10日閲覧)

5)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」2019年改定(2023年10月10日閲覧)

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川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている