塩麹はいつから食べられる? 乳幼児にもOK?管理栄養士が解説
塩麹を調味料の一つとして料理に使っている、というご家庭もありますが、赤ちゃんにあげてもいいのでしょうか?
何歳から食べられるのか、使うときの注意点などを管理栄養士・母子栄養指導士が解説します。
塩麹とは発酵調味料の1種
塩麹とは、塩と麹を原材料として発酵させて作る、いわゆる発酵調味料です。
現在では調味料として使うことも多い塩麹ですが、昔から漬物や漬け床などに使われてきたものです。
用途としては、肉や魚に漬け込んで調理する、スープやドレッシングを作る際、お塩の代わりとして使うなど様々です。
では、発酵調味料とはどのようなものなのでしょうか。
発酵調味料とは
発酵とは、食品に微生物が増えることによって起こる変化のことで、いろいろな微生物による発酵があります。
日本における発酵調味料は、しょうゆや味噌、みりん、酢、酒などがあげられますが、
これらは全てカビの一種である「麹(こうじ)」を使っています。
発酵と腐敗の違い
発酵と腐敗の違いは、人にとって有害が否かの違いです。線引きが難しいところですが、人にとって安全性が保たれていることが発酵の条件です1)。
麹による発酵
この麹菌は、実は日本の「国菌」に指定されています2)。
これは、和名では「コウジカビ」とされ、別の漢字ではコメ偏に”花”の、「糀」と書くこともあります。
麹という漢字は、中国で麦をもとに作られたものから起因しますが、日本では米をもとに作るため、米の花の「糀」という漢字もできたのかもしれませんね(筆者推測)。いずれにしてもこれらの漢字は同じ意味のようです。
麹菌にも種類があり、でんぷんを糖に分解する酵素「アミラーゼ」等をもつ”Aspergillus oryzae”と、おもにタンパク質分解酵素をもつ”Aspergillus sojae”などもあります2)。
塩麹など発酵調味料のメリット
塩麹やしょうゆ、味噌などの発酵調味料が良いなどといわれますが、
実際にどんなメリットがあるのでしょうか。
肉などをやわらかく!
麹(こうじ)に含まれる、タンパク質分解酵素によって、
肉などを漬け込むと肉質がやわらかくなる というのがメリットです。
味つけが簡単!
塩は単体の味ですが、
塩麹やしょうゆ麹、しょうゆ、味噌などは、味が複雑でいろいろな旨味があります。
そのため、塩だけで味を付けるよりも味に深みがあり、おいしくなります。
この理由にはオリゴ糖などのはたらきもあります。
ほのかな甘味もあるので美味しさを感じやすいのかもしれませんね。
管理栄養士
食材をやわらかくすることでおいしく食べられることは、料理も簡単になり、いろいろな食材を試したりますね。
「ペプチド」を含むため高血圧を抑制?
近年の研究で、麹がたんぱく質を分解することで生成される「ペプチド」には、
血圧を低下させる効果があることなどが示されています。
しかしながら、この見出しで「高血圧を抑制」のあとに「?」をつけたように、
たしかにペプチドにはその効果がみられても、一緒に血圧に影響を与える塩分も摂取していまうことになるため、
塩麹は高血圧を抑制する健康効果を期待できるとは言えないかと思います。
塩麹(塩こうじ)のデメリット
では、塩麹にはメリットしかないのでしょうか。
食べ物にはメリットもあればデメリットもあるものです。デメリットをみてみましょう。
塩分はしょうゆや味噌とほぼ同量含む
デメリットはほとんどありませんが、強いていえば、塩分を含むということです。
塩麹の塩分量はだいたい10~14%くらいです。
これは、塩分10%(100gあたり食塩相当量10g以上)ではないと腐敗が進行する可能性があるためです。
ただし、塩麹の塩分量はだいたいしょうゆや味噌と同量なので、過度な心配は不要です。
しょうゆや味噌との塩分%比較
しょうゆ(濃口) | 14.5% |
みそ | 12.4% |
塩麹* | 10-14% |
*塩麹は食品成分表にないため、市販品からとっています
商品名 | 食塩相当量(100gあたり) |
マルコメ株式会社/プラス生麹 | 10.0g |
ハナマルキ株式会社 | 13.0g |
海の精株式会社 | 10.7g |
イチビキ株式会社 | 8.1g |
市販の塩麹の食塩相当量
塩麹の塩分量はメーカーによっても差がありますが、市販の塩麹の塩分は100gあたり10g前後です。
加熱して使う必要がある
塩麹を使った料理を作る際には、加熱をして使います。
例えば、ポテトサラダやマカロニサラダ、おにぎりに混ぜ込むと、
でんぷんが分解されてしまい、時間の経過とともに水っぽくなりますので、
塩麹はできるかぎり加熱をして使うといいでしょう。
チャーハンやじゃがいもを使った炒めものなど、加熱料理の際には酵素の働きが失活するので、その効果は減ります。
塩麹を家庭で作るなら衛生面に徹底的な配慮を
塩麹は、自宅で作ることもできます。
この場合は、作る段階から出来上がり後の保管まで、衛生管理が必要になります。
別の菌などを増殖させないように、必ずすべての容器や食具などを消毒をして作りましょう
市販の塩麹は、賞味期限や保存方法はしっかりと守る
近年では市販の塩麹の種類も多く、比較的手に入りやすい調味料になりました。
市販の調味料は安全に使うことができるのでオススメです。
勘違いされがちなのは、賞味期限です。
記載されている賞味期限は、未開封の状態での期限が表示されています。
開封したあとはパッケージにある事項にしたがって蓋をし、冷蔵庫保管で早めに消費しましょう。
常温で保存すると発酵が進みすぎてアルコールを生成してしまったり、塩分濃度によっては腐敗していまうかもしれません。
管理栄養士
パッケージにしたがって保存し、早めに使い切りましょう。
そのためには塩麹は、少量ずつ買うのもオススメです。
塩麹(塩こうじ)はいつから食べられる?
塩麹は、乳幼児期にいつからでも食べることができますが、離乳初期には特に味付けの必要はありませんし、塩分はなるべく離乳食期には控えたいのは、あげないほうがいいでしょう。
離乳初期の味付け
例えば、大人のとりわけで少し塩麹がついているかもしれないと思ったら、塩分が気になるので、軽く洗い流したり茹でこぼすことで食べることができます。
塩麹の味付けの目安
実際に料理の時にどのくらい塩麹を使ったらいいの?と悩みますよね。
漬け込む場合:食材の10%程度
塩麹を料理に使う時は、食材重量に対して約10%使用することが多いようです。
例えば、肉100gに対し10gの塩麹を使って漬け込むとやわらかく仕上がり、味付けもほどよく仕上がります。
実際に焼くときには、表面が焦げやすくなってしまうので、軽くふきとってから焼くと、焦げ付きにくく、また味もほどよくなります。
もしくは焼くときに水を加えて少し一緒に野菜なども炒めると、1つの味付けで野菜もおいしく食べられるのでお勧めです。
乳幼児の味付けならで1食1‐2g程度?
乳児期はなるべく、減塩にしたいものです。
先ほど、漬け込むときに、肉100gに塩麹10gといいましたが、同様に肉10gに対して塩麹1gと考えておくといいでしょう。
乳幼児であれば漬け込まず、表面に1g程度が入るくらいと考えておくといいでしょう。
野菜などもこの1g程度で一緒に調理できるとより良いですね。
管理栄養士
塩麹などの調味料はもちろん多くないように気を付ける必要はありますが、
普段から食べるうどんやパンなども塩分を含みますので、このように、普段何気なく食べる食品もあわせて気を付けましょう。
6-11ヶ月の食塩目安量は、1日で1.5gになります5)。1食で0.5gくらいなのですが、あわせる他の食材やレシピによってもとても大きくわかります。
他の味付けもありえることから1食1-2g(食塩相当量0.1‐0.2g)にとどめておくといいですね。
幼児食に移行しても、いきなり大人と同じ味付けにならないように気を付け、
だいたい1回で1g程度であれば、塩分0.1gであると覚えておくといいかもしれませんね。
子どもに塩麹をあげるときは、食べてみて「少し薄味」程度の量を
実際に塩分量を細かく決めすぎると、全体的の味のバランスなどに目がいかなくなりがちなので、
あまり細かいことを考えすぎず、「濃すぎないかな?」程度に考えてみて
大人がおいしいと思う味より少し薄味程度を心がけるといいでしょう。
【関連記事】子どもにもとりわけ!スーパー「ライフ」で買える市販品
塩麹をつかったおすすめレシピ「塩麹チキン」
鶏肉に塩麹を塗って漬け込み、オーブンで焼くだけの簡単レシピ。
鶏肉が柔らかくジューシーに仕上がるので、お子さんへのとりわけもできますよ。
塩麹チキン
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材料
- 鶏もも肉 1枚(250g)
- 塩麹 大さじ1(20g)
- 玉ねぎ 1/2個
作り方
- 鶏もも肉にフォークで穴をあける。玉ねぎは薄くスライスしておく。
- 塩麹を鶏肉に塗りこみ、ラップをして冷蔵庫で30分~1時間漬け込む。
- オーブンを200℃に予熱する。鶏肉の余分な塩麹をふき取り、玉ねぎとともにオーブンシートにのせて、オーブンで20分~25分焼く。
*子どもへの取り分けは、鶏肉を手で食べやすくほぐしてください。食べにくい場合はごはんにまぜたりすると食べやすくなります。
よくあるご質問
答え)アレルギーは乳幼児期に過度な心配はいりません。
どんな食べ物にも、アレルギーはありえますので、ごく稀でありえます。成人にて麹菌が原因でアレルギーが発症した非常に稀な報告があります2)。
しかし、ほとんど心配はいりません。
一般的に米を使っているので、米アレルギーの場合は注意が必要ですが、
激しい大豆アレルギーなどで味噌やしょうゆが使えない場合には代替品にもなりえます。
乳幼児に特に多いアレルギーではないので、心配する必要はありません。
アレルギーの可能性はゼロではありませんが、それよりもとにかく塩分を気にして使用量が多くならないようにしましょう。
答え)乳幼児には加熱して使いましょう。
塩麹は、酵素などは食品には効果があるものの、生で摂取することでヒトの身体にはどのような効果があるのかはわかりませんでした。
オリゴ糖などの力で腸内環境が変わることも想定できますが、塩麹は塩分も多く含むため、その効果を得るまでに塩分をどれだけ摂取するのかを考えると、答えは難しいものです。
生で摂取する健康効果を考えるよりも、塩麹の過発酵によるアルコール精製や、食中毒リスクなども考え、
乳幼児には加熱してあげると安心なのではないでしょうか。
管理栄養士
しっかり加熱することで、調味料にアルコールが入っていても、しっかり加熱すればアルコールを飛ばすことができるでしょう
まとめ
塩麴を赤ちゃんにあげてはいけない理由はありませんでした。しかしながら、積極的にあげる必要もなさそうです。
以上のことから、塩麴を赤ちゃんにあげるときは、以下のことに注意しましょう。
・離乳期は、素材の味を活かした薄味を心がけましょう。これを基本に、塩麴に限らず、調味料を使う際は少量にしましょう。
素材単体でも塩分を含んでいることを忘れずに。
・乳児の消化管は未熟です。衛生面の観点から、調理はしっかり加熱することを意識しましょう。
・塩麹を使うなら市販品がオススメですが、万一ご家庭で作る場合は、他の菌などを増殖させないように、しっかり衛生的に作るようにしましょう。
参考文献
1) 農林水産省, 「発酵」の不思議「発酵」の不思議,aff(あふ)2022年11月号(2024年3月6日閲覧)
2) 一島 英治,国際的に認知される日本の国菌,化学と生物 53(4):261-264 ,2015年3月
3)鄭屹峰ら,麹発酵により生じたペプチドおよびアミノ酸代謝物の機能,日本醸造協会誌 117(1):p.6-17,2022年
4)文部科学省,日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(2024年3月6日閲覧)
5)厚生労働省,日本人の食事摂取基準(2020年版)(2024年3月6日閲覧)
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- 2024年3月23日コラム塩麹はいつから食べられる? 乳幼児にもOK?管理栄養士が解説