魚を使った離乳食の進め方を管理栄養士が徹底ガイド!

離乳食で、はじめて魚を食べさせたいと思う時は、アレルギーは大丈夫?などなどなかなか気になりますよね。
考えすぎる必要はないのですが、離乳初期から完了期にかけて、魚の種類や食材の形態をちょっとだけ考えられるといいですね。
ここでは、魚の栄養価と、離乳食での魚の進め方についてご紹介します。

(*授乳・離乳の支援ガイドでは「離乳初期」などと読みますが、本記事ではわかりやすいように「離乳食 初期」というように表記いたします)

魚の栄養

魚は、赤ちゃんの成長に必要なたんぱく質を豊富に含んでいます。

たんぱく質

もちろん、魚には、たんぱく質だけではなく、脂質や糖質も含みますが、
いわゆる「穀類・野菜類・たんぱく質類」とする場合はたんぱく質類に該当します。

管理栄養士

管理栄養士

おもに、たんぱく質の供給源になる という意味です。魚は、脂質も糖質ももちろん含みます。
他にもたんぱく質源はありますので、いろいろなものから摂りましょうね

たんぱく質は、筋肉の構築や体の発育に欠かせない栄養素ですので、離乳食においても重要な役割を果たします。
魚以外にも、肉や卵、大豆、乳製品など、たんぱく質を含む食材は多くあります。どれがいい、どれが悪いということではなく、それぞれに特徴はあります。例えば、鉄を多く含むもの、カルシウムを多く含むもの…などがありますので、ポイントは「たんぱく質はこれ!」一種類に限らずさまざまな種類を摂っていくということです。

赤身魚に含まれる「鉄」

まぐろやかつおは鉄分(鉄)が豊富な食品として知られていますよね。いわゆる魚の血の色をしている部分には鉄分が多いのです。

とくに赤身には鉄分が多く含まれています。これは、まぐろが広い範囲を泳ぎ回る回遊魚であり、
持久力を支えるミオグロビンが多く含まれているためです。

まぐろやかつおなどの赤身魚は、鉄分補給に優れた食材として、特に鉄分が不足しがちな離乳食期に、おすすめの食材の1つです。

(注:学術的には鉄分ではなく「鉄」という名称が正確ですが、より広く皆様に読みやすくするために「鉄分」と表記しています)

しらすに含まれる「カルシウム」

しらす 離乳食 白身魚 いつから

しらすは、カルシウムが豊富に含まれています。
この理由は、しらすは小魚の一種であり、骨も一緒に丸ごと食べることができるためです。

半乾燥しらすには、100gあたり520mgのカルシウムが含まれており、
骨の健康維持に役立ちますので、離乳食期におすすめの食材の1つです2)

魚の種類と特徴

魚には、白身魚、赤身魚、青魚といった種類があり、
それぞれに栄養的な特徴があります。

白身魚の特徴

白身魚は、鯛やひらめのように動きが少ない魚に多く見られ、
加熱すると身がほろほろと崩れやすいのが特徴です。

離乳食は、白身魚から始めるといわれている理由は、
加熱すると身がくずれやすく柔らかいためです。

鮭は赤みのある色をしていますが、これはエサによる色で白身魚の仲間です1)

赤身魚(青魚)の特徴

赤身魚はマグロやかつおなど回遊魚に多く、鉄を多く含みますが、焼くと身が引き締まってしまい硬くなるのが特徴です。
このため、赤身魚を離乳食初期頃にあげるときには、ブレンダーなどですり身にするといいでしょう。

赤身魚にはヒスチジンというアミノ酸が多く含まれています。
このヒスチジンはヒスタミン産生菌が産生する酵素の働きでヒスタミンになります。
ヒスタミン食中毒は、蕁麻疹、頭痛、嘔吐、下痢など食物アレルギーと似た作用を示します。
これはアレルギー体質によらず、だれにでも起こりうる症状です4)5)

ヒスタミンは加熱しても分解されません。
そのためヒスタミン食中毒を防止するには新鮮なものを適切に冷蔵庫に保管し早めに食べるということが大事です4)5)

青魚の特徴

青魚は赤身魚に分類されるもののうち、アジやイワシなど背が青い魚の総称です。
DHAやEPAなどの脂質を含みますので積極的に食べていきたい栄養素ではありますが、
小骨が多く、魚独特のにおいもあるので臭みけしが必要、鮮度が悪くなるのが早いなどのデメリットもあります。

離乳食においてはやわらかい小骨であっても赤ちゃんが食べてしまうと思わぬ怪我につながることからも、
しっかりとした下処理が必要になるといえます。

また、青魚は赤身魚の一種のため、ヒスタミンと呼ばれるかゆみを生じる成分を含むことがあります。

例えば「サバにあたった」という事例のようなものがそれに該当します。

サバのほとんどはアレルギーではなく、古くなったサバがヒスタミンを生じてヒスタミン中毒になったことが多いかと考えられます。いずれにしても赤ちゃんがかゆがったりすることはあまり望ましくはないので、離乳食の食材はなるべく新鮮なものをあげましょう といわれています。

管理栄養士

管理栄養士

離乳食は新鮮な食材がいいと言われている理由は、この青魚のことなのですね。あとは腐らないうちに食べましょうという意味ですね

離乳食で魚をあげるタイミング

離乳食では、赤ちゃんの成長段階に合わせて魚を取り入れることが推奨されます。
初期はなめらかにすりつぶした状態(ヨーグルト状)、
中期は舌でつぶせる硬さ(豆腐状)、
後期は歯茎でつぶせる硬さ(1㎝厚さ程度の完熟バナナ状)、
完了期は歯茎で噛める硬さ(肉団子くらいの硬さ)の食材を目安にします。

さて、ここから考えると、魚はどう考えたらいいのでしょうか。

硬さの点から離乳食初期は白身魚からはじめると安心

白身魚は、身が柔らかいので離乳食初期から取り入れやすいので、
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」では白身魚からはじめ、赤身魚や青魚とすると記載があります。

かれい 離乳食

この写真は、骨なしかれいのソテーです。
離乳完了期頃なら、このまま手づかみでパクっといけますし、離乳中期・後期頃なら、身をほぐしてあげたら食べることができますね。

骨なしかれいのソテー

分量(作りやすい量)

・カレイ切り身 50g
・小麦粉                大さじ1
・無塩バター        小さじ1

作り方

①カレイを2cmくらいの大きさに切る
②小麦粉をまぶす
③フライパンにバターを入れ焦げないように温め、カレイを両面焼く
⭐︎1回では食べ切らない量なので、1回分にわけて冷凍しておくと楽です

このように、特に月齢や離乳期によってなにか魚が決まっているわけではないので、
大人の食事にあわせて、食事の形態(大きさなど)をかえてみてくださいね。

ただし、鮭は、アレルギー表示推奨項目でもあることから、
他の魚を先にあげておいたほうが安心できるのではないでしょうか。

赤身魚を離乳食初期にあげてもいい?

結果からいうと、赤身魚を離乳初期にあげても構いません。

まぐろやかつおなどの赤身魚を離乳初期(5-6ヶ月頃)にあげてはダメという理由はありません。
赤身魚や青魚を初期に食べてはいけないということはありませんが、
魚の独特なにおいが気になったり、パサついたりすることもあるので、
作り手も少し慣れるためにも1回でもいいので
白身魚を食べさせておいてから、赤ちゃんにあげてみるといいでしょう。

【関連記事】まぐろの刺身で鉄補給!

魚のアレルギーは大丈夫?

魚のアレルギーのもと(アレルゲン)は、とても多くの種類があり、1つの魚だけでかかる場合もありますし、複数種類同時にかかる場合もあります。

これは、とても難しいのですが小児期にはそれほど多いアレルギーではありません。

乳児期におこりやすいアレルゲンは「鶏卵・牛乳・小麦」であり、
これがこの年齢全体のアレルギー要因の96%以上を占めます6)

つまり、魚のアレルギーがおきる可能性はゼロではありませんが、極めて低いといえます。

また、魚のあげる順番を変えてもアレルギーの予防になるような報告は現在のところありません7)

ただし、鮭はアレルギーの表示推奨項目の1つですので、他の魚を最初にあげてからのほうが気持ちとしては落ち着くかもしれませんね。

魚を離乳食であげるときの注意点

魚は、白身魚でも、赤身魚でも、硬さがしっかりして、なおかつ鮮度が悪くなければ
いつでも赤ちゃんの食事(離乳食)として摂り入れることができます。

しかしながら、最初から硬くてパサつくものをあげるよりも、やわらかい白身魚からあげておくといいですね。

ヒスタミンを防ぐために鮮度管理を


魚を離乳食に取り入れる際は、ヒスタミンなどの防止のためにも新鮮なものを選び、食中毒を防ぐことが重要です。

【関連記事】ヒスタミン中毒

鮮度が良くても離乳食時期には加熱を

ヒスタミンや食中毒が心配なので早く食べるのが安心ということなら、
早く食べれば生でもいいのかというと、そうではありません。

アニサキスなどは新鮮であっても寄生虫や食中毒の危険性はぬぐえませんので、
離乳食のうちは刺身は避けて加熱してあげてくださいね。

【関連記事】お刺身はいつから食べられる?

たんぱく質だけにならないように

魚だけ、たんぱく質だけ・・・などに偏ることなく、穀類や野菜類も必要です。
バランスよく様々な食材を組み合わせて、
なんとなく1つの食材に偏らないような工夫ができるといいですね。

まとめ

一番大事なことは何を何か月からあげられるではなく、赤ちゃんの成長に合わせた形態にすることです。

次に新鮮なものを使用し食中毒を防止しましょう。
最後に、魚だけに偏らずバランスよく色々な食材を組み合わせることで
食事の楽しさを知っていってもらえると嬉しいですね。

気楽に大人の食事のついでで意外と大丈夫かもしれません。

例えば、旬のかつおがおいしそうだなと思ったら、
大人はかつおのたたき丼にして、
赤ちゃんにはしっかり加熱したかつおのペーストやかつおそぼろなど、
今ある食材をしっかり加熱して食べやすい硬さにしてあげてくださいね。

【関連記事】しらすの塩抜きは必要?

参考文献

1)科学的に正しい食品の大百科〔改訂第2版〕 発行人:高森康雄 編集人:木村直之 発行所:株式会社ニュートンプレス

2)文部科学省,日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(2024年6月3日閲覧)

)厚生労働省 授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)(2024年6月3日閲覧資料リンク先:子ども家庭庁)

)東京都福祉保健局「ヒスタミン」(2024年6月3日閲覧)

5)魚食普及センター「ヒスタミン 食中毒を考える」(2024年6月3日閲覧)

6)令和3年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査(2024年6月3日閲覧)

7)食物アレルギー研究会 「食物アレルギーの診療の手引き2023」(2024年6月3日閲覧)

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小川夏子
小川夏子
(東京都)管理栄養士・母子栄養指導士
大学卒業後、病院栄養士として勤務。幅広い病態、世代の栄養ケア・マネジメントを行う。
病院勤務を経験する中で予防の大切さを身に染みて感じ特定保健指導業務に携わる。
自身の出産を機に母子栄養指導士を取得、フリーに転向。
様々なライフステージにおける、食事を食べることの大切さ、楽しさを伝えていきたいです。