ピスタチオ等ナッツ類の食物アレルギー表示に関する変更

食物アレルギー表示の見直しのための会議が行われ、今後ピスタチオやカシューナッツ等、ナッツ類のアレルギーが増えていることから、これらの表示が変わる動きがありますので、解説します。
2025年1月25日、消費者庁により「第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」が開催されました1)
これは、食物アレルギーの有識者が集まり会議をおこなうものです。
ここで、ピスタチオが表示推奨(特定原材料に準じるもの)となり、
カシューナッツが表示義務(特定原材料)とすることが望ましいとされましたので、
その背景について解説します。

ナッツアレルギーはこの数年で激増

消費者庁による、「令和6年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書」2)によると、2024年調査ではナッツ類アレルギーは24.5%となっています(下図)。

2024年(令和6年度) 即時型食物アレルギー原因物質

ナッツ類(木の実類)は2018年は8.2%にすぎなかったところ、2024年は24.5%となっています。
ナッツ類のアレルギー原因は、比率でみると約3倍にも跳ね上がっています3)
詳しくは母子栄養協会のくるみの記事を御覧ください。

【関連記事】くるみアレルギーが2位に!(令和6年度食物アレルギー調査結果)

ナッツアレルギーは1つではない

ナッツアレルギーは、1種類ではなく、それぞれによってアレルギーのもととなる物質が違います。

よって、くるみのアレルギーだからといって
カシューナッツやピスタチオにもアレルギー症状がでるというわけではありません。
基本的には別のアレルゲンとなります。

しかしながら、海外では「ナッツ類」というアレルギー表示でまとめている国もあります。今まで日本ではナッツ類アレルギーが多くなかったため、個別が望ましいかとしていましたが、今後どうなるかは注目のポイントかもしれません。

カシューナッツが表示義務にとされる理由

現在、表示推奨項目(特定原材料に準じるもの)であるカシューナッツが
なぜ義務がふさわしいと結論付けられたのでしょうか。

理由は、カシューナッツアレルギーの症例数の多さと、ショック症例の多さの2つです。

カシューナッツアレルギーは現在7位

令和6年度 くるみ アレルギー 調査 消費者庁 2位

令和6年度食物アレルギー調査2)によると、
即時型アレルギーの原因物質は、
1位 鶏卵、
2位クルミ、
3位牛乳 、
4位小麦 、
5位ピーナッツ、
6位いくら
などに続いて、カシューナッツは7位となっています。

エビやキウイ、大豆などよりも患者数が多いことになります。

カシューナッツのアレルギーはショック症例数で5位

カシューナッツが表示義務となる理由には、ショック症状の症例数が多いことがあげられます。

食物アレルギー ショック症状 症例数 グラフ カシューナッツ 理由

令和6年度食物アレルギーの調査によると、
カシューナッツはショック症状を起こした原因食品のランキングで5位となっています2)
現在特定原材料とされている、
エビやピーナッツよりも多い結果
となりました。

これらのことにより、カシューナッツは表示義務表記になりそうな動きになったということです4)

【関連記事】くるみアレルギーが2位に!(令和6年度食物アレルギー調査結果)

ナッツアレルギー症例数と食品アレルギー表示

クルミは食品アレルギー表示が義務になり、マカダミアナッツ・アーモンドは表示推奨になっています。

木の実類のアレルギーについて 多いもの カシューナッツ、マカダミアナッツ、ピスタチオ、アーモンド

今回のアドバイザー会議で、変更が議論されたのは、

・カシューナッツを表示推奨から表示義務とする(特定原材料とする)

・ピスタチオは表示推奨項目とする(特定原材料に準じるものとする)

ことが望ましいのではないかと結論付けられました。

アレルギー表示推奨品目の基準

消費者庁では、アレルギー表示対象品目として追加する際の考慮を次のように定めています。

アレルギー表示で「特定原材料に準ずるもの」の対象の考え方

消費者庁では、特定原材料に準ずるものの対象を、下記のように定めています。

以下のいずれかに該当する品目を、流通実態等を加味しながら追加対象品目の候補とする。
・直近2回の全国実態調査の結果において、即時型症例数で上位20品目に入っているもの。
・直近2回の全国実態調査の結果において、ショック症例数で上位10品目に入っており、重篤度等の観点から別途検討が必要なもの。

第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議資料P.14より4)
アレルギー表示は時代にあわせて、食品の流通状態や症例の数、ショック症例の数などで決まります。
アレルギー表示は時代にあわせて、食品の流通状態や症例の数、ショック症例の数などで決まります。
管理栄養士

管理栄養士

症例数が2回連続で上位20品目になったピスタチオ

下図は、過去3回の調査の結果です。
アレルギー表示推奨品目は基本的には上記に示した通り、直近2回の調査結果で決めます。

食物アレルギー 表示 患者数 症例数 順位 表示推奨以外

現時点でアレルギー表示品目に含まれていないもので、
直近2回の調査が20位以内に入ったものは、ピスタチオのみとなりましたので
このことから表示推奨(特定原材料に準じるもの)が望ましい
という結論になりました。

この図をみると、次にペカンナッツやヘーゼルナッツも
次の調査の3年後には該当する可能性もありそうですね。(あくまで推測であり、国民の摂取状況や流通にも左右はされます)
この図をみると、次にペカンナッツやヘーゼルナッツも
次の調査の3年後には該当する可能性もありそうですね。(あくまで推測であり、国民の摂取状況や流通にも左右はされます)
管理栄養士

管理栄養士

ピスタチオが含まれている食品

「ピスタチオを使用した加工食品に関する実態調査」によると、
日本においてピスタチオを使った商品の多くは菓子類であることがわかり4)
商品の種類は、38.9%が「菓子」、次いで、21.4%が「そうざい」でした。

たしかに、アイスクリームや、ピスタチペースト入りのチョコやケーキのようなものを
よく見かける気もします。

まとめ:食物アレルギー表示の移行は決定ではない

カシューナッツについては、「公定検査法の確立の目途が立った時点で、表示義務に移行するのはどうか?」とアドバイザー会議で結論付けられました4)
この移行めどは令和7年度中を目指すとしていますがまだ未定であり、
そこからさらに経過措置期間もあります。


ピスタチオについては、「上記のカシューナッツの変更のタイミングで、
表示推奨に追加するのはどうか」と結論付けられました。
今すぐにメーカーや給食など食品提供者が動くことはないかもしれませんが、
そのようなものを扱うことは今後どのようにしていったらよいか
等を検討する必要はあるでしょう。

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参考資料

1)消費者庁,食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議(2025年01月21日) (2025年1月21日閲覧)

2)消費者庁,令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書,2024年9月,(2024年11月12日閲覧)

3)母子栄養協会,くるみアレルギーの記事より(各年度の消費者庁アレルギー調査より作図)

4)第7回食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議 会議資料1~7 (2025年1月21日閲覧)

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川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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