【詳細版】卵はいつから?離乳食の進め方

卵のアレルギーが心配で、なかなか卵を始められない方も多いことでしょう。
「卵を早くから微量はじめるといわれても、ずっと微量になってしまう。」という相談が相次いでいます。まず、一般的な赤ちゃんと、皮膚炎のある赤ちゃんでは進め方は異なります。
以下の記事は、離乳食を指導したりする人向けであり、保護者向けではありません。
あらかじめご了承ください。
卵の進め方に関する研究「PETIT研究」
「卵アレルギーを予防するには、生後6ヶ月頃から少しずつあげるとよい」
と言われるもととなった、PETIT研究をみてみましょう。

本研究は国立成育医療研究センターの研究グループが2017年に発表し、Lancetに掲載されました1)
PETIT研究からわかること
・試験対象はアトピー性皮膚炎 患児
一般的な赤ちゃんを対象にしたものではありません。
この試験は、生後6ヶ月未満でかゆみのある湿疹(アトピー性皮膚炎)のある赤ちゃんが対象です。
プロアクティブ治療*で寛解することができた児を対象としている試験です1)。
*プロアクティブ治療…ステロイド外用薬と保湿剤でスキンケアを行うこと
・高リスク児の場合は、卵の開始は遅らせない
つまり、この研究では、安易に誰でも「鶏卵は早くから始めるべき」としているわけではありません。
本研究でわかったことは、アトピー性皮膚炎患児は、卵の開始を遅らせても予防にはならない。ということです。
・本研究での卵の摂取量は約0.2g
本試験は、加熱全卵0.2g相当の研究用加熱全卵を、毎日摂取したというものです。
しかしながら、実際に毎日0.2gずつ食べさせるというのは不可能に近いといえます。あくまでも実験としては0.2gということは知っておくといいでしょう。
卵アレルゲンの加熱変化
卵アレルギーの原因は、さまざまあり、卵黄によるもの、卵白はアルブミン、オボムコイドがあります。
卵白アルブミンは、加熱によってそのチカラが変わってきます。
よって、長時間、高熱で加熱したもののほうが抗原が弱まるため、
20分しっかり茹でた固ゆで卵のほうが、良いと考えられます。
生卵と比較したアレルギー抗原残存率は下記のとおりです。

この表にある、「オボムコイド」も卵白に含まれているアレルゲンの1つです。
卵アレルギーといっても、アルブミンに反応しているのか
オボムコイドに反応しているのかはわかりません。
しかし、いずれにしても固ゆで卵にすることで、アレルギーの抗原量を減らせます。
【関連記事】市販の離乳食(ベビーフード)で初めての食材を試すのはアリ?ナシ?
Q.卵ボーロは食べてもいいですか?
A.卵ボーロはがでやすいこともあり、初めての卵としてはおすすめできません。
実際、赤ちゃんに卵を毎日食べさせるとなると、難しいものです。
このため、「卵ボーロでアレルギーチェックをしてもいい?」と聞かれることがあります。
しかしながら、注意が必要です。

卵黄のみのボーロの場合
ボウロには、卵黄のみのボウロがあります。
卵黄のみのボウロは下記のようなものがあります。
- 森永製菓 マンナボーロ
- 大阪前田製菓 卵黄かぼちゃボーロ
- 岩本製菓「国産卵黄かぼちゃボーロ」
岩本製菓のホームページでは、ボーロのアレルゲンについて下記のように記載があります5)。
商品名 | サイズ・量 | 生卵換算 |
国産卵黄かぼちゃボーロ | 1 粒(約 0.47g) | 卵黄 18.9mg(微量の卵白含む) |
小1袋(11g) | 卵黄 約 0.44g(微量の卵白含む) | |
タマゴボーロ | 1 粒(約 0.47g) | 全卵 約 0.0235g(23.5mg) 卵白:約 15.7mg、卵黄:約 7.8mg |
小1袋(12 g) | 全卵 約 0.6g 卵白:約 0.4g、卵黄:約 0.2g |
卵黄のみといっても、少しの卵白は含んでいますので、少量のみのトライアルにはいいかもしれません。
全卵のボーロの場合
卵の量だけみると、卵の少量摂取にはいいような気がします。しかし卵ボーロの場合は、アルブミンは残りやすい傾向があります6)。

伊藤節子先生の文献6)によると、加熱時間が長そうな卵ボーロでも、卵白アルブミンは多く残存しているとのことです。

管理栄養士

管理栄養士
卵は6ヶ月から食べられる
最近とても増えているのが、「卵を少しずつはじめているが、全然増えない。どのように増やしたらいいのか」ということです。
アトピー性皮膚炎があり、卵アレルギーの疑いがある児は、
前述のPETIT研究を参考に、
医師の診断を受けて皮膚をコントロールしながらすすめてください。
それ以外の人は、授乳・離乳の支援ガイドをもとに離乳食をすすめましょう。

管理栄養士

卵の進め方(離乳食)
*以下は母子栄養協会が推奨するものであり、小児科医が推奨するものではありません。湿疹がある人は必ず、小児科医(できたらアレルギー専門医)に相談しましょう。
また、皮膚疾患やアレルギーを疑うような疾患がない児を対象とした、
一般的な卵のすすめ方であり、ストレス少なく、家庭で実践しやすい方法です。
最初にあげることがドキドキしてしまうお気持ちはとてもよくわかりますが、
固茹で卵でアレルギーになる事例はそれほど多くはありません。
むしろ、卵に慣れたと思って生に近い卵料理をあげて発症することに注意をしたいものです。
離乳食期の卵の進め方(月齢別)
月齢 | 使う部位 | 調理法 | 与える量 | 注意点 |
---|---|---|---|---|
6か月ごろ | 卵黄 | かたゆで・つぶす | ごく少量~小さじ1程度 | 最初の頃は午前中にあげるといい |
7か月ごろ | 卵黄+少量の白身 | かたゆで・つぶす | 小さじ1程度 | 変化に注意しながらあげるといい |
8〜9か月 | 全卵(卵黄+白身) | 焼く/ゆでる等 しっかり加熱 | 20g程度 | 完全に加熱をしてあげるといい |
卵を避け続けても予防にはなりませんので、鉄が含まれる卵黄から始められるといいでしょう。
基本的には、固茹で卵を少量からあげていき、卵黄少量→1個分、卵白も少しずつ混ぜていくという方法がいいでしょう。
ただ、これですと、少しずつ過ぎてなかなか進まない、
また卵焼きなどのレシピになかなか進めないという点があります。
卵のアレルゲンは少し多いものになりますが、下記のような進め方はいかがでしょうか。
以下に示すものは、
・フリージングすること
・普段のメニューに取り入れやすいこと
を考えた進め方です。
1.6ヶ月頃からしっかり加熱したゆで卵の卵黄を少しからはじめます
大丈夫であれば、加熱卵黄はそれほど慎重になる必要はありませんが、卵黄のアレルギー症状は湿疹よりも下痢や嘔吐ででることがあるので気を付けながら進行します。
茹でたあとはなるべく早く卵黄のみとりわけます。
(卵白アルブミンは水溶性なので、茹でてしばらく時間が経つと、卵白から卵黄に移行します)
2.7ヶ月頃~ 固ゆで卵の卵白を少しずつ足していきます。
とくに卵黄が1個食べられなくても構いません。量をそれほど食べられないこともあるので、
卵黄を数回食べられたら、卵白をほんの少しずつ足していきましょう。
抗原の量だけをみると、20分固ゆで卵の卵白がいいということになっていきますが、リスクが高い児ではない場合、このステップを踏んでいくと時間がかかりすぎます。また、卵白だけみじん切りして1gというのは、とても大変です。
(ゆで卵の卵白は冷凍すると食感が変わってしまいます)
3.全卵の薄焼き卵にしていきます

卵はアミノ酸スコアも高い、優秀なタンパク源ですので、食べられるのであれば、食べさせたい食品です。
アレルギーの抗原残存が少ないのは、圧倒的に固ゆで卵です。しかしながら、問題なく食べられる場合には、ずっと固ゆで卵にしている必要はありません。
全卵を薄焼き卵などして、少しずつ小分けに冷凍しながら食べる量を増やしていくとすすめやすいかもしれません。
パサつきがきになるときは、おかゆに混ぜてあげるといいでしょう。
離乳食の卵の進め方についてよくあるご質問
-
卵はいつから離乳食で始められますか?
厚生労働省の支援ガイドでは、生後5〜6か月ごろから始められるとされています。ただし、初めての場合は医師に相談するのも安心です。
-
卵は白身と黄身、どちらから始めたらいいですか?
一般的にはアレルギーリスクの低い黄身から始め、問題がなければ白身を少量ずつ加えます。かたゆでにして少しずつ始めるといいでしょう。また、卵の白身のスタートは遅すぎないようにしましょう。
-
卵はどれくらい加熱すれば安全ですか?
完全に火を通すことが大切です。半熟や生の状態では与えず、「かたゆで」や「しっかり焼いた」状態で使いましょう。
-
アレルギーが心配な場合、どうしたらいいですか?
卵は量を少なく、1日1回以下で試しましょう。毎日続ける必要はありません。不安がある場合は、医師や専門家に相談してください。
-
卵を使った簡単な離乳食メニューはありますか?
かたゆで卵の黄身をつぶしておかゆに混ぜたり、ゆで卵を細かく刻んでさつまいもと和えるなど、とろみのあるものとあわせるといいでしょう。
まとめ
アレルギーがご心配な気持ちはとてもよくわかります。卵がなかなか進められないかもしれません。
しかし、赤ちゃんに必要なタンパク質を、いろいろな種類で補っていきましょう。
体調がよさそうであれば、まずは少しから試してみましょう。
卵は、あげる時期を遅らせてもアレルギー発症予防にはなりません。
タンパク質や鉄分をしっかりとるためにも、卵は必要以上に怖がらずに食べていきましょう。
(実際の食べさせ方や進め方については、「たまごの進め方」の記事がオススメです。)
参考文献
食物アレルギー児の食事と治療用レシピ 診断と治療社2014
参考文献
- Natsume, O., Kabashima, K., Nakazato, J., et al. (2017). Two-step egg introduction for prevention of egg allergy in high-risk infants with eczema (PETIT): a randomised, double-blind, placebo-controlled trial. The Lancet, 389(10066), 276-286. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27939035/
- 日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会,(2017年)鶏卵アレルギー発症予防に関する提言,日本小児アレルギー学会(閲覧日:2025年5月8日)
- 日本小児アレルギー学会(2016). 食物アレルギー診療ガイドライン2016.
- 堀向健太・川野裕美(2009). 離乳食による即時型アレルギー反応についての考察. アレルギー, 58(11), 1569–1576. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/58/11/58_KJ00005878719/_pdf
- 岩本製菓株式会社. 卵に関するよくあるご質問(FAQ). https://www.iwamotoseika.co.jp/faq.html (閲覧日:2025年5月8日)
- 伊藤節子,抗原量に基づいて「食べること」を目指す 食物アレルギー児のための食事と治療用レシピ ,診断と治療社(2012)
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
記事
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