クッキング保育の注意点|原材料チェックと検食の重要性

クッキング保育とは、保育所での調理型食育のことで、子どもの食への関心を高める方式です。

2025年12月、保育所のクッキング保育において食べ物ではないものを園児が食べてしまうニュースがありました3)

事故を振り返ると、本当に重要なのは準備段階にあることが多いといえます。

この記事では、
クッキング保育で本当に気をつけたいポイントを、
管理栄養士がお伝えします。

クッキング保育は給食と同じ扱いになる?

保育所において調理型の食育をおこないたい場合、
基本的には「園での食提供」となるので、
出来る限り給食と同じ扱いと考えて細心の注意を払います。

300食未満でも「HACCPの考え方」は必要

保育所の給食は、1回300食未満なので、
大量調理施設衛生管理マニュアルは対象外ではありませんか?
保育所の給食は、1回300食未満なので、
大量調理施設衛生管理マニュアルは対象外ではありませんか?
はい。たしかに保育所の食数は少ないですね。
しかし、食品衛生法に基づき、
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は、
規模にかかわらず求められているのです¹)。
はい。たしかに保育所の食数は少ないですね。
しかし、食品衛生法に基づき、
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理は、
規模にかかわらず求められているのです¹)。

食材の受け入れ、加熱、保存、提供までの流れを整理し、
「どこでリスクが生じやすいか」を意識して、
クッキング保育の安全につなげましょう!

検食で確認し、安全性を確認

給食施設では、提供前にいわゆる「検食」を行います。

検食は、
味を見るためのものではなく、
提供前に安全性を確認するための工程
です。

こども家庭庁が策定した
「児童福祉施設等における食事の提供ガイド(2025年)」 では、
食事の提供は施設長の管理責任のもとで行うこと
クッキング保育のように厨房以外で行う調理についても、
衛生面・安全面への十分な配慮が必要
であることが示されています2)

検食では、味だけでなく、

  • 十分に加熱されているか
  • 異物の混入がないか
  • 見た目やにおいに異常がないか

といった点を確認することが基本です¹)。

検食簿は「おいしい」「次はこういうものがいいな」などを書くものではなくて、安全に行われているか、異常がないかを確認するものであることを、施設長は理解をしておきたいですね。
検食簿は「おいしい」「次はこういうものがいいな」などを書くものではなくて、安全に行われているか、異常がないかを確認するものであることを、施設長は理解をしておきたいですね。

実は 一番大切なクッキング保育での事前チェック

2025年12月、クッキング保育で、
食用ではないチョコスプレーを誤って使用してしまった事例
が報道されました3)

この事例を振り返ると、
問題は調理工程ではなく、
調理前の原材料・製品確認不足にあったといえます。

原材料表示・アレルギー表示・賞味期限・保存法の確認を

クッキング保育のみならず、保育園給食でも自宅でも、市販品を使用することはありますよね。

そのような時には、下記のものをチェックしましょう。

  • 原材料表示(アレルゲン等も含む)
  • アレルギー表示
  • 保存方法(保存温度等条件に応じて保管する)
  • 期限(賞味期限・消費期限を確認する)

以上を確認しなければ、安全かどうかは判断できません

【関連記事】賞味期限、消費期限の考え方

保育所でもご自宅でも、なるべく原材料や保存方法・条件等はみる習慣をつけましょうね!
保育所でもご自宅でも、なるべく原材料や保存方法・条件等はみる習慣をつけましょうね!
クッキング保育 調理保育 食育実習 食育 注意

アレルギー児がいなくても原材料確認は必要

厚生労働省の
「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」 では、
アレルギー対応は、
特定の子どもだけの問題ではなく、施設全体で取り組む安全管理
として位置づけられています4)

そのため、
たとえ園内にアレルギー児がいない場合でも、下記には注意する必要です。

・家庭で食べたことがあるか分からない
・初めて口にする可能性がある
・行事をきっかけに新たなリスクが生じる

こうした点を考えると、
原材料表示を確認しないまま使用すること自体がリスクになります。

例えば、くるみは園の給食で出していないのに、クッキング保育で、突然くるみを使うなどが危険ということになりますね。
例えば、くるみは園の給食で出していないのに、クッキング保育で、突然くるみを使うなどが危険ということになりますね。

【関連記事】くるみのアレルギーが2位に!

アレルギーは「接触」や「吸入」でも起こりうる!

アレルギーは、
食べることだけでなく、
・触れる
・吸い込む

といった行為でも症状が出ることがあります4)

例えば、
乳製品を扱った容器や包装材を再利用して調理や工作に使ったりすることもありますが、
乳アレルギーのある子にとっては症状を引き起こす可能性があります。

クッキング保育では、
食材だけでなく、周辺環境や道具の管理も含めた配慮が必要です。

こども家庭庁の
「児童福祉施設等における食事の提供ガイド」では、
厨房以外での調理において、
衛生面・安全面への十分な配慮が必要であること、
職員全体での共有やチェックが重要であると示されています2)

感染症リスク(ノロウイルスなど)にも配慮を

冬季など、ノロウイルス等の感染症が流行しやすい時期は、
クッキング保育での感染リスクが高まることもあります。

実施時期や方法を含め、
「本当に今、行うべきか」を立ち止まって考えることも大切です。

クッキング保育(保育所での調理実習)は、単なるイベントとして考えるのは非常に危険です。

クッキング保育前に確認したいチェックポイント

口に入るのであれば、通常の給食の延長として考えましょう。

下記は一例になります。保育所にそって再度ご検討ください。

【提供前の安全確認】

  • 原材料確認(アレルゲン、賞味期限等)
  • かたさ形状確認(誤嚥の高い原材料が含まれていないか
  • 職員・園児の作業動線で混乱がなさそうか
  • 包丁、ハサミなど危険物の取扱について
  • 職員配置が十分であるか
  • 感染リスクがあるような体調悪い子がいないか

【職員の情報共有】

  • HACCPの考え方を踏まえた衛生管理を意識できているか
  • 提供前の安全確認(検食的な工程)を行える体制があるか
  • 何かあった時の連絡先(事故発生時、相談したいとき等)
クッキング保育 調理保育 安全性 食育 注意点

まとめ:安全への配慮は、食育の基本です!

事故を未然に防ぐためには、
提供前の安全確認(原材料表示の確認など)
職員間での情報共有といった
基本的な配慮の積み重ねがとても大切です。

クッキング保育は、
楽しい食育行事であると同時に、
安心・安全があってこそ成り立つ活動です。

食育は、無理にイベントをおこなうことではありません。

保育所以外でも同じくチョコスプレーを使ったキッズクッキングの事故もありました5 )
保育所だけではなく、食べるものは原材料チェックをする習慣をつけましょう。
保育所以外でも同じくチョコスプレーを使ったキッズクッキングの事故もありました5 )
保育所だけではなく、食べるものは原材料チェックをする習慣をつけましょう。

安全に楽しくクッキング保育ができるように、よく考えて企画していきましょうね。

【関連記事】第4次食育基本計画

【関連記事】保育園でのおもしろい食育

参考文献

  1. 厚生労働省.大量調理施設衛生管理マニュアル(2025年12月19日 閲覧)
  2. こども家庭庁..児童福祉施設等における食事の提供ガイド(2025年12月19日 閲覧)
  3. 朝日放送テレビ(ABCニュース).園児に食用でない「プラスチック製チョコ」食べさせる 京都の認定こども園 クリスマスケーキ作りで「フェイクチョコスプレー」使用(2025年12月19日 閲覧)
  4. 厚生労働省.保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2025年12月19日 閲覧)
  5. YBSニュース.ドーナツ作り体験で異物混入 ゴム製「フェイクチョコ」子ども向けイベントで 山梨(2025年12月20日 閲覧)

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
コピーしました

お問い合わせ

母子栄養協会のWebサイトをご覧いただきありがとうございます。
当協会の事業内容や資格講座についてのお問い合わせは下記のフォームより承ります。

※資料請求、最新情報が受け取れるメールマガジンへの登録もこちらのフォームで承ります お問い合わせフォーム