ボーンブロススープを離乳食で使う時の注意点と使い方
ボーンブロススープというのがSNSなどで話題になることのようで、ご質問がありました。ボーンブロススープの味はおいしいので、とても良いものです。
しかしながら、ボーンブロスはいわゆるだし汁であり、栄養がある等とは言えないと筆者は考えます。
離乳食にお使いになるときには注意が必要です。
ボーンブロススープは、離乳食や普通のごはんの料理のベースとして使えるといいですね。
その理由などについて、管理栄養士・母子栄養指導士が解説します。
ボーンブロススープとは
ボーンブロスとは、英語でbone broth と書き、骨(bone)のだし汁(broth)とという意味です。
すなわち、ボーンブロススープとは骨からとったスープです。
ボーンブロスの種類
つまり、ボーンブロスとは骨から煮だした出汁の総称ですので、
例えば、鶏の骨であれば、「鶏ガラスープ」、豚の骨であれば「豚骨スープ」、
鯛の骨であれば「鯛のあら汁」もしくは「鯛だし」となります。
- 鶏骨:鶏ガラスープ
- 牛骨:牛骨スープ、ダシダ
- 豚骨:とんこつスープ
- 魚の骨:あら汁
上記すべて、ボーンブロススープという名称に当てはめることができます。
つまり、鶏がらスープもとんこつスープもボーンブロスです。
例えば、日本古来からある和風だしは、bonito broth ( かつおだし) といいます。ブロスとは動物性のものからとった出汁に使われる言葉なので、日本古来からある和風だしも英語にすれば、ブロスの1つですね。
管理栄養士
日本古来からのボーンブロスは、あら汁ですね。おさかなのあら汁はとてもおいしいですよね。
ボーンブロススープの栄養
上記のとおり、ボーンブロスとは、骨を煮だしたスープの総称なので、栄養は、原材料によっても大きく変わるでしょう。
タンパク質
骨に含まれるタンパク質のうち、一部はスープとして煮だすときに出るものがあります。
熱をかけるのでさらに溶出しやすくなります。
ただし、水に溶けないタンパク質もありますので、すべてではありません。
タンパク質のうち、スープに溶け出るのは「コラーゲン」です。骨のコラーゲンは長時間煮だすと溶出されます。それがゼラチンです。
このコラーゲン量は、論文で実際に量を計測しているものがあります2)。
コラーゲン量(100g中) 2)
鶏がらスープの素(粉末)*2690mg
コンソメ顆粒* 80mg
だしの素粉末 * 300mg
鶏手羽の抽出液 30mg
かつおだし 60mg
しらす干し 1920mg
*粉末の場合、100㎖に対して1-2gほどしか使わないため、実際に計算するときは液体との違いに注意します。例えば鶏ガラの場合は1%程度の26mgなどに考えておくといいでしょう。
管理栄養士
ゼラチンというのはいわゆるゼリーの素ですね。 ゼリーのプルプルしたものは骨から溶出されたコラーゲンによるものということですね。
すべてのタンパク質が溶け出るのではなく、一部のものだけです。
尚、骨に含まれる栄養は、いわゆる食べるところではないため、日本食品成分表には計算されていません。
脂質
特に離乳食に油がダメということはありませんが、油の種類によっては、
たくさんとると下痢などの消化不良を起こすことはあります。
また、せっかくとりたいエネルギーを油でとってしまうのはもったいないので、
タンパク質や野菜類などとあわせてとることを忘れないようにしましょう。
さて、ボーンブロスについては、骨や肉をゆでていくと、脂が水玉や層のようになって浮き上がってくるのがわかるでしょう。
これは骨や肉に含まれている脂が水に溶出するためです。
しかし、これを長時間煮だしていくと、まるでなかったかのように脂の膜がみえなくなっていきます。
これはゼラチンが脂(油)を巻き込むような「乳化」という作用をするためです。
管理栄養士
例えば、豚骨スープなどのボーンブロススープでは、たくさんの油(脂)をゼラチンが抱き込んでいるので、白濁していますよね。
煮だしたら油がなくなる…のではなく、それはゼラチンが抱き込んでいるものになりますので、脂(油)をとっていることに違いはありません。赤ちゃんには骨を煮込んだものをたくさんあげすぎないようにしましょう。
なにかに偏って飲みすぎるようなことをしないようにしましょう。
あくまでも赤ちゃんは母乳またはミルクで栄養を摂り、なおかつ少しずつバランスのよい食事に親しんでいくようにしましょう。
水溶性ビタミンやミネラル
水溶性のビタミンや栄養素がどの程度溶け出しているかは、わかりません。
また骨に含まれる栄養もわかりませんのでなんとも回答は難しいです。
いわゆるカルシウムや鉄などはそれほど多く溶け出るとは考えにくいですが、
鉄を多くとりたいと思えば赤身や血の部分を使うといいのかもしれません。しかしながら血の臭みもあるので食べにくくなるかもしれませんね。
栄養を摂りたいと思ったら、そのものをとるほうが望ましいので肉や魚を食べたり、そのときに骨からとった出汁も使うといいですよね。
離乳食としてのボーンブロススープを使うには
離乳食にボーンブロススープを取り入れる際は、その旨味を活かしつつ、
バランスの良い食事を心がけることが重要です。
スープだけではなく、母乳またはミルクをとりつつ、食事は穀類・野菜類・タンパク質類をとるようにするといいですね。
以下のような方法で、ボーンブロスを使うのはいかがでしょう。
ボーンブロススープレシピ
一般的に牛の骨をつかったものが多いようですが、特に牛ではなくても鶏手羽など手に入りやすい骨で構いませんし、肉がついているもので構いません。伝統的なボーンブロスではないという考えもあるかもしれませんが、作りやすく、おいしいものをご紹介します。
材料
鶏の手羽元 10本程度
玉ねぎ1個
にんじん1本
その他セロリ等適量
作り方
①水適量(かぶるくらいの水)を鍋にいれ、弱火でじっくり煮て野菜がくたくたになるまで煮てスープを煮だします。
ボーンブロスおかゆ
上記のスープをつかって、おかゆを作るといいでしょう。
すでに炊きあがったごはんを、食べられる量とりわけて、
スープで煮ると、とても味の良いおかゆになります。
また、柔らくなったお肉や野菜も適宜加えてあげるといいですね。
ポタージュ風スープ
上記のスープの材料から骨をとり、肉と野菜をブレンダーつぶして、ポタージュのように濃厚なスープにします。
粉ミルクなどを溶かしてから足してもいいですね。
野菜の種類は? とりわける量は何グラム?と気になるかもしれませんが、
量はあくまでも目安ですので、赤ちゃんが食べられる量であれば構いません。
ボーンブロススープはあくまで「だし」
ボーンブロススープは、骨も使えるので食材を余すことなく使えて地球にやさしい食べ方といえます。
元来からあるあら汁や、鶏ガラスープと同じことです。
牛肉だからとくに体にいいということはありませんが、
牛肉でもおいしいので、どんなものでも、楽しんで作ってみるといいかもしれませんね。
ただし、そこに含まれる栄養は不明瞭なことが多いため、それだけで離乳食が完全とはいえません。
あくまでも赤ちゃんは母乳またはミルクに加えて、
穀類・野菜類・タンパク質類がなんとなくバランスのよくとれるようにすることが大切です。
食事について悩むことはあるかもしれませんが、どんなものでも、「これだけで大丈夫」ということはありません。
ボーンブロススープは、かつおだし、鶏ガラスープ、ブイヨン、などと大きな変わりはありません。
スープの飲みすぎは母乳やミルクの量にも影響してしまうかもしれません。あくまでも離乳食の味付けとして使うようにしましょうね。
参考文献
1)文部科学省,日本食品標準成分表2020年版(八訂)(2024年6月6日閲覧)
2)野口知里ら,成人女性における食事由来コラーゲン推定摂取量の特徴,栄養学雑誌,Vol.70 (2)p.120‐128,2012
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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