野菜ジュースはどんな栄養がある?野菜の代わりになる?管理栄養士解説

野菜ジュースは、野菜の代わりになるの?どんな栄養があるのか?と心配になりますよね・

多くの人が疑問に思いながらも、野菜を手軽に摂取できることで魅力的に感じる人も多いでしょう。


野菜ジュースで、野菜の栄養はどのくらい摂れるのか、
どのように考えて野菜ジュースを選択したらいいのか、
管理栄養士が解説します。

あなたにあった答えが見つかれば幸いです。一緒に考えていきましょう。

野菜ジュースの種類

野菜ジュースとは

 原料として野菜を使った飲み物を、野菜ジュースといえますが、
その中でも、野菜に含まれる水分を絞り出したものを野菜ジュースということが多いでしょう。


スムージーも野菜ジュースに含んで考えることもありますが、ここではあえてわけて解説します。

野菜ジュースとスムージーとの違い

野菜ジュースは、しぼる工程がはいりますので、多くの場合は、繊維を含みません。
例えば、ジューサーでにんじんとりんごのジュースを作るとたくさんの搾りかすがでます。
この搾りかすをのぞいたものがジュースであり、サラサラして飲みやすいのが特徴です。

一方でスムージーは、ミキサーでそのままつぶすため、ドロッとしているのが特徴になります。

ジューススムージー
食物繊維除去されたもの全て含まれる
ビタミン・ミネラル一部は含まれる全て含まれる
飲みやすさサラッとして飲みやすいドロッとして飲みにくい
(満足感がある)
野菜ジュース

市販の野菜ジュースの特徴

 市販の野菜ジュースには、さまざまな種類がありますが、野菜ジュースと分類されるものは、
いわゆる搾りかすを除いた「しぼり汁₌ジュース」となります。


つまり、食物繊維はジュースには多くは含まれていないといえます。

しかしながら、食物繊維が別に添加されているものもあります。

また、最近ではさまざまな失われやすいビタミンを添加しているものもあります。

管理栄養士

管理栄養士

市販の野菜ジュースを使うときには、「食物繊維がない」ことを意識しておくといいでしょう。
野菜の繊維ではありませんが、食物繊維を添加しているものもありますし、ミネラルやビタミンを添加しているものもあります。気になるものがあればそういうものを選ぶのも1つの手段ですね。

野菜ジュースで摂れる栄養素・摂れない栄養素

市販品の野菜ジュースで摂れる栄養は、商品によって大きく異なります。

野菜ジュースで、野菜の栄養をどれだけ摂取できるかは、以下の理由により比べることはここではしません。

野菜と野菜ジュースの栄養を比較計算しない理由

1.野菜の質と量の基準がわからないため

野菜はどの野菜をどれだけ入っているかによって全く栄養価が異なるため

2.野菜なら加熱や味付けすることが多いから

食材は加熱をすれば栄養価が変わります。
とくにビタミンなどは損失があります。
加熱だけではなく水洗いなどでもかわります。

例えばもし、生野菜を食べるとしても、そのまま食べるわけではなくドレッシングをかけたり味をつける可能性が高いため、ジュースとの単純比較はとても難しいものなのでしょう。

3.野菜も産地や旬などによっても栄養が変わるから

日本食品標準成分表は、たしかに栄養素を計算することができますが、
野菜は旬や産地によって異なります。例えば成分表にはほうれん草の夏と冬のデータが載っているように、野菜の栄養は変わります。

野菜と野菜ジュースの決定的な違い

前述のとおり、野菜ジュースは、食物繊維を除いた「しぼり汁」ですので、野菜との決定的な違いは、食物繊維です。

食物繊維の役割などはたくさんありますが、その1つに「噛む」ということがあります。

にんげんは噛むことで、満足度を得ることがあります。

野菜ジュースはさっと飲める利点がある反面、食事を摂ったという満足度には欠けるといえるでしょう。

管理栄養士

管理栄養士

また、噛むことによって口腔内のさまざまな機能が正常化を保つため、すべてを飲み物で済ませてしまうことはあまりふさわしいとはいえないですね。

野菜ジュースは野菜350gを使っているの?

1日に350g野菜を摂りたいものですが、野菜ジュースで1日分の野菜が全て摂れるのかと聞かれれば、答えはNoになります。

野菜ジュースを飲めば1日分の野菜が摂れますか?

1日分の野菜を摂ることはできませんが、1日に摂りたい野菜350gのうち、少しの足しとして考えていいでしょう。野菜ジュース1本(200㎖)を70g分として考えて構いませんので、あと、280gを野菜として食べていきましょうね。

伊藤園「1日分の野菜」の野菜350gの定義

伊藤園のホームページによると、下記のようになっています。

1本(200㎖)当たり、厚生労働省が推奨する1日の野菜摂取量350g分を使用し、野菜350g分の主栄養成分がバランスよく摂れる野菜汁100%飲料です。

伊藤園 ホームページ

このホームページの情報によると、野菜を原材料換算で350g使っているということのようです。廃棄率などについてはわかりませんでした。
野菜ジュースの350g分の栄養という定義のもととなる、主栄養成分(独自基準)とは、ビタミンC、β-カロテン、カルシウム、マグネシウム、カリウム だそうです。これは、メーカーの独自基準によるもので、国民健康・栄養調査から算出しているようですが、どのように計算され、そのような基準なのかは調べることができませんでした。

カゴメ「野菜1日これ1本」の野菜350gの定義

カゴメのホームページによると、下記のようになっています。

「これ1本」に彩り豊かな30品目の野菜350g分を使用。砂糖・食塩・栄養強化剤を使用せずに野菜本来のおいしさと栄養を提供する野菜汁100%ジュースです。トマトの濃厚な味わいを楽しみながら、野菜と栄養を手軽に補うことができます。

カゴメ ホームページ

このホームページの情報によると、野菜は原材料換算で350g使っているということのようです。
ページの注釈にははっきりと、

※1:野菜飲料は原料野菜の全成分を含むものではありませんが、不足しがちな野菜を補うためにお役立てください。

カゴメホームページ

という記述もあります。つまり、現状の野菜のすべての成分を含むわけではないということで、これ1本で野菜が摂れたことになるとは
言えないことはメーカー側もご存知なのではないかと推測いたします。

この商品の栄養とは、食物繊維、カリウム、カルシウム、ビタミンA、リコピンのようです。こちらは栄養強化はしていないタイプのようですね。

野菜ジュースは野菜としてカウントしていい?

食事バランスガイドにおける野菜の量

  農林水産省と厚生労働省の合同で提唱している、日本の「食事バランスガイド」では、
1日に摂取すべき野菜の目安量が設定されており、成人の場合、1日に摂りたい野菜、350gを5つのサービング(SV)にわけます1)

本ガイドの中では、野菜1つ70gを、×5つ分摂ってほしいとしています。

食事バランスガイドで野菜ジュースはカウントOK

さて、野菜ジュースは、この食事バランスガイドで、野菜量としてカウントしていいのでしょうか。

答えはYESです!

食事バランスガイドでは、野菜ジュースも野菜の一部としてカウントすることが認められています2)

野菜ジュースは200㎖を1つ(SV)としてカウントます。

つまり、野菜ジュース200㎖は、野菜70gとしてカウントしていいといえるのです。

ただし、野菜ジュースはあくまで「補助」として利用し、食事全体のバランスを考えて摂取することが大切です。

これだけで1日に摂りたい野菜が全て摂れるわけではなく、1日にとりたい野菜5つ分のうちの1つが補える計算にすぎません。

あと4つ(280g)は、ジュースではなく、野菜で摂っていきましょう。

管理栄養士

管理栄養士

野菜ジュースは、200mlで野菜1SV分。あと4SVは、ジュース以外で摂りましょう。
1日にそれ以上飲んでも野菜とは認めることはできかねます。あくまでも1SVまでですね。

管理栄養士推奨はホント?

野菜ジュースのうち、管理栄養士推奨というキャッチコピーで売られているものがあります。


これは本当に調査をしているもので、実際に伊藤園のホームページによると、
2023年10月に調査をした全国医療機関勤務の管理栄養士、781名に聞いた結果のようです。
実施期間:2023年10月
実施人数:781名(全国医療機関勤務 の管理栄養士)
設問:「1日分の野菜」を選択肢の1つとして、野菜や栄養が不足している方に紹介したいと思いますか?

これは、とてもいい質問です。
そもそも野菜や栄養が不足しているのであれば、野菜ジュースでもなんでもいいので、とにかくなんでもいいから食べてほしいと願うのが栄養士かなと思います。どこまで栄養不足を想定しているのかはわかりませんが、不足しているのなら補いましょう!と管理栄養士ならほとんど答えるでしょう。

管理栄養士

管理栄養士

この設問についてどう思うかは人それぞれとは思いますが、野菜ジュースの管理栄養士推奨は、ウソではないとは言えますね。

野菜ジュースのメリット・デメリット

メリット

手軽にさっと飲める

 野菜ジュースは、忙しい日々の中でも手軽に野菜の栄養素を摂取できる手段です。

クセが少ない

 野菜が苦手なお子さんなどでも、野菜を身近に感じるきっかけの1つにもなりそうです。

保存がきく

 保存が利きやすい点も野菜ジュースの大きなメリットです。
新鮮な野菜は保存が難しく、
すぐに使い切らないと品質が落ちてしまうこともありますが、
市販の野菜ジュースは長期間保存が可能で、必要な時にすぐに飲むことができます。

これにより、買い置きしておけば、
非常時や忙しいときや外出先で手軽に栄養補給をすることができるかもしれませんね。

デメリット

1日の野菜すべてはまかなえない

前述のとおり、野菜の足しにはなります。しかしながら、野菜ジュースだけで大丈夫だ!と思ってしまう方もいるかもしれません。

そのような誤解をうんでしまいかねないのが、
野菜ジュースのデメリットといえるかもしれませんね。

あくまでも補助的に使いましょう。

【関連記事】カット野菜は栄養がない?

野菜ジュースを栄養指導に使う時に考えたいこと

ご相談者

ご相談者

野菜ジュースは、管理栄養士に言わせると野菜に含まないといわれました!

管理栄養士

管理栄養士

そうなのですね。それは悲しかったですね。野菜ジュース好きなのですか?

ご相談者

ご相談者

いえ。好きではないのですが、野菜不足かなと思ったので、会社で朝は野菜ジュースを飲みながら仕事してるんです。

管理栄養士

管理栄養士

とてもいい心がけですね。この心がけで、ボーナスポイント!実はこれで野菜とったことになるんです。
でも、あと1日に280gは野菜を摂っていきたいので、もう少しがんばって摂っていきましょう!
例えば、お昼のパスタは、カルボナーラなどではなく、野菜多めのオイルパスタにしてみたり、セットのサラダをつけてみたりしましょうね。
野菜ジュースを飲むたびに思い出してみてください!

ご相談者

ご相談者

そうなのですね!野菜ジュースを飲んでもいいのですね!
わかりました。まだまだ足りない自覚はあるのですが、少しずつ野菜を足してみます!

これは極端なやりとりかもしれませんが、
栄養士・管理栄養士に、「野菜ジュースは野菜の代わりにならない」と言い切られると、
途方に暮れてしまい、どうしたらいいのかわからなくなる方もいらっしゃいます。

野菜ジュースはダメなのに、トマトソースはいいの?、トマトジュースは?と、細かいことを考えたらきりがないでしょう。


【関連記事】コンビニのカット野菜は栄養がない?危険?

野菜は1日350g以上食べている人の割合

国民健康・栄養調査によると、
20-29歳、30-39歳、40-49歳で
野菜を1日に350g摂取できている人は、25%に満たない状況です。

つまり4‐5人に1人しか達成できてないのが現状なのです。

野菜350gを摂取できている日本人の割合

日本人若年層の野菜摂取量

国民健康・栄養調査(2019年)によると、
20-39歳においては、野菜を1日に140g未満しか食べない人が約3割もいることになり、
このうち、野菜を70g未満しか食べていない人が全体の約1割にもなります。

日本人若年層の野菜摂取量

これらのデータにあるように、野菜の摂取量が目標の350gにはまだまだ足りていない人がほとんどなのです。

例えばこの中で「野菜ジュースで補っているから大丈夫」と思ってしまう人がいるのであれば、それはよくないことです。

しかしながら、野菜は少し足しにはなるからと励まし、とりあえず、280g以上摂れるように心がけてもらう1つのきっかけになるのではないでしょうか。

高いハードル 野菜摂取

まとめ:野菜ジュースは1日に摂りたい野菜の量にプラスのもの

野菜ジュースは、食物繊維やそのほかビタミン・ミネラル類など
さまざまな栄養素が野菜そのものとはいいがたいのが現状です。

しかしながら、「野菜ジュースは野菜の代わりにならない」と言い放ってしまうのは、
あまりにも早く短絡的な決断です。

野菜ジュースを例えるなら、
2合目まで連れてってくれる登山バスのようなものかもしれません。
例えば、高い山に登らなけれなならないとき、
2合目までバスで行けるとしたら、少しやる気が出てくるのと同じように、

野菜ジュースを、野菜として少しカウントしていいので、
全量を野菜350gにするように頑張ってみよう!と考えみるといいのではないでしょうか。

野菜ジュースは、野菜の代わりには、ほんの少ししかなりません。あとはしっかり野菜を食べる必要があります。

「野菜ジュースで大丈夫!」「野菜ジュースで野菜は足りてる」と考えるのではなく、ちょっとだけの足しなので、しっかり食べなきゃ!と奮い立たせるツールとして、おいしく楽しくとり入れてみてはいかがでしょうか。

参考文献

1)農林水産省,食事バランスガイド(2024年10月3日閲覧)

2)農林水産省,食事バランスガイドQA>実践食育ナビ>フードビジネス現場での活用>SV計算の難しいもの(2024年10月3日閲覧)

3)厚生労働省,国民健康・栄養調査(2024年10月3日閲覧)

※2022年データは概要から推定

著者執筆の記事一覧

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている