今考えたい!ベビーフードの安全性と安心な選び方

ベビーフードはたくさんの種類がありますが、どれを選べばいいのでしょうか。安全性の基準や仕組みと安心な選び方について解説いたします。

ベビーフードの定義

離乳食という言葉と、ベビーフードという言葉はそれぞれ何が違うのでしょうか。
英語ではそれぞれ下記のように意味されます。

・baby food市販されている「赤ちゃん用の食べ物」全般
・weaning food
・complementary food
母乳やミルクだけの栄養から離れ、他の食べ物を始める「離乳」の過程で与える食事

日本における「ベビーフード」という言葉は、英語と同様に定義づけられます。
ベビーフードとは、市販されている赤ちゃん用の食べ物をさします。

日本ベビーフード協議会では、「「乳児」および「幼児」の発育に伴い、栄養補給を行うとともに、徐々に一般食品に適応させることを目的とした食品」と定義しています 1)

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ベビーフードの種類と特徴

ベビーフード協議会で、規格が整備されているのは、ウェットタイプとドライタイプです。

1. ウェットタイプ(瓶詰・パウチタイプ)

ウェットタイプは、瓶詰タイプとレトルトパウチタイプがあります。

いわゆる、2個セットで紙箱にはいっているようなカップ型レトルトも「レトルトパウチ」になります。

瓶詰(びんづめ)

  • ガラス瓶に入っていて、密封して加熱殺菌されている
  • 中身が見える安心感がある
  • 加熱がレトルトより低く圧力がかからないため、風味が残りやすい傾向がある
  • 保存料不使用でも長持ちする

レトルト

  • 密封して、高温と高圧で殺菌されている。
  • アルミやプラスチックの袋やカップに入っているため中身が見えない
  • 軽くて扱いやすい
  • 風味や食感が変わることがある
  • 保存料不使用でも長持ちする

2. ドライタイプ(粉末・フレーク状)

ドライタイプは、よく「フリーズドライ」とも称されますが、フリーズドライだけではありません。

しかし、いずれのドライタイプも下記のような特徴があります。

  • 水やお湯で溶かして使用(加熱調理を前提とした商品)
  • 手作り感覚で調理できる
  • フリーズドライ(冷凍凍結)/ドラムドライ

フリーズドライ

調理後ただちに急速冷凍する方法です。真空・低温で乾燥させるため、色・味・栄養価が残りやすいのが特徴です5)

ドラムドライ

回転する加熱ドラム上に液状の食品を薄く塗りつけ、乾燥させます。フレークや粉末状になります。

その他にも、熱風乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥などもありますが、ベビーフードとして存在するかはわかりません。

3. 冷凍タイプ

2025年6月現在では、ベビーフード協議会加盟企業では、冷凍タイプのベビーフードはありません。

しかし、冷凍タイプの場合は下記のような特徴があります。

  • 栄養価を比較的保ちやすい
  • 解凍は電子レンジのみで簡易
  • 高温高圧などではないので、味がそのまま復元されやすい
1960年後半のベビーフード
1970年頃のベビーフード(雑誌広告をもとに作図)

ベビーフードの歴史

以下の歴史のように、ベビーフードは、単なる時短などではなく、乳児の栄養を確保するために進化をしてきました。

また、ベビーフードは、少しずつ軽量化や具が大きくなったりと、年々進化しています。

ベビーフードは、味などのさまざまなバリエーションが増え、家庭では作らないような味も登場し、手作りと併用することによって、食経験がより多様化するメリットがあります。

ベビーフード年表

1928年アメリカミシガン州でガーバー社がベビーフードを販売
1937年和光堂がアルファ化した粥の「グリスメール」発売。500g入り1円。
皇后さまがお使いになられた。
1942年和光堂が「育児食」販売
1950年武田薬品工業「ビタミン強化混合食」3品目発売。
肉野菜、果実など複合食材のもの。
1956年森永乳業が「ライスメール」という紙容器包装の粉末製品を発売
1960年キユーピー、ベビーフード販売
1970年代乾燥ベビーフードの種類が増え、米だけではなくから果汁、野菜、肉類に至る品目にまで拡大。明治乳業などが販売。
ガーバーベビーフード輸入本格化。
1984年フリーズドライ商品 発売
1987年明治乳業がカップ型のレトルトベビーフードを発売。カップですぐ食べられる需要や、固形物がごろっとはいったものが登場
1992年厚生省「乳幼児用食品(ベビ-フ-ド)規格基準検討会」発足
1993年ピジョン、ベビーフード「赤ちゃんの和食」発売。各社、味などが多様化へ
1996年厚生省「ベビーフード指針」発表
2003年明治屋、米ガーバー社との契約終了 ベビーフード事業を和光堂が継承・独占販売へ
2016年明治乳業、ベビーフード事業から撤退
2017年和光堂、アサヒグループ食品に吸収合併(2006年に子会社化)
2022年森永乳業、ベビーフード事業から一旦撤退(*2025年 3品 新発売)
2026年キユーピー、ベビーフード生産を8月にて終了し、順次販売終了へ
文献2)および、各社IR情報等参照

1980年頃ベビーフードイメージ(Meiji)*イメージ図です

2000年頃の和食特化レトルトベビーフード(雑誌広告をもとにAI作図)*イメージ図です

2010年頃森永ベビーフードおでかけセット(IR記事をもとにAI作図)*イメージ図です

日本におけるベビーフードの規格基準

ベビーフードだけではなく、日本で食品を販売しようと思った場合には、さまざまな規格基準や法律に準拠する必要があります。

法律名主な内容所管省庁
食品表示法原材料、栄養成分、アレルゲンなどの表示ルールを規定。食品表示法は、消費者の安全確保や健康増進などを目的として、食品の表示ルールを定めた法律です。2015年4月1日に施行され、食品衛生法JAS法(農林物資の規格化等に関する法律)健康増進法の食品表示に関する規定を統合・一本化したものです消費者庁
景品表示法誇大広告・不当表示の規制(例:「夜泣きにに効く!」など)。消費者庁

食品表示法・食品衛生法などにおける基準

日本において、ベビーフードは食品衛生法上では「ベビーフード」という区分はなく、「レトルトパウチ食品」「瓶詰食品」などとなっています。

食品表示基準では、食品衛生法「食品、添加物等の規格基準」の「A 食品一般の成分規格」で規定された乳児の飲食に供することを目的として販売する食品を対象に「乳児用規格適用食品である旨」の表示を2012年に義務付けました。

乳児用規格適用食品表示

「乳児用規格適用食品」という言葉は放射性物質の基準が乳児用で作られていることを証明しているものです。

しかし、この文言が、消費者に「かたさや味つけなども乳児用食品である」という誤解を生んでしまう可能性があるため、2024年の消費者庁通知で、乳児用規格適用食品の表示が変更されました3)

  • 表示義務:「食品衛生法に基づき乳児用食品に係る放射性物質の規格が適用される食品」であることを明記3)
  • 月齢表示があるベビーフードなど、乳児用食品と容易に判別できる商品は、表示省略可能3)
  • 2025年3月末表示、表示見直しを完了しています3)

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つまり、日本においては、各種の法律に沿う必要があり、その読み込みは、食品メーカー以外では非常に困難です。

また、食品衛生法とは別に「ベビーフード指針」というものがあります6)

厚生省「ベビーフード指針」は閲覧困難

1996年に厚生省より発表された「ベビーフード指針6)」というものがあります。

しかし、現在、その詳細を閲覧することができません。

2025年6月時点では国会図書館でもみることができない、いわゆる、幻の書類です。

ベビーフード指針「ベビーフードの試験方法」7)

母子栄養協会には、ベビーフード指針が蔵書されています。
ベビーフード指針の中の「ベビーフードの試験方法」 によると、
下記のような試験方法と基準について記載があります。

  • ベビーフードの硬さと参考値、試験方法
  • ベビーフードの固形物の大きさの基準値(目安値)
  • 浸透圧の基準と試験法

と、安全に製造するための、硬さの目安値があります。

つまり、「ベビーフード指針」では、とても大切なベビーフードの硬さが数値化されています。
しかし、あいにくこの「ベビーフード指針」は、国の基準でありますが、
どこでも閲覧できない状況のままであるため、近年販売されている新しいベビーフードがこれらに準拠しているのかはわかりません。

ベビーフード協議会の取り組みと規格

日本ベビーフード協議会とは

日本ベビーフード協議会は昭和35年(1960年)に創立された、業界団体で、日本缶詰びん詰レトルト食品協会の中に位置づけられています。

ベビーフードの安全性の追求のために、関係行政官庁の指導を受けながら、業界独自の自主規格を作成し、食品安全性に関する課題に対応しているとのことです1)。

日本ベビーフード協議会の会員企業

2024年現在、日本ベビーフード協議会の会員企業は以下の5社です3):

  1. アサヒグループ食品株式会社(和光堂ブランド)
  2. 江崎グリコ株式会社
  3. キユーピー株式会社
  4. ピジョン株式会社
  5. 雪印ビーンスターク株式会社

注意:ベビーフード自主規格は、あくまでも上記5社の自主規格であり、すべての会社・ベビーフードが本規格に準じているわけではありません。

ベビーフードの製品規格と品質基準

ベビーフード自主規格では、下記のような基準があります。

  • 月齢表示(目安)かたさなど
  • 使用原材料
  • 栄養成分表示
  • 味付け
  • 使用原材料
  • アレルゲン表示
  • 残留農薬基準
  • 食品添加物の使用制限
  • 遺伝子組換え食品への対応
  • 衛生管理基準

など、ベビーフード協議会に加盟している各社のベビーフードは、一般食品以上に厳格な基準が適用されています。

ベビーフードの選び方

では、このように「ベビーフード指針」が一般的に閲覧できないままである現在、どのようなものを選んだらいいのでしょうか。

無添加という表示に踊らされない

小さい命を守ろうとすると、少しでも体によいものをと考えますよね。

そこで心ゆらぐのが「無添加」という言葉です。

しかし、だからこそ、この言葉に踊らされないことが大切です。

ベビーフードにおいては、「不必要な添加物」は使われていません。例えば真っ赤に色付けするなどは、日本においては必要ないので、筆者が知る限りは商品化されているものはありません。

まず、豆腐も添加物がないと作れませんし、しょうゆや味噌も多くは添加物を使って作られています。

2024年4月から「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が本格運用開始されました2)。
「無添加」表示については、以下の点に注意が必要です:

  • 単純な「無添加」表示は誤認を招く可能性
  • 具体的にどの添加物を使用していないかの明記が推奨

また、日本ベビーフード協議会の加盟企業では、さらに自主規格で認められた添加物のみという厳しい環境で管理されています。

例えば、気軽に「無添加」などと表示されているものがいいかは、わかりません。

本来、レトルトなどは高温加熱することによって日持ちするようにできていますので、保存料などは使っていません。

レトルト食品に「保存料無添加」と書いてあるとよい物のように思えますが、そもそもレトルト食品では、保存料は使いません。

消費者庁では「不必要に安全性を強調し、他製品を危険と誤認させる表示」は不適切としています。

無添加という言葉に踊らされないように選びましょう。

オーガニックベビーフードの選び方:有機JASマーク

オーガニック(有機)を選びたいと思った場合は、有機JASマークで判断します。

日本では、「有機」や「オーガニック」と表示できるのは 有機JASマークが付いているものだけ です。

マークがないものは、たとえ農薬・化学肥料不使用で栽培されていても、法律上は「有機」と名乗ることができません。

尚、JASマークがつけるには原料の95%以上が有機栽培であるようにとされるため、魚を多くつかったものなどは難しいです。また、肉類や乳製品も少し困難です。

したがって、有機JASベビーフードだけで栄養を摂ることは困難かもしれません。

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食材の種類で選ぶ

ベビーフードの選ぶときのポイントは「赤ちゃんに食べさせたい食材が入っているか」で選ぶことです。

離乳食とは、母乳やミルク以外の食事から栄養を摂っていくことです。

したがって、ベビーフードなどを適宜つかって、赤ちゃんに「新しい食の経験」をさせてあげましょう。

たとえば、野菜を食べさせたいか、肉を食べさせたいか・・・などの大きな食品群で考えて選びましょう。

バランスは難しいですよね。ベビーフードだけでは、足りないことがあるかもしれません。
肉が足りないなとか野菜が足りないな、穀類ないな…と思ったら、どうしたらいいですか?
バランスは難しいですよね。ベビーフードだけでは、足りないことがあるかもしれません。
肉が足りないなとか野菜が足りないな、穀類ないな…と思ったら、どうしたらいいですか?

そのような時には、ツナ缶や、一般用のおかゆ など、一般の食品がベビーフードの足しになることもあるかもしれませんね。

そのような時には、ツナ缶や、一般用のおかゆ など、一般の食品がベビーフードの足しになることもあるかもしれませんね。
管理栄養士

管理栄養士

まとめ

ベビーフードの安心な選び方は、人それぞれと言えるでしょう。

日本ベビーフード協議会の厳格な自主規格により、国内で販売されるベビーフードは高水準の安全性を確保しているものの、
現在は加盟していない企業も多く、また、国のベビーフード基準が閲覧できない状況が15年以上続いています。

筆者が願うのは、ベビーフードが今後も続いて販売されることです。

このためには、「安心な選び方」ができるように、各メーカーが誠実に商品づくりをすることです。

ベビーフードは、子育てには欠かせないツールの1つで、何世代も前から愛用されています。

しかしながら、少子化などにより経営が難しくなり大手メーカーがあいついで撤退しています。

ここで消費者である私たちができることは、「安全性に対する正しい理解」をし、メーカーは「消費者を裏切らないモノづくり」を徹底していきたいですね。

私たちだけではなく、次の世代にもベビーフードを愛用できるように、皆さんで考えてみましょう。

参考文献

  1. 日本ベビーフード協議会.ベビーフード自主規格第VI版 (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  2. 日本ベビーフード協議会.日本におけるベビーフード市場の変遷 (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  3. 消費者庁.食品表示の適正化に向けた取組について (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  4. 消費者庁.「食品表示基準について」(平成27年3月30日消食表第139号消費者庁次長通知) (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  5. 農林水産省.マガジン「aff」 (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  6. 厚生省生活衛生局新開発食品保健対策室.ベビーフード指針 (URL)(2025年6月21日 閲覧)
  7. 厚生省生活衛生局新開発食品保健対策室. ベビーフード指針. 別添「参考:ベビーフードの試験方法」. 1996年3月;:

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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