学校給食は少ない?栄養基準と、昭和と令和の違い SNS写真から考察

SNSやニュースなどで、学校給食の写真が話題になることがありますね。

「おかずが少ないのでは?」
「育ち盛りの子どもには足りないのでは?」
「昭和の給食はもっと量が多かった気がする」そんな声を見かけることもあります。

確かに、大人の目で見ると、少なく感じる給食もあるかもしれませんね。

しかし、学校給食は小学生に必要な栄養を満たすように細かく設計されています。

また、料理の品数や見た目のボリュームだけで考えられているわけではありません。

実は、学校給食には栄養基準があり、エネルギーは1日の必要量のおよそ1/3、カルシウムは推奨量の半分を摂れるように考えられています1)。

こうした栄養管理の考え方は、昭和から同じものになっていますので、令和は給食栄養が乏しいなどということではありません。


この記事は、学校給食の栄養基準や献立の工夫(栄養士が考えていること)と、
昭和と令和の違いについて管理栄養士の視点から考えます。

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画像はAI生成

学校給食は1日に必要な栄養の何割をとれるようにしている?

学校給食には、文部科学省が定める「学校給食摂取基準」があります1)。

これは、児童生徒の成長や健康を考え、給食1食当たりにどのくらいのエネルギーや栄養素をとることが望ましいかを示したものです。

例えば、小学校3〜4年生(8〜9歳)の学校給食の基準は、エネルギー650kcal、カルシウム350mgが基準となっています(▼下表)。

学校給食の栄養基準(小学3〜4年生)

栄養素1食当たりの基準
エネルギー650kcal
たんぱく質エネルギーの13〜20%
脂質エネルギーの20〜30%
カルシウム350mg
鉄3.0mg
ビタミンA200μgRAE
ビタミンB10.4mg
ビタミンB20.4mg
ビタミンC25mg
食物繊維4.5g以上
食塩相当量2.0g未満

出典:文部科学省「学校給食実施基準」(令和3年改正)1)。

栄養教諭や学校栄養職員(栄養士・管理栄養士)は、こうした基準を踏まえ、さまざまな食材を組み合わせて献立を考えています。

これら栄養以外にも食材群ごとにも考えられています。もちろん食材費や食器の盛り付けなども考えます。まさにパズルのような世界なのです。
これら栄養以外にも食材群ごとにも考えられています。もちろん食材費や食器の盛り付けなども考えます。まさにパズルのような世界なのです。
管理栄養士

管理栄養士

すごいですね!毎食これらをすべて満たしているのですか?
すごいですね!毎食これらをすべて満たしているのですか?
いいえ。これらは毎回の1食の献立ですべての栄養素を基準値と完全に一致させるという意味ではなく、1ケ月の中で平均してこれらを満たすように作られています。
いいえ。これらは毎回の1食の献立ですべての栄養素を基準値と完全に一致させるという意味ではなく、1ケ月の中で平均してこれらを満たすように作られています。
管理栄養士

管理栄養士

これらの数字はどのように算出されているのですか?
これらの数字はどのように算出されているのですか?
給食は1日に必要な栄養の約1/3です。

食事は朝昼晩と3回食べますから、お昼は1/3なのです。なので、朝・晩を給食を参考に食べていただくと、とてもバランスの良い食事になるというわけですね。
給食は1日に必要な栄養の約1/3です。

食事は朝昼晩と3回食べますから、お昼は1/3なのです。なので、朝・晩を給食を参考に食べていただくと、とてもバランスの良い食事になるというわけですね。
管理栄養士

管理栄養士

エネルギーは、標準的な体格や身体活動量を踏まえた1日の推定エネルギー必要量の3分の1を基本としています。

一方、カルシウムは、1日の推奨量のおよそ半分を給食で確保する考え方です。

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、8〜9歳のカルシウム推奨量は男子650mg、女子750mg2)ですので、学校給食の基準の350mgは、男子で約54%、女子で約47%に相当します。

家庭の食事で不足しやすい栄養素を補うことも考えられているのです。

学童期には必要な栄養なのに、毎食とるのがなかなか難しいカルシウムが多めなのは 嬉しいポイントですよね。
学童期には必要な栄養なのに、毎食とるのがなかなか難しいカルシウムが多めなのは 嬉しいポイントですよね。
管理栄養士

管理栄養士

「ソーセージ2本だけ?」給食全体の栄養を考えてみる

最近(2026年10月)、札幌市の学校給食として紹介されたセルフドッグの写真が話題になりました。

パン、ソーセージ2本、かぼちゃのポタージュ、牛乳、果物という組み合わせです。

ソーセージだけを見ると「おかずが少ない」と感じるかもしれません。

しかし、たんぱく質はソーセージだけからとるわけではありません。

パンや牛乳、ポタージュにも含まれているので、おかずとしては、これで十分となるのです。面白いですよね?

たんぱく質はどのくらいとれている?

実際の献立の使用重量は確認できていませんが、食品成分表をもとに、仮の分量で試算してみました3)。

食品想定量エネルギーたんぱく質
コッペパン65g177kcal6.0g
ウインナー2本30g98kcal3.6g
ケチャップ10g12kcal0.2g
牛乳200mL122kcal6.6g
かぼちゃ(ゆで)80g64.00kcal1.3g
ポタージュ用牛乳80mL49kcal2.6g
玉ねぎ(生)20g7kcal0.2g
小麦粉(薄力粉)5g17kcal0.4g
バター(有塩)5g35kcal0.0g
食塩0.3g0kcal0g
バナナ*40g37kcal0.4g
合計619kcal
(中学年基準650kcalの95.2%)
21.4g
(エネルギー比率13.8%)

※実際に食べ物を測っているわけではないので分量は筆者推定。日本食品標準成分表を参考にした概算です。
※果物は計算上バナナとしましたが、報道された給食の果物の種類一部黄桃とすることがあります。

小学校3〜4年生の学校給食では、たんぱく質の基準は摂取エネルギーの13〜20%ですので、今回の試算値では、その下限に近いものの満たしている量です。

また、繰り返しになりますが、献立は1ケ月トータルで見ますので、例えば他でタンパク質がどうしても多くなってしまう献立がある場合は他の日程で少な目に調整するなどもあります。

かぼちゃポタージュの秘密と給食上の工夫

このように、見た目では「パンとソーセージだけ」と感じる献立でも、ここには、かぼちゃのポタージュがあり、これがタンパク質やエネルギーに貢献していることがわかりますよね。

このようにほかの料理を合わせて考えると、さまざまな栄養素を摂取できることがわかります。

では、なぜかぼちゃのポタージュなのでしょうか

かぼちゃのポタージュにしているのは、さまざまな理由が想定されます。

  • 汁物の椀にいれるものが必要
  • パンにあう汁物がいい
  • 野菜は残食が多いことがあるので、かぼちゃサラダよりポタージュなどだと食べやすい

あくまでも、推定ですし、他の案もあるかとは思いますが、しかしながら、特におかしい献立とは思えません。

残食が少なく、盛り付けしやすく、限りある食器にいれる工夫

かぼちゃを食べてもらいたい!そう思うと、かぼちゃの食感が苦手な子どもでも、なめらかなポタージュなら食べやすい場合があります。

もちろん、どちらの料理の残菜が少ないかは、レシピや子どもの好みによって異なります。

学校給食では、栄養価だけでなく、子どもが食べやすい調理形態も大切です。

栄養とは、食べてもらってはじめて成り立つものなので、栄養士は「食べて欲しい!」と願い、過去の子ども達の人気などから考えて構成しています。

昭和の給食にも栄養基準はあり、今と変わらない

「昔の給食はもっと栄養があったのでは?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし、昭和の学校給食も、当時の栄養学に基づいて作られ、学校給食にも、1食当たりの栄養基準が設けられていました4)。

小学校中学年に相当する区分で比較してみましょう。

栄養素昭和46年昭和61年令和3年
エネルギー600kcal640kcal650kcal
たんぱく質23g25gエネルギーの13〜20%
カルシウム300mg290mg350mg
鉄基準なし3.2mg3.0mg

※昭和46年は小学校低・中学年共通の区分、昭和61年以降は8〜9歳の区分です。年代によって栄養基準の考え方も異なります。

出典:高居百合子(1986)4)、文部科学省1)をもとに作成。

昭和61年の改訂解説論文では、エネルギーは1日の栄養所要量の35%、カルシウムは55%を給食で確保する考え方が示されています4)。

つまり、学校給食は昭和の時代から、数値として大きくは変わっていませんし、給食のボリュームも変わっていないのです。

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写真だけで「最近の給食は量が少ない」と判断できる?

昔と今では、給食の見られ方も変わってきたと感じることがあります。

昭和の時代には、毎日の給食をスマートフォンで撮影し、全国に発信することはできませんでした。

現在は、一枚の写真がSNSで広まり、多くの人が給食の量について意見を交わすことができます。

しかし、SNSで話題になる写真だけでは、実際に少ない給食が増えたかどうかは判断できません。

栄養素は満たしているのにもかかわらず、たまにカサが少なく見える1日を大きくとりあげたりすることが容易になったのではないでしょうか。

また、そのようは発信は大人がします。大人が自分の食事と比べて「少ない」と感じる量なのかもしれません。

忘れないでいただきたいのは、小学校給食は小学生向けに作られたものだということです。

盛り付けを変えたら、どう見える?

例えば、ソーセージ2本を大きなお皿に置いた場合と、パンに挟んでホットドッグにした場合。

使っている食材や重量は同じでも、見た目の印象は変わりますのかなと思いましたので、生成AI(ChatGPT)で作図してみました。

令和の給食が少ない?と思ったときに考えたい 盛り付け

画像はAI生成

さらに、昭和の給食で使われていたようなアルマイト製の食器やトレイに載せても、違った印象になるでしょう。

食器の大きさや食品の配置によっても、食事の見え方は変化します。

では、食器を変えたらいいのかというとそうではなく、大量調理において、どんなレシピでも使いやすく、割れにくく、洗いやすく、適度な重さなどであること…等、限られた予算の中でよりよい食器をみつけることはとても困難です。

だからこそ、写真の印象だけで、「いまの学校給食は少ない」などを容易に判断する行動は少し考えたいですね。

もし学校給食で足りないと感じたら

学校給食が全ての子のお腹を完全に満たすかというと、体格差や運動量などを考えると、一概にそうとは言い切れないこともあるかもしれませんね。

では、学校給食で足りないなと思ったら考えたいことは下記のようなことがあるでしょう。

  • 朝ごはんをしっかり給食と同じくらいまたはそれ以上に食べましょう(日本の小学生の約6.3%5)に朝食欠食がみられます)給食は1日の1/3です
  • 残さずしっかり食べましょう。お代わりがクラスで出た場合は手をあげてみましょう
  • 帰ってきたらお菓子などでお腹を満たすよりも、できるかぎり食材に近づけたものを食べましょう

学校給食を頼るが頼りすぎない

学校給食は3食あるわけでもなければ、365日あるわけでもありません。土日は休みですし、夏休みなどの長期休みもあります。

あくまでも子どもの成長の一部を助けていることにしかすぎません。

学校給食は栄養もしっかり考えられる、頼もしい存在ですが、あくまでも朝昼晩の昼のみであり、1年のうち190-200日程度なのです。

つまり、33%×190/360で、学校給食の栄養は1年で考えると、17.5%程度に過ぎないのです。

間違えてはいけないのが、学校給食だけで大きくなると思わないようにするということです。

まとめ:給食に込められた工夫を知りましょう

学校給食は、昭和から令和まで、栄養基準に基づいて考えられてきています。
その栄養基準はいつの時代もさまざまな栄養疫学に基づいて算出されています。

時々、栄養基準が間違えているかのようなSNS投稿も見受けられたりします。
もし、栄養学に興味があれば、「日本人の食事摂取基準」ををお勧めします。
とても長くて難しいものですが、なぜこの栄養がこの数値で設計されているのかなどの理由を知ることができます。

給食は、栄養教諭や学校栄養職員、調理員などが、限られた食材費のなかで栄養バランスやおいしさ、安全性を考えています。

例えば、札幌市の2026年度の小学3〜4年生の食材購入価格は、1食378円6)。そのなかで、さまざまな栄養素を考えて献立が作られています。

また、子どもが盛り付けしやすいように、作りやすいように、子どもが食べやすいもので、食器の種類も限られる…などの制限の中さまざまな工夫があるものです。

一枚の写真だけでは、実際の材料の量も栄養価もわかりません。

また、1ケ月のうちのその献立だけがたまたまそのように映っただけの可能性もあります。
栄養素は1ケ月でバランスよく摂れるように設定されていますので、1枚の写真で判断することはよくありません。また食器

給食の量を心配する声も大切にしながら、その1食に込められた栄養や調理の工夫にも目を向けていただけたらと思います。

参考文献

  1. 文部科学省.学校給食実施基準(2026年10月10日 閲覧)
  2. 厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2025年版)(2026年10月10日 閲覧)
  3. 文部科学省.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年.(2026年10月10日 閲覧)
  4. 高居百合子. 学校給食の所要栄養量改定について. 栄養学雑誌. ;44(4):221-226
  5. 文部科学省.「全国学力・学習状況調査」(2026年10月10日 閲覧)
  6. 札幌市教育委員会.札幌市の学校給食費.(2026年10月10日 閲覧)

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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