離乳食の加熱はいつまで必要? 離乳食の安全性
「離乳食の加熱はいつまでしたらいいのだろう?」
「そもそも離乳食は必ず加熱をしなければいけないの?」という
ご質問が寄せられましたので回答を一緒に考えてみましょう。
ネットやSNSで出てくる簡易的な「〇ケ月までは加熱が必要」
という指導をそのまま鵜呑みにしないようにしたいですね。
離乳食の加熱はいつまで?
離乳食の加熱は何ケ月までと聞かれても、まず目安はありませんが、
時にどうしても時期を聞かれるなら、飽きるまでと答えたりすることもあります。
食材はとても多くの数があり、この食材は加熱が必要か否かというものは
とても多くの説明が必要であり、それには多くの知識が必要です。
離乳食の加熱の必要性
離乳食は、いくつかの理由から「加熱」する必要があります。
理由1:衛生
離乳食では衛生的な安全性のために加熱が必要です。食材を適切に加熱することで、食中毒菌などの活性を抑えたり死滅させることができます。
自宅で加熱する際の注意点
菌によって必要な温度や時間は違いますが、「しっかりフツフツと沸騰させる」ということはポイントです。
これには根拠となるガイドラインなどはありませんが、分数などを言っても食材や鍋の大きさ、火加減などによっても異なりますので、家庭での調理は「しっかり沸騰」くらいの指導がいいでしょう。しかしながらそもそも衛生に不安があるような食材は使わない方がいいので、あくまでも新鮮で食中毒菌に汚染している可能性が低い場合をさします。
特に生肉などはしっかり色が変わるまで加熱しましょう。
参考)給食などでの加熱温度
保育園などでの給食では、必ず3か所以上(3点以上)の食べ物の中心温度を測ります。
中心温が75℃になってから1分間以上加熱するという決まりがマニュアルで指定されています1)。
(二枚貝などのノロウイルス汚染が懸念される食品については、85℃で1分間以上の加熱が必要ですが、離乳食では二枚貝をつかわないので割愛)
離乳食以外でも加熱が必要な食材
以下のものは離乳食だけではなく、加熱は必要です。 そもそも加熱をしないと食べられないものもあります。
生肉などは寄生虫や食中毒菌などの可能性があるため、必ず加熱が必要です。
離乳食の衛生の基本
衛生の基本は「つけない」「ふやさない」「やっつける」です。
加熱は「やっつける」に該当しますが、これだけでいい問題ではなく、「つけない」「ふやさない」も大切です。
例えば、何かを触った手で食品に触れてしまったり、作った離乳食を何時間も常温で置いておくなどをしてはいけません。
管理栄養士
衛生的なもの(腐ったりしていないもの)を、しっかり加熱して、作ってから1時間以内には食べるようにしましょう。(食べられない場合は冷蔵庫や冷凍庫で保管しましょう)
理由2:離乳食期の咀嚼
離乳食では、衛生面で心配のないようなものであっても、
やわらかくするために加熱が必要なことがあります。
赤ちゃんは、まだかむ力が弱く、またしっかり噛むことも難しいことがあるので、
お子さんにあわせて、食材を柔らかくする必要があります。
たとえば、りんごなどは加熱をしないととても硬いものです。
小さく薄く切ると、軽いために息を吸ったり泣いたりすることで気管などに入ってしまうことも考えられます。
このため、保育園給食などにむけたガイドラインでは
「りんごは離乳完了期まで加熱で提供」という園の事例が記載されています2)。
管理栄養士
これを「りんごだから」と安易に理解するのではなく、他でも同じような硬さ(指ではつぶれないくらいもの)を離乳食であげるときには「加熱をしてやわらかくすることができそうか」を考えてみましょう。
下の写真はりんごを薄切りにしてから、電子レンジで加熱してからみじんぎりにしたもの(左)と生のままみじんぎりにしたもの(右)です。硬さもあきらかに違います。
理由3:アレルギーのちからの低減
アレルギーのリスクを減らすために加熱が必要なことがあります。
加熱により、食材中のアレルゲンが変性し、アレルギー反応を起こしにくくなります。
例えば、卵は生の状態だとアレルギーのちからが100くらいあるところ、ゆで卵にすると、1以下のちからになります。つまり加熱した卵のほうが、アレルギー発症リスクは少し軽減できるといいうわけです。
但、アレルギーは原因がはっきりとは解明されていませんし、アレルギーのちからが低くても発症する人はいますので一概にはいえません。また、加熱してもアレルゲンが変性しないものもあります。
理由4:離乳食に適切な温度
牛乳やヨーグルト、豆腐は、特に加熱をしなくてもすでに製造上で加熱されているので、
開封後すぐであれば安心です。
しかしながら、これらは冷蔵庫で保管されていますので、
そのまま加熱しないであげてしまうと、冷たくて赤ちゃんがびっくりしてしまいます。
そのため、ちょっとだけ温めてあげると食べやすくなりますよ
管理栄養士
温度が原因で加熱したい場合には、電子レンジで少しだけ加熱すればいいですね!
理由5 :おいしくなる
加熱すると酸味が飛んだり、苦味がやわらいで、食べやすくなるものもあります。
食材によっては、生の状態よりも加熱したほうが甘く食べやすくなるものがありますので、いろいろ試してくださいね。
食材としての加熱の必要性
離乳食としてだけではなく、食材には「加熱をしないと食べられないもの」があります。
以下のものは、「生では食べない方が良い食材」です
枝豆、大豆 | しっかり茹でることで、タンパク質が食べやすく変わります。 |
じゃがいも、さつまいも、かぼちゃ | 生のままだと消化が難しい食材です。消化によくありません。 |
白米、玄米、麦など | しっかり加熱することで、糖質が変性して食べやすくなります |
マッシュルーム以外のキノコ | キノコは基本的に加熱をして食べるものです。 |
ほうれんそう | 多くの品種では、シュウ酸を含むので茹でこぼしをするといいでしょう。 |
生肉(生の鶏肉、豚肉、牛肉) | 寄生虫や食中毒菌などの可能性があるため加熱をしましょう |
もやし | あしが早く腐りやすいので、加熱をしましょう |
他にも、ぎんなんなど、普段なかなか食べないような変わった食材など、生では危険なものは他もあるかもしれません。
なぜ離乳食に加熱が必要なのか
離乳食は加熱が必要といわれていますが、それは「赤ちゃんが食中毒にかからないように」「赤ちゃんの世話は大変なので、手洗いや食器洗い等、衛生面の配慮が欠けてしまうことが想定されるため」なども考えられます。
短い時間で離乳食についてわかりやすく説明する時に、
以上のような点を解説するのが難しく「
しっかり加熱しましょう」とわかりやすく説明することが、
有効であるためです。
離乳食はいつまで加熱が必要か
つまり離乳食にいつまで加熱が必要なのかという答えはありません。
以上のようなことがなんとなく理解ができて、
「これは衛生的に安全だから食べられそう」
「これはやわらかいから大丈夫そう」
などを判断してあげられるようになればいいですね。
保護者の方が不安だと思ったら、加熱をしておくと安心でしょう。
> 離乳食アドバイザー講座では、それらをもう少し深堀りし、咀嚼やアレルギーや衛生面について共に考えていきます。
参考文献
1)厚生労働省,大量調理施設衛生管理マニュアル(平成29年6月16日):(閲覧日2023年6月12日)
2)内閣府,教育保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(閲覧日2023年6月12日)
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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