乳児用規格適用食品とは何か
加工食品などのパッケージに「乳児用規格適用」というものがあります。これはどのような意味があるのでしょうか。
赤ちゃんにあげても大丈夫という意味のように見えますが、
乳児用規格適用食品とは、
乳児にあげていい基準値なのでしょうか?
管理栄養士が解説します。
本呼称は2023年6月消費者庁の食品表示の改訂6)がでたことから、2025年7月までに「乳児用規格適用」ではなく、「「食品衛生法に基づき乳児用食品に係る放射性物質の規格が適用される食品」と明記することが望ましいとされています。
この件について、この言葉の意味や定義をみていきましょう。
乳児用規格適用食品 とは
乳児用規格適用食品とは、放射性物質の基準が「乳児用」の区分しているという意味です。
食材の特性や硬さなどによって「赤ちゃんにあげるのにふさわしい食品である」という意味ではなく、
放射性物質の基準のみ、乳児の規格を適用しているということになります。
放射性物質基準値における 乳児用規格適用食品
食品中の放射性物質について、平成24年4月に新しく厚生労働省が基準値を制定しました1)。
食品の国際規格を作成しているコーデックス委員会の指標が年間1ミリシーベルトだったことを受け、
日本も放射性物質を含む食品からの被ばく線量の上限を、
年間5ミリシーベルトから、年間1ミリシーベルトに引き下げました 1)。
これをもとに放射性セシウムの基準値を設定しました。
今までは放射性セシウムの暫定規制値として、
野菜や穀類・・・といったような食材別で設定されていたところを、
新基準値では、「一般食品」「乳児用食品」「牛乳」「飲料水」の4分類としました。
ここでいう「乳児」とは1歳未満を指しています。
<放射性セシウムの新基準値>(単位:ベクレル/㎏)
一般食品 | 乳児用食品 | 牛乳 | 飲料水 | |
基準値 | 100 | 50 | 50 | 10 |
基本的な食品区分の考え方
これらの食品区分は、代替がきかず摂取量が多い「飲料水」、
感受性が大人より高い可能性がある「乳児用食品」、
子どもの摂取量が多いので乳児用食品と同等とも考えられる「牛乳」は、
特別な配慮が必要と考えて基準を厳しくしたものです2)。
その他のものは一般食品としてまとめてあります。
乳児用規格適用とは、この「放射性物質の基準の「乳児用食品」基準に該当する」という意味です。
乳児用規格適用となぜ記載するのか
放射性物質基準の「乳児用食品」に含まれるものは、下記が該当します3)。
① 健康増進法第 26 条第1項の規定に基づく特別用途表示食品のうち「乳児用」に適する旨の表示許可を受けたもの(乳児用調製粉乳)
② 乳児の飲食に供することを目的として販売するもの(消費者が表示内容等により乳児向けの食品であると認識する可能性が高いもの)。
・ 乳幼児を対象とした調製粉乳(フォローアップミルク等の粉ミルクを含む)
・ ベビーフード
・ 乳幼児向け菓子
・ 乳幼児向け飲料(飲用茶に該当する飲料は飲料水の基準を適用)
・ その他(服薬補助ゼリー、栄養食品等)
しかし、これらの食品は、ぱっと見ただけでは消費者が「乳児用」なのかどうかがわからないことがあるので、その食品が「乳児用食品」にあたるのか「一般食品」にあたるのかを判別できるように表記基準ができました。
乳児用規格適用食品に関するよくある質問
児童福祉法等に準ずると、「乳児」とは「1歳未満」となるので、
1歳未満の利用が考えられる食品は基本的に、
放射性物質の基準は「乳児用食品」に適応する必要があります。
ただし、放射性物質が少ない基準であるということだけであり、何歳用という規格ではありません。
硬さや食品特性などが、乳児用にふさわしいかどうかは別問題となります。
赤ちゃんにあげても大丈夫ですか?
粉ミルクやベビーフードのように、赤ちゃんが食べるものであることが明確である商品に関しては、
表記をしなくてもいいので、表記されていないこともあります。
また、1歳半などをターゲットにした食品には「乳児用規格適用食品と同等の管理をしています」と書かれることもあります。
ただ、ベビーフードと記載されている場合の話であり、
赤ちゃん用として売られていたり、何カ月~と表記があっても、
そのものが安全であるかの保障はありません。
乳児用規格適用と書いているから/書いていないから という理由で判断できることは、
「放射性物質の基準」のみです。
保護者の方の判断でお子さんにみあっているかは、赤ちゃんの様子をみてご判断ください。
乳児用の食品であるか見極めるには
乳児用規格適用は、
硬さや内容物として、赤ちゃんに安全であるかは別問題となります。
実際に、乳児用規格適用と書かれたパンで誤嚥事故も起きています。
どんなものであっても、喉につまる可能性はゼロにはなりません。
なので、赤ちゃんにふさわしい、硬さや安全性であるかの基準は難しいものです。
このことから、2023年6月に消費者庁より食品表示の改訂がでました6)。
この改訂では、2025年7月までに「乳児用規格適用」というだけではなく、
「食品衛生法に基づき乳児用食品に係る放射性物質の規格が適用される食品」と明記することが望ましいとされました。
これもこれで、なかなか判別が難しいですよね。
例えば、赤ちゃんにふさわしい食品かどうか知るための
1つ目安になるのが「ベビーフード」と記載してあるか否かかもしれません。
ベビーフード協議会では「ベビーフード自主規格5)」というものを設けており、
硬さや塩分、衛生面などの基準があります。
野菜などの食材や麦茶など、
ベビーフード以外でも安全な食品はとてもたくさんありますが、
いわゆるべビーフードを探している場合は「ベビーフード」と記載がされているかどうか
というのは1つ基準になるかもしれません。
乳児用規格適用食品 という表示の見直し
消費者庁は、
乳児用規格適用食品 のパッケージ変更期間
しかしながら、各食品メーカーなどで食品パッケージなどの包材資材の切替えに一定程度の期間が必要だったりしますので、
消費者庁は、パッケージ切り替えの猶予期間をもうけています。
乳児用規格適用食品と記載しないようにとする、パッケージ変更期間は、令和7年3月末までとしています。
なるべくこの頃までにパッケージが変更できるといいでしょう。
また、消費者の方は、パッケージに変更があることと、食品衛生法に基づき乳児用食品に係る放射性物質の規格が適用される食品」という表記と「乳児用規格適用」が一緒であることを知っておくといいですね。
参考文献
1)厚生労働省「食品中の放射性物質の新たな基準値」リーフレット
2)環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成 30 年度版)」 第 8 章 食品中の放射性物質
3)消費者庁「乳児用食品の規格基準が適用される食品に対する表示について」平成24年1月
6)消費者庁「食品表示基準について」(平成 27 年3月 30 日消食表第 139 号消費者庁次長通知)の一部改正について
著者執筆の記事一覧
-
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
著者の記事
- 2024年11月15日コラムくるみアレルギーが食物アレルギー原因物質2位に!
- 2024年10月12日コラム日本人の食事摂取基準(2025年版)乳幼児での変更点等を解説
- 2024年10月4日コラム野菜ジュースはどんな栄養がある?野菜の代わりになる?管理栄養士解説
- 2024年9月16日コラム子どもの偏食や好き嫌いはどうする?解決策を管理栄養士が解説