【最新】妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針2021
「妊産婦のための食生活指針」が、15年ぶりに改定されました。2006年の策定後、さまざまな状況の変化に伴い、2021年3月31日に発表されました。
今回の改訂で名前は「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」と変わりました。これも大きな変更点です。
この記事では、変更点と知っておきたいポイントについてまとめました。
妊産婦のための食生活指針とは
2006年2月に、『健やか親子21』推進検討会指針において策定されました。
目的として
・妊産婦のための食生活指針の策定
・妊娠期における望ましい体重増加量の提示
の二点があり、「妊産婦のための食事バランスガイド」や「至適体重チャート」などが採用されました。
今回は15年ぶりの改訂となります
食生活指針改定の元となったもの
2019年度「妊産婦のための食生活指針の改定案作成および普及啓発に関する調査研究」(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所、国立健康・栄養研究所)の調査研究事業の報告 1)等を踏まえて、厚生労働省が指針の改定を行いました。
「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」2021年改定のポイント
今回は、15年ぶりの改定です。食生活指導のもととなる食事バランスガイド自体は変更されていませんが、おもな改定ポイントをお伝えします。
名称変更
妊娠期や授乳期についての、食生活の指針となってきた本指針ですが、「妊娠前からの健康なからだづくりや適切な食習慣の形成が重要である」と、なり、2021年の改定では、妊娠前の女性も含むこととして、タイトルに「妊娠前からはじめる」が加わりました。
妊娠前に低体重(やせ)であった女性では、ふつう体型の女性に比べて早産や低出生体重児を出産するリスクが高いことが報告されていることが問題となっているためです。
しっかりと、妊娠前から食生活を整えていきましょう
体重増加目安の変更
妊娠期における望ましい体重増加量について変更になりました。これは、妊娠時期に体重コントロールをしすぎてやせ型妊婦となり、低出生体重児の増加につながる原因の1つになっていることから、少し増加しています。
この元になったのは、2021年3月に発表された日本産科婦人科学会の発表「妊娠中の体重増加指導の目安」2)です。
若い世代の「やせ」は問題ですので、しっかり解決していきたいところです
今回の大きな特徴として、体重増加の目安量が従来よりも引きあがりました。
また、体格区分の肥満を2つにわけ、肥満1度にしっかりとした体重増加指導の目安をもうけました3)4)。
妊娠前の体格 | 体重増加量指導の目安 |
---|---|
低体重(やせ): BMI18.5未満 | 12~15kg |
ふつう:BMI18.5以上25.0未満 | 10~13kg |
肥満(1度) : BMI25.0以上30.0未満 | 7~10kg |
肥満(2度以上) : BMI30.0以上 | 個別対応(上限5㎏までが目安) |
妊産婦のための食生活指針の10項目を策定
若い人や妊娠期のやせを減らし、食生活をととのえるため、わかりやすく10項目をかかげたリーフレットにしました。いままで、食事バランスガイドと至適体重チャートなどがバラバラでしたが、1つにリーフレットになりました。
妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針の10項目
ぜひ妊娠前からしっかりと食事をとることを意識しましょう。として、下記10項目があげられています3)。
1.妊娠前から、バランスのよい食事をしっかりとりましょう
2.「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと
3.不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと
4.「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に
5.乳製品、緑黄色野菜、豆類、小魚などでカルシウムを十分に
6.妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に
7.母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで
8.無理なくからだを動かしましょう
9.たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう
10.お母さんと赤ちゃんのからだと心のゆとりは、周囲のあたたかいサポートから
本指針に基づいた食生活指導のポイントとは
この指針を基づいて食生活を指導する場合には、どうしたらいのか考えてみましょう。3つのポイントに絞ってお伝えします。
ポイント1:妊産婦のための食事バランスガイドを用いる
上記1-10項目のうち、1~5については、妊産婦のための食事バランスガイドを用いておこないましょう。これは以前から変わっていませんので、特に量を変更する必要はありません。
ポイント2:葉酸はサプリメントも上手に活用
上記10項目にはありませんが、厚生労働省がだしたリーフレットには
葉酸について書かれてあり、
「妊娠を希望する女性は緑黄色野菜を積極的に摂取し、サプリメントも上手に活用しながら、しっかり葉酸を摂取しましょう」とあります。
この点は以前からも言われていましたが、
改めてしっかりサプリメントという文字が書かれています。
関連記事:妊活・妊娠期に葉酸が必要な理由と摂り方
ポイント3:BMIを意識しつつ、個人差も
今回はわかりやすいパンフレットを厚生労働省が用意したことは、とても大きいでしょう。
その中にBMIの計算方法と体重増加量指導の目安がかかれているので、その場で相談しながらすすめていくことができます
。1行目に「体重増加には個人差があります」の文字もあります3)4)。
まとめ
国立健康・栄養研究所の近年の発表1)では、
西太平洋地域で 18 歳以上の女性の低体重(やせ)の者の割合が最も高かったのが18.2%のベトナムで、
日本は 9.8%と27か国中 5番目の高さとれています。
これは、先進国と言われる日本においてはかなり大きな問題といえるでしょう。食生活の支援者が、しっかりと若年女性のやせの問題を考えていかねばなりません。
現代の若年女性における健康障害の代表的なものには、
・低体重(やせ)
・体重減少による排卵障害(月経不順)
などがあげられます。
排卵障害は不妊の原因の一つでもありますので、
しっかりと食べることを啓蒙していく必要があるでしょう。
今回、「妊娠前」も組み込まれたことの意味と重要性を把握し、
食事バランスを伝えていきたいものです。
詳細は下記より原文をお読みくださいね
>> 妊娠中と産後の食事について|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
参考文献
1)国立健康・栄養研究所,令和元年度 子ども・子育て支援推進調査研究事業 妊産婦のための食生活指針の改定案作成および啓発に関する調査研究報告書,2020
2)日本産科婦人科学会,妊娠中の体重増加指導の目安,2021
3)厚生労働省.妊娠前からはじめる 妊産婦のための食生活指針,2021(2024年5月子ども家庭庁にWEB移管
4)厚生労働省,妊娠中と産後の食事について,2021
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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