赤ちゃんには 湯冷まし か ミネラルウォーターか(ミルク調乳等)
赤ちゃんが飲むミルクを調乳するときや、ちょっとした水分補給の時、どんな水を選んだらいいのか気になりますよね?
答えは、1つではありませんが、考えたいポイントをいくつかご紹介します。
管理栄養士
ミルクを調乳するときの水は?
日本の会社の粉ミルクは、日本の水(軟水)で調乳するように設計されています。
ミルクを調乳するときの水は軟水を使いましょう。
ペットボトルの水を使う場合は、「軟水」と書かれているものがいいでしょう。
ミルク調乳には軟水
軟水、硬水とは硬度(カルシウムとマグネシウムの含有量)で決まります。厳密には、カルシウムやマグネシウムの量を炭酸カルシウムに換算してあらわします。
硬度は高い水は、少し苦いような味がして、まったくない水は味がありません。
日本の水は軟水で 季節や場所(水系)により異なりますが、概ね50-100mg/L程度と適度
日本では、100㎎/L 未満を軟水と呼びますが、WHO基準では 60mg/L 未満を軟水、60-120mg/L 中硬水 を指しますので、厳密にいえば少し違うこともありますが、細かな硬度を気にしすぎる必要はありません。
ミルク調乳には水道水でも大丈夫
日本の水道水の基準は、水道法第4条に基づく水質基準は、水質基準に関する省令(平成15年5月30日厚生労働省令第101号)により、定められています。*1
水道水は、河川の水を浄水しますが、その際に塩素で消毒されます。
この塩素は殺菌のためで、家庭まで安全が保てるぎりぎりの濃度で管理されています。*2)
水道水は、それらの処理によって安心して飲めるようになっています。
しかし、消毒のために注入している塩素のにおいが気になる人もいるでしょう。
塩素(カルキ)が心配な場合
塩素は生涯通じてとっても問題がない量として水質基準で定められていますので、過度な心配は不要です。
しかし、残留塩素のにおいが気になる場合は、
・蓋を外して沸騰させる
・塩素を抜ける浄水器を利用する
などが効果的でしょう。
トリハロメタンが心配な場合
塩素と水道水内のいろいろなものが結合し、トリハロメタンという成分を生成します。
水道法が定める水質基準ではトリハロメタンの総量が定められているので過度の心配は不要です。
しかし、もし心配になる場合は、10分以上加熱しましょう。文献によって沸騰後5分というもの、*3)4) 10分以上や15分以上としてるもの*があります。
(*参考資料なしは、さまざまなブログや企業HPで大阪水道局として発表されているグラフ)
ミネラルウォーターを赤ちゃんにあげてもいい?種類は?
ペットボトルの水には、ボトルドウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーターがあります*6)。
どれでも構いませんが、日本では、赤ちゃんの水として売られているものは純水のものが多く、硬度がゼロです。このようなものはボトルドウォーターとして販売されています。
品質表示基準として、下記のように定められています
。日本のナチュラルミネラルウォーターであれば軟水がほとんどなので安心ですが、これらによらず、硬度で判断しましょう。
ナチュラルミネラルウォーター
特定の水源から採水された地下水(鉱泉水、鉱水など)でミネラル成分が溶け込んでいる
ミネラルウォーター
何種類かのナチュラルミネラルウォーターを混合したもので、ナチュラルミネラルウォーターのミネラル分を人工的に調整したもの
ボトルドウォーター
飲用できる水 (水道水、蒸留水、河川の表流水などで飲用に適しているもの)で、上記のもの以外のもの。
軟水ならよいということは、他の水でも大丈夫いいということね。
ミルクのミネラルをくずしたくないと考えるなら、純水を選ぶということですね!
軟水ならよいということは、他の水でも大丈夫いいということね。
ミルクのミネラルをくずしたくないと考えるなら、純水を選ぶということですね!
湯冷ましとミネラルウォーターどっちがいい?
どちらがいいという答えはありません。答えはどちらでもOKです。
湯冷ましもミネラルウォーターも、塩素が入っていないのが利点です。
ただ、殺菌の効果がないため、
開封後やコップなどに移したあとは日持ちはできないことを覚えておきましょう。
また、湯冷まし の場合は、上記解説のとおり、
トリハロメタンが気になる人は煮沸時間をあげた方が安心できるかもしれませんね。
調乳の水温
粉ミルクを調乳するときには、「水道水を沸騰させてから冷ました、70℃以上のお湯」*7)を使いましょう。
調乳温度が70℃以上の理由
70℃以上としているのは、サカザキ菌を死滅させるためです。
サカザキ菌が粉ミルクにほとんど入っていることはありませんが、
いくつかかつて症例がでていることからこのようにしています。
海外において、低温で調乳している場合もありますが、
これは粉ミルクの質などではなく、このサカザキ菌のリスクのとらえ方にあります。
そのリスクは海外も日本も同じです。
そのリスクは海外も日本も同じです。
管理栄養士
海外の多くの国では、かつて数例あったものをリスクとして考えるよりも、
調乳の手間を削減することを優先しています。
ミルクの温度は人肌に
最終的には、ミルクを哺乳瓶ごと、水をはったボウルなどで冷やして、
ミルクを人肌程度(36-37℃程度)まで冷ましてあげましょう。
もし、赤ちゃんがミルクを飲まないなと思ったら、
この温度が違うことなどもあるかもしれません。
ミルクの飲み残しや作り置きはあげない
いくら水が安全であっても、
哺乳瓶や乳首、また粉ミルクをいれる段階などで雑菌などが入る可能性があり、
ミルクはその増殖を抑えることができません。
ミルクを飲み残したり、作り置いたものは、絶対にあげないようにしましょう。
湯冷まし(白湯)をあげたい時
ミルクではなく、水分補給として湯冷ましをあげたい時など、「いつまで湯冷ましにすべき?」「水道水はのんでもいい?」とご質問をいただくことがあります。
離乳食を始める前頃までは、湯冷ましにしておくと安全かと思います。哺乳瓶や水道蛇口など、いろいろなリスクを考えると、ちょっとした雑菌なども心配であるためです。
離乳食を始めたら、たまにお出かけなどの際に、そのまま水道水かな?と思う水にしか出会わないこともあるかもしれません。心配であればあげないという選択肢もいいですが、あげてもお腹を壊したりする可能性は低いです。
考えたいのは、どちらかというと、氷などが入っていたりして水温が低くないかも考えてみたいですね。
さいごに
いつまで、水を煮沸したほうがいいのか、ボトルの水やウォーターサーバーの水がいいのか…と、よくご質問をいただきます。
この質問に答えはなく、
環境、経済性、利便性などを、ご家庭によって考えていただけたらと思います。
例えばウォーターサーバーなどはミルクの調乳には便利かもしれませんが、
サーバー内部の衛生管理をしっかり把握できるか、水は安心できるのか(煮沸してでるわけではないので)、
開封してから新鮮であるかなどをよく考えてから契約されることをオススメします。
また、水道水を使っているが心配という場合は、
日本の水質基準があるので、過度の心配はいらないことを伝えてもいいでしょう。
ボトルの水の場合は、開封したら必ず冷蔵庫で保管するなど、
開封後の衛生管理を考えたいものですね。
管理栄養士
参考文献
3)種々の条件下における水道水中の全有機塩素及びトリハロメタン量について (第1報)―煮沸の効果と全国各地のTOX・THMs量―,環境化学,3 巻 (1993) 1 号,85-91,1993
4)煮沸による高度浄水処理水のトリハロメタンおよび全有機ハロゲン(TOX)濃度の変化,環境化学 : journal of environmental chemistry 15(1), 137-144, 2005-
5)水道水中のトリハロメタンの煮沸除去に関する研究,美作女子短期大学紀要65-71,Vol.43,1993
6)厚生労働省資料より「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」
7)厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド 改訂版」,2019
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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