管理栄養士試験の要件緩和とは 栄養士免許は必要?

政府は2023年12月22日、地方分権改革に関する対応方針を閣議決定しました。

ここでは、地方自治体からの提案を踏まえ、
管理栄養士 国家試験等に関するものの要件緩和等について154件の規制改革に取り組み、
2024年の通常国会に関連法案を提出することになりました。

管理栄養士になる要件とは

管理栄養士になるには、下記のような課程が必要です。

つまり、4年制の管理栄養士養成課程もしくは栄養士養成課程のある大学、短期大学、専門学校に入学し、
所定の単位を取得して卒業することが必要です。

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管理栄養士養成課程でも栄養士課程でも、必要な単位が取れて卒業できれば、栄養士免許は取得可能です。

栄養士や管理栄養士は通信教育ではとれない

管理栄養士養成施設も、栄養士養成施設も、夜間や通信教育はありませんので必ず昼間の学校に通う必要があります。

管理栄養士 試験 要件緩和とは

今回(2023年12月22日)に話にあがった管理栄養士試験の要件緩和とは、「令和5年の地方分権改革に関する提案募集」を政府が行い、地方が負担となっている業務改善を報告したことが発端です。

内閣府「令和5年 内閣府と関係府省との間で調整を行う提案についての最終的な調整結果について」の厚生労働省管轄の箇所にある資料P.27をみると、
管理栄養士養成校を卒業する学生は栄養士免許は自動的に得られるにもかかわらず、
管理栄養士国家試験を受験するにあたり
地方自治体が栄養士免許の見なし発行業務をしなければならず
その作業や手数料が負担である
いう旨が意見として出されました。

受験者は、受験のために栄養士免許の申請を行う必要があり、その申請手続や申請手数料の支払いが負担となっており、都道府県(本庁及び保健所)等では、栄養士免許の交付や、「栄養士免許取得(見込)照合書(管理栄養士国家試験の受験願書の添付書類)」の発行を短期間で行わなければならず、負担となっている。

内閣府令和5年の地方分権改革に関する提案募集について、提案に関する関係府省との最終的な調整結果 提案53 新潟県

たしかに、卒業と同時に栄養士免許と、管理栄養士国家試験受験資格が同時に得られる、管理栄養士養成課程においては、
栄養士免許の発行を急ぐ必要はありません。

つまり、管理栄養士養成施設卒業者は、栄養士免許の申請等をせずとも、
卒業をもって簡便に管理栄養士国家試験を受験できるようにすれば、
費用も、都道府県の事務負担も軽減されるというメリットがあるのです。

「卒業者=栄養士」であるため、特別問題がないように思えます。

令和5年内閣府と関係府省との間で調整を行う提案についての最終的な調整結果について

内閣府「内閣府と関係府省との間で調整を行う提案」厚生労働省管轄PDF

栄養士あっての管理栄養士であるという法律より

これに対して、厚生労働省では一次回答として、栄養士法において、

管理栄養士は、栄養士が行う業務であって
複雑又は困難なものを行う適格性を有する者として
登録された栄養士として創設された資格であるため、
一度栄養士免許を取得するほうがよい。としました。

今後、オンラインなどで業務を簡略化することを伝え、
栄養士免許手数料は各都道府県の裁量で低減することができるとしました。

しかしこれがさらに自治体側から下記のような回答がありました。

求められる人材であるため改革を

これを受け、自治体側より、
全国で年間約8,000人の管理栄養士養成施設卒業者が、
約5,000万円の手数料を負担し、栄養士免許の申請手続を行っていることも踏まえると、
受験資格の見直しにより、負担の解消を図るべきと考える。
というさらなる提案がありました。

その後、全国知事会より、
「現在の急激な人口減少や少子高齢化の進展等を踏まえると、
人手の確保や専門人材の育成は急務である。
地域住民の生活にとって重要な業務を担う人材を確保するための制度を整備する必要があり、
提案の実現に向けた積極的な検討を求める。」
とさらなる提案がなされました。

これにより、栄養士法第5条の3が下記のように変わるように動きはじめます。

(5)栄養士法(昭22法245) (ⅲ)管理栄養士国家試験の受験資格(5条の3)については、管理栄養士養成施設を卒業した者(5条の3第4号)は、栄養士として必要な知識及び技能を修得していることを確認することができることから、栄養士でなくても受験を可能とする。

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管理栄養士の栄養士免許について

提案の中で、管理栄養士国家試験の受験資格として
一律に栄養士免許の申請・取得を求めるのではなく、
国家試験に不合格となった者が必要に応じて申請・取得すればよいのではないか。という意見もありました。

今後は、必要に応じて申請・取得になるかもしれません。

本件は、2024年の通常国会に関連法案を提出されることになったそうです。

参考文献 

内閣府「令和5年 内閣府と関係府省との間で調整を行う提案についての最終的な調整結果について」

著者

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている