授乳・離乳の支援ガイド 改定研究会 最終会議:改定ポイント

「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定)」検討会の最終会議に2019年3月8日出席いたしました。

検討委員ではありませんので、本サイトは「非公式」にはなりますが、非公式とした上で、
現時点での状況を報告させていただきます。

今後さらに座長に一任しながら改編がある見込みで、
最後に委員が承認すれば公表というスケジュールになりますので、今回は決定ではありません。

本記事は専門家向けに記載したものであり、
育児をされているお母さんお父さん向けではありません
のでご了承ください。

「授乳・離乳の支援ガイド 2019年改定」の主なポイント

授乳離乳の支援ガイド改定に関する研究会 平成31年

1)授乳・離乳を取り巻く 最新の科学的知見等を踏まえた適切な支援の充実

・食物アレルギーの予防や母乳の利点などの乳幼児の栄養管理などに関する治験を踏まえた支援の在り方や新にに流通する乳児用液体ミルクに関する情報の記載

→災害時なども視野にいれて書き加えられました。紙コップによる授乳なども記載される見込みです。しかしながら現状ではその授乳方法の詳しいことは記載されていません。

2)授乳開始から授乳リズムの確立時期の支援内容の充実

・母親の不安に寄り添いつつ、母子の個別性に応じた支援により、授乳リズムを確立できるよう、子育て世代包括支援センター等を活用した継続的な支援や情報提供の記載。

→子育て世代包括支援センターで、栄養士、助産師なども含めたトータルケアをして、妊産婦などに対して切れ目のない支援を提供する体制の概要も盛り込まれています。

3)食物アレルギー予防に関する支援の充実

・従来のガイドでは参考として記載していたものを、近年の食物アレルギー児の増加や、科学的知見等を踏まえ、アレルゲンとなりうる食品の適切な摂取時期の提示や、医師の診断に基づいた授乳及び離乳の支援について新たな項目として記載

→固ゆで卵の卵黄は離乳初期の後半(6ヶ月頃~)として追記される見込みです。
今まで楠田らによる研究班でも、国立成育の研究発表を受け、卵黄の6ヶ月頃からの摂取というのは検討されていたとおりですが、今まで母子栄養協会では、従来のガイドラインの離乳初期のところに固ゆで卵の卵黄という記述がなかったため、指導を控えていました。
それが公にライドラインに組み込まれました。
また、アドバイザーの講座でもお話しているとおり、アレルギー予防のために、妊娠・授乳中の母親の特定食品の摂取や除去は、予防効果がないという指導をさらに追記されています。

4)妊娠期からの授乳・離乳等に関する情報提供の在り方

妊婦健康診査や両親学級、3-4ヶ月健康診査等の母子保健事業等を活用し、授乳方法や離乳開始時期など、妊娠から離乳完了までの各時期に必要な情報を記載

→「Ⅱ授乳及び離乳の支援」の中での追記事項では、「インターネットから情報を得ることが可能になってきた(中略)が、実際の育児は我が子とかかわりながら様々な方法を繰り返し試し、少しずつ慣れていくことで安心して対応できるようになる(中略)、」とし、「保健医療重視だが母親等の気持ちが感情を受け止め、寄り添いながら適切な支援を行うことにより、母親等は対応方法を理解し実践することができ、少しずつ自信が持てるようになってくる」と加わりました。

母子栄養協会の離乳食アドバイザーでは、「母親に寄り添う大切さ」を最後に印象づけるように説明をしていますが、アドバイザーのかたは今一度あらためて「心得」をよく読み、再確認しておきたいですね。

【関連記事】授乳・離乳の支援ガイド2019年改訂の解説

全体を通しての感想

各委員の先生方は「いろいろな環境の人に寄り添って考えられているか」ということに対して多面的に考えてくださっていると感じました。

例えば「育児負担を減らすためにベビーフードを」→「でもベビーフードは経済的負担も大きいので買えない人への配慮が足りないのでは?」→「フリージングやとりわけを加えてなおかつ 文言を少し変えることで和らぐのでは?」
といったようなことです。

私達指導する側としては、ガイドにこう書いてあるから・・・・と決めつけがちですが、この背景にある各委員の先生方の思いをしっかり受け継ぐ必要があるのではないでしょうか。

授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定)を考える

参考文献

厚生労働省 第3回「授乳・離乳の支援ガイド」改定に関する研究会の資料について
厚生労働省「離乳・授乳の支援ガイド」(2024年5月1日 こども家庭庁にリンク先変更)

著者執筆の記事一覧

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている