果物の1日摂取目安量は200g。その理由と摂取不足問題の改善策

果物の1日摂取量は、大人は200gを目標として推奨されています¹⁾。
なぜ1日200gが適切なのか、その理由を解説していきましょう。また現在の日本人の食生活上の問題点もあわせて考えていきましょう。
厚生労働省での果物摂取の目標値は1日200g
生活習慣病の予防や健康維持のために設定されたもので、厚生労働省の「健康日本21(第三次)」において、果物摂取量の目標値を大人は200g/日と定めています¹⁾。
これは、果物の摂取が高血圧、肥満、2型糖尿病などの生活習慣病のリスク低下と関連しています。果物摂取量が200g/日程度で、 高血圧2)、肥満3)、2型糖尿病4)などの生活習慣病(NCDs)の発症リスク低下との関連が報告されているためです。
そして、冠動脈疾患、脳卒中、心疾患及び全死亡のリスクも低くなることが報告されています。日本人の全死亡に寄与する食事要因として、食塩の過剰摂取、全粒穀類の摂取量の少なさに次いで、果物摂取量の少なさが報告されているのです5)。
これらの研究結果を踏まえ、日本では果物の摂取量を200g/日とすることが推奨されているのです。

現状は日本人の果物摂取量は100g以下!
さらに、日本人における果物摂取量の増加は、食生活改善の重要な課題の1つです。先ほどの国の目標となっている「健康日本21(第3次)」でも果物の摂取量は課題となっています1)6)。
令和6年4月から、健康づくりの指標「健康日本21(第三次)」(厚生労働省)が始まりました。その中で果物については、20歳以上の1日当たりの摂取量の目標値が200gとなりましたが、現状の摂取量は平均100g程度となっており、特に20~50歳代で不足が目立っています。
検討資料によると、果物摂取量は令和元年度は平均値99gでした。これを令和14年度までに200gにすることが、国の目標なのです6)。
毎日くだもの200g運動
このような背景もあり、「毎日くだもの200グラム推進全国協議会」というのがあります。
この協議会は平成30年に「果物のある食生活推進全国協議会」から改称されました。
生産、流通、消費の関係団体並びに農学、医学、栄養学などの有識者から構成されています。
この団体は、「毎日くだもの200グラム運動」をしています7)。
この「毎日くだもの200グラム」という目標、欧米の「5 A DAY」運動(1日5皿分の果物・野菜摂取推奨)など海外のガイドラインも参考にしつつ、日本人の果物摂取量が非常に少ない現状を踏まえて、実現可能な量として設定した経緯があります9)。
しか、欧米のマネだけではなく、先ほどのような実際のエビデンスがあってこその指標です。
糖尿病においての果物の目安
日本糖尿病学会の「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」では、果物は1日1単位(=80kcal)を目安に摂取することが推奨されています。
果物は糖質が多いため、食べ過ぎると血糖値を急上昇させるリスクがあります。
しかし、果物はビタミンや食物繊維などの栄養素が豊富なこともポイントです。
適量であれば血糖コントロールにも役立ちます。
患者さん一人ひとりの病状や血糖値コントロールの状態によって調整が必要ですが、糖尿病であっても「まったく食べない」のではなく、「適量を上手に摂る」ことが大切だとされています。
果物80kcalの目安量10)
- いちご(生) 260g
- りんご(皮つき・生) 150g
- みかん(うんしゅうみかん砂じょう・普通・生) 170g
- バナナ(生) 85g
これらの数字からわかるように、少し雑なカウントではありますが、果物の約100g‐200gは約80kcalともいえます。
200gの果物ってどれくらい?目安と摂り方
200gの果物は、以下のような組み合わせで摂取することができます10):
- みかん Mサイズ 2個
- りんご1/2個(約150g)+いちご6粒(約50g)
- バナナ1本(約100g)+キウイフルーツ1個(約100g)
これらの組み合わせを朝食やおやつに取り入れてみましょう。
少しずつであれば無理なく200gの果物を摂取することができますね。
お手軽レシピ:バナナとキウイのスムージー
たとえば、バナナとキウイと牛乳をミキサーにいれてスムージーして摂るのもいいでしょう。
牛乳と一緒にとるとさらに乳製品も一緒にとることができてお勧めです。
果物を冷凍しておくと、仕上がりがとても冷たくなるので、暑い夏に素早く栄養チャージできます。

お手軽な摂取方法:カットフルーツを利用
スーパーやコンビニのカットフルーツを利用するのもおすすめです。
お菓子などは、余計な糖や脂肪を摂取してしまうことにつながります。そこで、カットフルーツをおやつにしてみるのもいいですね。
下の写真は100gのカットフルーツです。

200gの果物を摂取することで得られる健康効果
果物には、ビタミンC、食物繊維、カリウムなどの栄養素が豊富に含まれています。
それぞれの栄養素は、さまざまな健康効果があります。
しかしながら、果物の利点は、
- 生でも食べられるのでビタミンCがそのまま摂取しやすい
- 味付けなくても食べられるので塩分をとらなくて済む
という点であると筆者は考えます。
塩分なくても、ビタミンCや食物繊維が摂取できる利点

でも1つ考えていただきたいのは、ビタミンCの含有量と、塩分です。
でも1つ考えていただきたいのは、ビタミンCの含有量と、塩分です。

管理栄養士


管理栄養士
野菜は、どうしても調味料が必要になってしまいます。また、調理をすることでビタミンCが水に流れやすくなってしまうのも少し残念です。
果物の場合は、加水調理で損失しがちなビタミンなどを摂取することができます。
また、果物はドレッシングや調味料なくても食べることができます。
摂りすぎが心配な塩分を加えなくても食べることができるのは最大のメリットでしょう。
果物の摂りすぎに注意!適量を守る重要性
果物は健康に良いとされていますが、摂りすぎには注意が必要です。
果物に含まれる果糖は、過剰に摂取すると中性脂肪の増加や血糖値の上昇を引き起こす可能性があります。
特に、ジュースやドライフルーツ、缶詰などは糖分が多く含まれているため、摂取量に注意が必要です。
食事バランスガイドに示されているように、穀類・肉魚類(主菜)・野菜類(副菜)・果物・牛乳などをバランスよくとる食事を心がけましょう11)。
果物の摂取に関するよくある質問
あなた:-
果物ジュースやスムージーでも大丈夫?
ドロッとしているスムージーは、果物の栄養を手軽に摂取できる方法です。しかし、サラサラしている野菜ジュースは、食物繊維が失われている場合が多く、糖分が多く含まれていることがあるため、摂取量に注意が必要です。ドロッとして食物繊維を濾してないものを選びましょう。
-
ドライフルーツや缶詰はどう扱うべき?
ドライフルーツや缶詰は、保存性が高く便利ですが、糖分が多く含まれていることがあります。特に、シロップ漬けの缶詰や加糖されたドライフルーツは、糖分の摂取量が増える原因となるため、注意が必要です。無糖の製品を選ぶか、適量を守って摂取しましょう
-
果物を食べるのにおすすめの時間帯は?
果物を摂取してから活動する時間帯がいいので、朝や昼、おやつの時間がおすすめです。果糖は消化吸収が早く、エネルギーに変わりやすいため、活動量の多い時間帯に摂取することで効果的です。
今日から実践!200gの果物で健康生活を始めませんか?
果物を1日200g摂取することで、生活習慣病の予防や健康維持に役立ちます。
無理なく続けるためには、以下のポイントを意識しましょう:
- 朝食やおやつに100gずつ取り入れる
- スムージーにして摂る
日々の食生活に果物を200gを目安にとり入れて、健康的な生活を目指しましょう!
【関連記事】乳幼児期に気を付けたい果物:保育園給食のガイドライン
参考文献
- 厚生労働省.健康日本21(第三次)推進のための説明資料. (URL)(2025年5月20日 閲覧)
- Schwingshackl L et al.. Food Groups and Risk of Hypertension: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Studies . Adv Nutr. 2017年11月;8(6):793-803 (URL)
- Schlesinger S. Neuenschwander M, Schwedhelm C et al. Food Groups and Risk of Overweight, Obesity, and Weight Gain: A Systematic Review and Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Studies. Adv Nutr. 2019年3月;10(2):205-218 (URL)
- Afshin, Ashkan et al.. Health effects of dietary risks in 195 countries, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017. The Lancet. 2019年5月;393(10184):1958-1972 (URL)
- 厚生労働省.[資料2]健康日本21(第三次)について~栄養・食生活関連を中心に~,令和5年度都道府県等栄養施策担当者会議資料 (URL)(2025年5月20日 閲覧)
- 農林水産省.毎日くだもの200グラム運動(ホーム〉農産〉園芸作物(野菜・果樹・花き)〉果樹のページ「毎日くだもの200グラム!」 (URL)(2025年5月20日 閲覧)
- 日本糖尿病学会 .食品交換表 第7版
- 毎日くだもの200グラム推進全国協議会.毎日くだもの200グラム運動指針 9訂版 (URL)(2025年5月20日 閲覧)
- 文部科学省.日本食品標準成分表2020年版(八訂) (URL)(2025年5月20日 閲覧)
- 農林水産省.食事バランスガイド (URL)(2025年5月20日 閲覧)
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
記事
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