亜鉛が豊富な食べ物と食事バランスの重要性
亜鉛は、鉄やカルシウムなどと同様に、身体には欠かせないミネラルの1つです。
亜鉛は、田作り、黒豆、くわい、金時にんじんなどお正月によく食べるような食品に多く含まれています。
他にはどのような食品に多く含まれているのか、必要な人はどのような人なのか、管理栄養士が解説します。
亜鉛の大切さ
亜鉛は、体内に約2000㎎ ほど存在する必須ミネラルの1つです。
おもに、骨格筋、骨、皮膚 などに存在します。
亜鉛は、体内で合成することができない、必須ミネラルのため、食事から摂取する必要があります。
特に亜鉛が必要な人は?
亜鉛が少なくなる時は、
腸管粘膜の脱落、
膵液や胆汁の分泌などに伴う糞便への排泄、
発汗と皮膚の脱落、
精液や月経血への逸脱
とされています1)。
妊娠期間中の血清中亜鉛濃度は、初期72.7 µg/dL、中期63.8 µg/dL、後期62.1 µg/dL、出産時63.3 µg/dLとなり、
妊娠期間が進むにつれて低下することがわかっているので、妊娠中もしっかり摂る必要があります。
特に亜鉛が必要な人は、
肝臓病、糖尿病、腎臓病を持つ人や、
激しいスポーツで発汗がたくさんある人、
妊婦です
膵液や胆汁の分泌に伴って、亜鉛が糞便に排出されたり、過度な運動で汗から排出してしまうことがあるためです。
他にも、骨や関節、皮膚に異常がある場合には、必要なこともあります。
医師に相談してみるといいでしょう。
欠乏したらどうなる?亜鉛欠乏症状
亜鉛が欠乏すると、皮膚炎、味覚障害、慢性下痢などがみられたり、
免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害などがみられるといわれています1)。
しかしながら、日本では、食事で亜鉛が足りなくなることはほとんどありません1)。
例えば、亜鉛が添加されていない高カロリー輸液や、経腸栄養剤を使った場合など、
とても特殊な場合に報告されています。
多くの輸液にはこのために亜鉛が添加されています。
菜食主義や過度なダイエットでは注意が必要
菜食主義や偏ったダイエットにより、
全く肉類魚類を食べないという場合は、
亜鉛を含むものを食べるように心がけましょう。
管理栄養士
肉魚類と野菜類、穀類のバランスが大切なので、
何か食べられているかな?と食品群で考えてみましょう
亜鉛の必要量
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、
亜鉛を1日で摂りたい量(推奨量)は、18~74歳の男性で11mg、女性で8mgとなります。
妊娠中は+2mg、授乳中は+4mgの摂取が推奨されています。
亜鉛を多く含む食品
いろいろなものに亜鉛は含まれていますので、豊富という書き方は難しいのですが、
筆者が食べやすいと思うもの、特筆すべきものを列記します。
お正月によくみる、田作り、黒豆、くわい、金時にんじんなどには亜鉛が多く含まれています。
普段から亜鉛をしっかり摂りたいと思ったら、
特に肉類や魚類が摂りやすいでしょう。
以下、すべて100gあたりの亜鉛の量を記します2)。(参照:日本食品標準成分表2020年版(八訂))
肉・魚・豆・卵類(100gあたり)
肉類
牛もも肉(赤身)4.8㎎
豚かた肉(赤身)3.1㎎
魚介類
牡蠣(生)14㎎
田作り(かたくちいわし)7.9㎎
かつおフレーク(油漬缶)0.5㎎
【関連レシピ】電子レンジで田作り! 葉酸も摂れるのでおやつにも
豆類
黒大豆(ゆで)3.9㎎
納豆 1.9㎎
きな粉 4.1㎎*
(*きな粉は100gも食べるものではないので、単位に注意)
卵類
鶏卵 1.1㎎
乳製品
牛乳 0.4㎎
穀類(100gあたり)
そば(生)1㎎
そば(ゆで)0.4㎎*
*そばを茹でたら減るという意味ではなく、生100gと茹で100gの重量の違いです。食べるときに100g計る場合は(ゆで)になります
全粒粉パン 0.4㎎
野菜類(100gあたり)
くわい(ゆで) 2.1㎎
そらまめ(ゆで) 1.9㎎
枝豆(ゆで) 1.3㎎
きんときにんじん 0.9㎎
ほうれんそう(ゆで)0.7㎎
ブロッコリー(ゆで)0.4㎎
めかぶわかめ(生) 0.2㎎
ひじき(ゆで) 0.1㎎
亜鉛の吸収を阻害するもの
亜鉛とともに、一緒に食べるもので、吸収率が変わることがあります。
・フィチン酸
吸収を阻害するものとして、フィチン酸があげられます。
フィチン酸とは、米や小麦などの穀類の胚芽部分や、
豆類におもに含まれるもので、鉄なども阻害するといわれています。
管理栄養士
とはいえ、だからといって穀類は意味がないというわけではありません。
栄養素は少しずついろいろなものから微量ずつ摂ることが大切です。
亜鉛の体内吸収率
亜鉛は、必要に応じて腸管に吸収され、その吸収率は約30%とされています1)が、これは摂取量によって変動します。
先ほどのホメオスタシスが働くため、食べる量や必要に応じて、この吸収率は変化するということです。
管理栄養士
例えば体内で必要であると思えば吸収率はあがり、
必要ないと考えれば吸収率は下がります。
亜鉛の摂取とホメオスタシス
私たちの身体は、ホメオスタシス(恒常性)という仕組みをもっています。
ホメオスタシスとは、
からだの中や外の環境因子の変化に関わらず、生理機能が一定に保たれる性質のことです。
管理栄養士
ヒトは、食べたものや外的環境に、毎回すぐに変化してしまうことがないように、
身体はある程度の一定を保てるようにできているんですね。
亜鉛なども同様で、ホメオスタシスのはたらきで一定を保とうとしています。
亜鉛や鉄などのミネラルを、体内に吸収させるには、細胞膜を通過する必要があります。
しかし、亜鉛や鉄などの金属ミネラルイオンは、そのままでは通過できません。
細胞膜を通り抜けるための、「トランスポーター」と呼ばれるたんぱく質が必要です。
亜鉛の恒常性は、この、亜鉛トランスポーターによる、亜鉛の細胞内外への輸送と
メタロチオネインによる貯蔵によって維持されています。
まとめ:食事バランスを基礎とし、次に考えるのが栄養素
亜鉛は大切なミネラルです。
しかし、からだにはホメオスタシスという機能があるので、1つ1つの栄養素を追い求めるような心配は不要です。
あくまでも食事バランスをしっかりとることが基本となります。
基本的に、穀類、肉魚卵類、野菜類をバランスよく食べるようにしましょう。
特に、肉魚卵類には、亜鉛は多く含まれています。これらを摂ることでタンパク質も摂取できます。
菜食主義(ベジタリアン)の場合には、大豆製品をしっかり摂ったり、雑穀などを摂るといいでしょう。
ハードな運動をしている人、妊婦さん、授乳婦さんは、肉・魚類をとってくださいね。
参考文献
著者執筆の記事一覧
-
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
著者の記事
- 2024年11月15日コラムくるみアレルギーが食物アレルギー原因物質2位に!
- 2024年10月12日コラム日本人の食事摂取基準(2025年版)乳幼児での変更点等を解説
- 2024年10月4日コラム野菜ジュースはどんな栄養がある?野菜の代わりになる?管理栄養士解説
- 2024年9月16日コラム子どもの偏食や好き嫌いはどうする?解決策を管理栄養士が解説