離乳食の進め方をチャットGPTに聞いてみる:その正誤
離乳食を指導したい、離乳食のお教室を開きたいと思ったら必要なことはあるでしょうか。
子育て中の方が、離乳食について悩んだ時、または専門家の方が離乳食についてどう伝えたらいいか悩んだ時、今話題のチャットGPTであればよい返答が得られるのでしょうか。
チャットGPTとは
チャットGPTは、OpenAIが開発した自然言語処理のための人工知能技術で、大規模なデータセットから学習して人間のように文章を生成できるシステムで、2023年現在、話題になっています。
チャットGPTを上手に利用するために
私たちは、新しい文明の利器を否定するのではなく、共に歩むことができるかを検討することが大切と考えます。
実際にこれからインターネットの記事などはチャットGPTを使ったものが乱立することも考えられます。
チャットGPTを上手に利用するためには、読み手や書き手がどのようなことに気を付けたらいいのかを考えていくことが求められるでしょう。
離乳食の進め方はチャットGPTで記事になるか専門家が検証
今回は、この話題のチャットGPTにいろいろなことを聞いてみました。あくまでも2023年4月現在のことなので、今後変わっていくでしょう。
あえて、現時点での答えを引用し、その正誤をともに考えていきましょう。
Q.離乳食のやり方を人に伝える上で大切なことは?
「Q.離乳食のやり方を人に伝える時、何が大切?」と、チャットGPTで聞いたところ、「離乳食のやり方を人に伝える際には、以下の点が重要だと考えられます。」として、下記1-4について返答がありました。
その答えについて筆者が思うところを書き足しながらお話していきたいと思います。
1.離乳食の始め方と進め方
離乳食は、赤ちゃんの発育や健康にとって非常に重要なものです。そのため、離乳食の始め方や進め方について、正しい知識を持っていることが大切です。初めての離乳食は、赤ちゃんの体調や反応に合わせて、徐々に進めることが望ましいです。
チャットGPTの回答Q.「離乳食のやり方を伝える時、何が大切だと思う?」, 1.離乳食の始め方と進め方(2023.4.11)
感想
食事は確かに重要ではありますが、始め方や進め方について正しい知識を持っていることが大切と明記をしてしまうと、実際に離乳食について調べている人に対して、「何が正しいのか?」という不安訴求になりかねませんので、書き方には注意が必要かと思いましたが、おおむね同意します。しかしながら、チャットGPTがいうところの正しい知識というのは、何をもって正しいのかも考えてみたいものです。
また、初めての離乳食は体調や反応にあわせて徐々に進めることは、たしかに大切です。
加えて、何かを伝えるなら、「始め方とすすめ方には、決まりはないこと」も伝えたいものです。
厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド」*1はあくまでも目安であることを強調しており、「子どもの食欲や成長・発達の状況に応じて調整する」ということがとても強調されています。
「初めての離乳食だからコレを食べる」「この食材を何g食べないとダメ」などということはなく、あくまでも赤ちゃんの反応にあわせていいということを強調した追記ができるといいでしょう。
2.食材の選び方と調理法
赤ちゃんの離乳食には、栄養価が高く消化しやすい食材を選ぶことが大切です。また、食材の調理法についても、赤ちゃんの消化機能に合わせた方法を選ぶことが重要です。
チャットGPTの回答Q.「離乳食のやり方を伝える時、何が大切だと思う?」, 2食材の選び方と調理法(2023.4.11)
感想
たしかに、栄養価が低い水のようなものよりも栄養価が高いほうがいいといえるでしょう。しかしながら栄養価が高いというのは、エネルギー(カロリー)なのか、ビタミンやミネラルなのか・・・どのようなものなのかは言葉の定義が難し単語です。
また、栄養価が高いということと消化しやすいというところと相反する場合もあり、このような表記だけだと、「では何を食べたらいいの?」ということになります。食材の選び方と調理法は赤ちゃんの口腔にみあった調理法もあげられるでしょう。
日本で離乳食支援のガイドとして利用している厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」では、調理方法の項目について「離乳の進行に応じて、食べやすく調理したものを与える。子どもは細菌への抵抗力が弱いので、調理を行う際には衛生面に十分に配慮する。 食品は、子どもが口の中で押しつぶせるように十分な固さになるよう加熱調理をする」とあります。本来は栄養価が高いというところや消化だけではなく、衛生面に気を付けたり赤ちゃんの口の中で処理できるように配慮した調理方法が必要でしょう。
3.安全性についての注意点
離乳食は、赤ちゃんが初めて口にする食べ物です。そのため、安全性についての注意点をしっかりと伝えることが必要です。
チャットGPTの回答Q.「離乳食のやり方を伝える時、何が大切だと思う?」, 3安全性についての注意点(2023.4.11)
例えば、食材の切り方や調理の仕方、食事中の赤ちゃんの姿勢や飲み方などについて注意を促すことが大切です。
感想
上記の調理法との関係も多いようですが、なんのための「安全性」なのかが記載してません。
離乳食について安全性とは衛生面、喉につまらせることがないか、アレルギーのあるものを間違えて食べたりしないか などになりますが、
この回答には、喉につまってしまう可能性についてや、アレルギーについては記載がありません。これは切り方や調理の仕方、姿勢などにはたしかに注意は必要です。
4.赤ちゃんの反応に合わせた対応方法
赤ちゃんは、食事に対して個人差があります。そのため、赤ちゃんの反応に合わせた対応方法を知っておくことが大切です。例えば、嫌がる赤ちゃんに対しては、食材の種類や調理法を変えるなどして、食べやすいものを提供するようにすることが望ましいです。
チャットGPTの回答Q.「離乳食のやり方を伝える時、何が大切だと思う?」, 4.赤ちゃんの反応に合わせた対応方法(2023.4.11)
感想
これはとてもいい文章です。食欲や食べ方などには大きな個人差がありますので、赤ちゃんの反応をみながら対応方法を考えていくことが必要です。
たとえば、やわらかいおかゆは食べないけれど、硬いごはんならたべるということもあります。
その子にあった「食べやすいもの」を考えることが望ましいでしょう。
あわせて読みたい:▶ 昔と比べてどう違う?昭和の育児書にみる離乳食の考え方
チャットGPTに足りない点
チャットGPTはあながち間違えとはいえないような点を、要点をすっきりまとめてきたような印象を受けます。
しかしながら、学会の見解やガイドラインなどを引用や参照していない点も気になります。
また、これらを踏まえなかったとしても、追加したい点が2点ほどありました。
追加したい点1:保護者の気持ちに寄り添う
保護者は、自分の大切な子どもの健康や成長に関することについて、不安や疑問を抱くことがあるものですよね。
それゆえ、保護者の気持ちや疑問にも十分に配慮することが重要です。
そのため、保護者の気持ちに寄り添い、納得して実践してもらえるように丁寧に説明する必要があるのです。
例えば、保護者が食材の選び方や調理方法について疑問を持っている場合には、なぜそのような方法が望ましいのかを、分かりやすく説明できるといいですよね。
また、保護者が赤ちゃんの反応について心配している場合には、その対応方法についても詳しく説明することが大切です。保護者と共に赤ちゃんの健康や成長をサポートすることが、離乳食の成功につながると考えられます。
追加したい点2:乳児の発達発育に注目する
赤ちゃんが食べない場合の多くは、病気などではなく、お腹がいっぱいであったり、食感などに違和感があったりというものがあります。
離乳食では、発達発育をしっかりみて、成長曲線に沿って大きくなっているかどうかに注目することが大切です。
ときに、赤ちゃんの食べる量を調整してしまったり、授乳量や時間を決めすぎていて赤ちゃんに必要な量をあげられていないような印象をうけることがあります。
母子健康手帳の発育曲線をしっかりみてアドバイスすることが離乳食では大切です。
まとめ
チャットGPTは私たちの生活を大きく飛躍させる便利なツールといえるでしょう。
しかしながら情報の正確性においては、2023年4月14日現在ではまだ疑問が残ります。
このあとさらに質問を続けていけば、とてもよいツールになるかもしれません。
このようなものと上手につきあっていくためには、情報の確からしさを考えることが大切です。
いかなる記事を読むときも「誰が」「どのように」いっているのか確認していく習慣がつくといいですね。
あわせて読みたい:▶ 食の情報で不安になったら考えたいヘルスリテラシー
参考文献
*1 厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」(2023年4月12日閲覧)
著者執筆の記事一覧
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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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