妊娠中、プロテインを飲んでも大丈夫?

妊娠中にプロテインを飲んだほうがいいのですか?というご質問を受けることがあります。まず「飲んだ方がいい」の答えはNoです。妊娠中はいろいろ体調管理や栄養に不安が出やすい時期でもありますが、大切なのは「食事から栄養をとること」と「無理してストレスを貯めたりしないこと」です。

2021年3月「妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針」では「妊娠前から、バランスのよい食事をしっかりとりましょう」と「「主菜」を組み合わせてたんぱく質を十分に」といわれているだけで、特にタンパク質を多くとるようには言われていません1)

ネットの情報は、全員にあてはまるとは限りません。しっかりと理解し、食事から摂ることを中心に考えたいものです。

関連記事:【最新】妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針2021(母子栄養協会)

妊娠中にタンパク質は必要?

妊娠中は、お腹の中の赤ちゃんの発育や、それを守る母体のために、必要な栄養素量が非妊娠時よりも多く2)なります。タンパク質は特別に多く必要というわけではありません。その理由とあわせてみていきましょう。

妊娠期に必要なエネルギー(カロリー)

必要なエネルギー(カロリー)は妊娠後期には、非妊娠時よりも+450Kcalも多く摂る必要があります(表1)。これは、妊娠後期は妊娠初期と同様、身体活動レベル(運動量)は減るので、エネルギーは少なくてもいいように思えますが、基礎代謝量がとても大きく増加するため、より多くのカロリーを必要するため、この程度がいいのではないかと、日本人の食事摂取基準2)では言われています。

表1:推定エネルギー必要量 、妊娠時の付加量 (18-49才女性 1日あたり推奨量と妊娠時の付加量)

非妊娠時2,000~2,050kcal
妊娠初期50
妊娠中期250
妊娠後期450
授乳婦350
日本人の食事摂取基準2021年 より

また、これは妊婦の最終体重増加量を11kgと設定していることも覚えておけるといいですね。
基本的に妊婦のヤセを防ぎ、適切な体重増加は大切となります。

管理栄養士

妊娠時のヤセを防ぐことは、とても大切です。動いている量や体型などによっても、必要な栄養量は異なります。カロリーやタンパク質の数値にとらわれるのではなく、体重増加量をみましょう。

タンパク質も非妊娠時より多くの量が必要となります。

妊産婦のための食生活指針

妊婦が摂りたいタンパク質の量

このように、妊娠中は非妊娠時よりも多くのエネルギー(カロリー)が必要です。これにともなって、エネルギーの元になる「糖質」「タンパク質」「脂質」もそれぞれ多く摂ることになります。
18〜49歳の女性における1日当たりのタンパク質推奨量は50gですが、妊娠中期は5g、妊娠後期には25gの付加量が設定されています。

大変!それでは足したら、妊娠後期には約75gものタンパク質が必要ということになりますよね?これは、通常時の1.5倍?すごい量ですよね。どうやってとったらいいですか?

管理栄養士

いえいえ。タンパク質はエネルギーに対して妊娠後期は15~20%と少し多めにはなっていますが、妊娠中期後期は13~20%で、このエネルギーに対する%は非妊娠期も同じです。特別にタンパク質を多く摂ろうと思わなくても大丈夫です

なぜタンパク質が必要?

タンパク質は赤ちゃんの身体を作るために欠かせません。のて、タンパク質を全然摂ることが出来ないという場合には、注意が必要です。

穀類(ごはんなど)と野菜に加えて、肉、魚、豆類などはとっていきましょう。

糖質や脂質は控えて、タンパク質を多めにとるべき?

タンパク質は、たしかに体をつくるほうに働きますが、それは、糖質や脂質でエネルギーがしっかり補えていた場合の話です。タンパク質はエネルギーが足りない場合には、エネルギーにまわります。

タンパク質だけを多くとるのではなく、糖質や脂質とあわせたバランスで摂ることが大切で、これがエネルギー比率でいうと、13-20%となります。計算しなくてもわかる目安としては、だいたい「和定食や給食のようなバランス」と思っておくといいでしょう。

日本人の食事摂取基準2020年

妊娠中にプロテインを飲んでも大丈夫?

では、そのタンパク質をプロテインで補給しても良いのでしょうか?

プロテインとは、タンパク質を多く含むサプリメントのことをさします。主に粉末状になっていて、お湯や牛乳などに溶かして飲むタイプが多いでしょう。

妊娠中にプロテインを飲んでも大丈夫なのか考えてみましょう。

プロテインを飲む必要はある?

どうしてもプロテインをとらなければいけない理由はなんでしょうか? 
食事が喉を通らないなどの場合は、牛乳、豆乳などはいかがでしょう。食事に含まれているタンパク質は下記のとおりとなります。
<タンパク質量>

食材タンパク質量(g)
牛乳 コップ1杯(200ml)6.6
豆乳 コップ1杯(200ml)7.2
豆腐 3連1個(120g)6.4
牛肉肩ロース 1人前(100g)16.5
プロテインの例 1杯(200ml)10.0
日本食品成分表(八訂)2020年

例えば、

・どうしても豆乳や牛乳が飲めず、肉類や魚類、豆類などが食べられない何らかの事情がある場合
・今まで常飲していて、精神的にどうしてもプロテインを飲まないといられない場合
・震災などで新鮮なタンパク質が手に入りにくい状況の場合

などの事情があれば、飲んでもいいかもしれません。ただし、飲む場合は下記のような注意が必要です。

牛乳 プロテイン 妊婦 妊娠中 NG 理由

妊婦がプロテインを飲む時の注意点

たしかに、妊娠後期には、必要なタンパク質の量があがるのですが、あくまでも食事がとれていたら、タンパク質を心配する必要は全くありません。なので基本的にはプロテインは必要なく、食事でとっていきます。

それでもなお、どうしてもプロテインを飲みたいという場合には、4つの注意をお願いします。

注意1:基本的に食事から摂ることを忘れずに

どうしてもプロテインをとらなければいけない理由はなんでしょうか? 食事が喉を通らないなどの場合は、牛乳、豆乳などはいかがでしょう。
何らかのものをサプリメントで補ってしまう場合、それで摂れているから食材は摂らなくていいということになってしまうと、食材に含まれている他の栄養素を摂れなくなってしまうことが想定されます。

あくまでも食事バランスガイドを基にして考えていきましょう。

妊娠 食事バランス
妊娠前から始める食生活指針,2021 より「妊産婦のための食事バランスガイド」1)

注意2:大豆プロテインで考えたいこと

プロテインには、ホエイプロテイン、カゼインプロテイン、大豆プロテインなどがあります。
中でも、大豆プロテイン(ソイプロテイン)は大豆由来のタンパク質です。これは内閣府 食品安全委員会において、下記のように書かれています。

妊娠中の方が、通常の食生活に上乗せして、サプリメントなどでこの物質を摂取することは推奨されていません。

内閣府 食品安全委員会「お母さんになるあなたへ」平成23年

このことから、大豆イソフラボンの安全性が未確定であり現在のところ、大豆イソフラボンとして売られているサプリメントを妊婦が摂取することは推奨されていません。大豆由来のタンパク質を含むプロテインに、どれだけのイソフラボンが入っているかはわかりませんが、心配な方は避ける方が安心でしょう。

食事から、大豆や豆腐類を摂る分くらいであれば心配は全く要りません。むしろ豆製品をたくさんとる利点も数多く報告されています。
あくまでも「通常の食生活に上乗せしてサプリメントで摂る」ことは推奨できない としていますので、大豆イソフラボンが豊富に含まれているなどのキャッチコピーのあるものは、控えておきましょう

注意3:必ずかかりつけの医師にご相談を

今まで、ダイエットやスポーツのためにプロテインをとっていた人も、からだがいろいろ妊娠時とは異なりますので、必ず、妊婦検診の時にかかりつけの産婦人科の医師(もしくは持病などがあればそちらの医師にも)ご相談ください。

注意4:適正量を超えないように

タンパク質を取りたいと、適正量を超えてたくさん摂取すると、タンパク質の過剰摂取も心配です。現在のところ過剰摂取に伴う危険性はありませんが、エネルギー比率で30%を超えると腎臓への負担も心配されるほか、タンパク質に偏ることによってほかの野菜類などからとれる食物繊維やビタミン類なども気になります。飲む場合は適正量を超えないようにしましょう。

まとめ

妊婦さんがプロテインを飲んでもいいのか、薦められないのかは、とる量やとる理由などによって答えは変わります。

一概に否定したり、推奨したりはできないものでしょう。

専門家は、「プロテインを摂りたいのね?お食事食べられていない?」などと質問をしてみることで、妊婦さんのプロテインを飲みたい理由を探った後、その辛い気持ちや不安な気持ちを察したうえで妊婦さんの目線になって一緒に考えてくださいね。

参考文献

1)厚生労働省,妊娠前からはじめる食生活指針ガイドライン,2021年
2) 厚生労働省,日本人の食事摂取基準 2020年版
3)日本食品標準成分表2020年版(八訂)
4) 食品安全委員会「お母さんになるあなたへ」令和2年更新

プロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
All About 「離乳食」「幼児食」「妊娠中の食事」ガイド

女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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