ひきわり納豆と普通の納豆|栄養の違いはある?

「納豆は体に良いといわれていますが、ひきわりと普通の粒納豆で栄養に違いはあるのでしょうか?
結論から言うと、少し違いはあるけれど、どちらも優秀な食品。好きな方を食べてOKです。
さて、なぜこのような結果になるのか、管理栄養士・母子栄養指導士がわかりやすく解説しますね。
納豆の成分の比較
食品成分表を元に、「普通納豆(糸引き納豆):粒納豆」と「ひきわり納豆」を調べました。すべてのデータではありませんが、特筆すべきは下記の通りです1)。
成分(100gあたり) | 普通納豆 (糸引き:粒) | ひきわり納豆 | 違いのポイント |
---|---|---|---|
エネルギー | 200 kcal | 200 kcal | ほぼ同じ |
たんぱく質 | 16.5 g | 16.6 g | ほぼ同じ |
脂質 | 10.0g | 10.0 g | ほぼ同じ |
炭水化物 | 12.1 g | 10.15 g | 食物繊維も含むため差がある ↓ |
食物繊維総量 | 9.5 g | 5.9 g | 普通納豆が 61.0% 多い |
カルシウム | 91 mg | 59 mg | 普通納豆が 54.2% 多い |
マグネシウム | 100 mg | 88 mg | 普通納豆が13.6% 多い |
鉄 | 3.3 mg | 2.6 mg | 普通納豆が26.9% 多い |
亜鉛 | 1.9 mg | 1.3 mg | 普通納豆が46.2% 多い |
葉酸 | 130 μg | 110 μg | 普通納豆が18.2% 多い |
ビオチン | 18.2 μg | 0 μg | 普通納豆に含まれる(ひきわりは0) |
ビタミンK | 870 µg | 930 µg | ひきわりが 6.9% 多い |
パントテン酸 | 3.63 mg | 4.28 mg | ひきわりが 17.9% 多い |
普通の納豆とひきわり納豆の栄養の違いのまとめ
- カロリー、たんぱく質、脂質→ほぼ同じ
- 食物繊維、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、葉酸→普通の納豆のほうが多い
- ビタミンK・パントテン酸 → ひきわり納豆の方が多い
普通の納豆のほうが栄養が豊富ですね!
でもビタミンKをとるならひきわり納豆がいいんですね!使いわけてみます!
普通の納豆のほうが栄養が豊富ですね!
でもビタミンKをとるならひきわり納豆がいいんですね!使いわけてみます!

たとえば食に旬があったりして「今の季節はこれがおいしいよね」くらいの食を楽しむためのネタくらいに考えてくださいね。
なぜそのようになるのかも理解すると、違いがあまり気にならなくなりますし、
ちょっとした食ネタとしてさらに楽しめますので一緒に学習しましょう!
たとえば食に旬があったりして「今の季節はこれがおいしいよね」くらいの食を楽しむためのネタくらいに考えてくださいね。
なぜそのようになるのかも理解すると、違いがあまり気にならなくなりますし、
ちょっとした食ネタとしてさらに楽しめますので一緒に学習しましょう!

管理栄養士
同じ納豆なのに、なぜ栄養が違うのか教えてください。
同じ納豆なのに、なぜ栄養が違うのか教えてください。


粒納豆とひきわりで栄養が違うのはなぜ? 違いの理由
栄養の違いの大きな理由は、粒納豆(普通納豆)には皮がありますが、ひきわり納豆は皮がない。という点に集約されます。
納豆の工程の違い
ひきわり納豆と普通納豆の主な違いは、大豆の処理方法にあります。
普通納豆(粒納豆) | 浸水させて蒸した大豆をそのまま発酵 |
ひきわり納豆 | 浸水させた大豆を細かく砕き、皮を取り除いてから蒸して、発酵 |
このため、ひきわり納豆のほうが、皮がなく、やわらかく仕上がるのが特徴です。

1つは「分析の個体差」 もう1つは「カット後の水洗いなどの工程差」です
1つは「分析の個体差」 もう1つは「カット後の水洗いなどの工程差」です

大豆の皮の栄養
大豆の皮「種皮」には、食物繊維のほか、ポリフェノール等が多くが含まれます。(黒大豆が典型的)
しかし、実は鉄やカルシウムは皮だけではなく全体に含まれています。
ですので、皮がないから、カルシウムや鉄が少なくなるというわけではないのです。
実際に、日本食品成分表で「全粒きな粉」と「脱皮きな粉 」で比較すると、カルシウムにはは大きな差がでていません1)(下表)。
しかし、鉄は皮ありのほうが明らかに多いという結果になっています。このことから、鉄は皮に多く含まれる可能性もありそうです。
成分(100gあたり) | 全粒きな粉 | きな粉(皮なし) | 違いのポイント |
---|---|---|---|
エネルギー | 451kcal | 456 kcal | |
食物繊維総量 | 18.1g | 15.3 g | 皮ありが 18.3% 多い |
カルシウム | 190 mg | 180 mg | ほぼ同じ |
鉄 | 8.0 mg | 6.2 mg | 皮ありが 29.0% 多い |
日本食品標準成分表(八訂)「黄大豆」
測定サンプルと製品差?
食品成分表の「普通納豆」「ひきわり納豆」の数値は、実際の市販品を複数分析して平均したものなのです。なので、商品それぞれデータは違うことを知っておくとさらに面白いでしょう。
例えば、大豆が「国産」「アメリカ産」「中国産」「ブラジル産」によっても異なります。
カルシウムは普通納豆では91mg、ひきわり納豆では59 mgですが、乾燥大豆の原料をみてえみましょう。
納豆と同じ184-185kcalに調整すると、
カルシウムの量は、国産 89mg、アメリカ産 106mg、中国産 80mg、ブラジル産 111mg となります*1)。
*エネルギーあたりで調整していたため、それぞれ使用量は国産 49.5g、アメリカ産46g、中国産47.2g ブラジル産44.5gあたりで計算
原料による違いは多少はあるものの、どれも「普通納豆」と大きな違いはなく、ひきわり納豆は製造上、なんらかのカルシウムのロスがあるように思えます。
ただし、この製品差を疑って、成分表5訂(2005年)2)からさかのぼってみましたが、カルシウム・鉄の違いは2005年から20年間変わっていませんでした。
このことから、カルシウムの差は、製造由来の可能性も高いようです。
カルシウム | 理由不明だが、皮由来の可能性は低い |
鉄 | きなこで皮を含むものと含まないものでも差があることから、皮の有無に由来する可能性がある。 |
ビタミンKの違いは納豆発酵
ビタミンKの量は、ひきわりのほうが6.9% 多い とされています。
これは、発酵によるものだといわれています。
尚、納豆のビタミンKの検査方法は少し複雑です。これは食品成分表5訂の増補から、メナキノン7という成分を含んで抽出、計算できるようになりました2)。
「日本食品標準成分表 2020 年版(八訂) 分析マニュアル」に計算式が書いてあります3)が、このように納豆はビタミンKのフィロキノン(K1)だけではなく、メナキノン類(K2)も計算するためふとても複雑です。
さて、このメナキノンは、大豆本来にはほとんど含まれないのですが、Natto菌で発酵することによって大量の メナキノン-7が生成されることがわかっています4)。
とても面白いですよね。
このようにビタミンK2(メナキノン)はNatto菌(Bacillus subtilis natto)によって増えるため、
砕けていてより断面が多いひきわり納豆のほうがメナキノンが生成されやすいのではないか と推測できます。
複合的な理由にあり?
つまり、理由はさまざまですが、皮に含まれる分+加工中の溶出+製品差 → これらが重なって「普通納豆>ひきわり納豆」として数値化されているようです。
まとめるなら、
- 普通納豆=皮あり → 食物繊維が残る
- 普通納豆=皮に守られたまま加工→ミネラルが残りやすい
- ひきわり納豆=皮なし → 発酵でビタミンKが増えやすい
- つまり「加工や発酵のされ方の違い」で栄養に差が出る
食べやすさと消化の違い
ここで忘れてはいけないのは、結論を急いで、「〇〇を摂るなら、粒納豆!」などと決めてはいけません。
栄養だけではなく、「噛みやすさ」や「嗜好」、「調理のしやすさ」などをトータル的に考えることが大切です。

管理栄養士
ビタミンKは粒納豆よりひきわり納豆に多いということは、あっていますよね?
ビタミンKは粒納豆よりひきわり納豆に多いということは、あっていますよね?

でも納豆って他の食品と比べると桁違いにビタミンKが多いのです。
ですから、その違いはごくわずかです。
でも納豆って他の食品と比べると桁違いにビタミンKが多いのです。
ですから、その違いはごくわずかです。

管理栄養士
我が家にストックしてあった粒納豆は1パック50gだったのですが、ひきわり納豆は 1パック45gでした。
約11%の違いがあるんですよね。
なので1パックに含まれるビタミンKの量は、ひょっとしたら粒納豆のほうが多いこともあるかもしれないのです。
我が家にストックしてあった粒納豆は1パック50gだったのですが、ひきわり納豆は 1パック45gでした。
約11%の違いがあるんですよね。
なので1パックに含まれるビタミンKの量は、ひょっとしたら粒納豆のほうが多いこともあるかもしれないのです。

管理栄養士
ひきわり納豆は皮がないので、小さいお子さんや高齢者の方などは食べやすいのでおすすめです。
ですが、とても小さな赤ちゃんの場合、つぶつぶ感が苦手だったりしてペースト状にしないと食べられない場合などは、大きい豆のほうがつぶしやすいこともあるかもしれません。
食べやすい方を選んでいただくことが、時には「一番良い栄養」になるかもしれませんね。
食べにくいものを無理やり食べるのではなく、食べやすい方法でより多く摂るほうがいいかもしれませんね。
どちらでも構わないという場合には、ミネラルを多く摂りたい場合には粒納豆がオススメともいえますが、しかしながら皮がある場合は、フィチン酸といってミネラルを吸収しにくくなる成分(食物繊維の一種)がありますので、成分でみて豊富であっても、それが吸収しているかは別問題になります。
まとめ
たしかに、普通の粒納豆と、ひきわり納豆に栄養の違いはあります。
- 普通納豆(粒納豆):カルシウム、鉄、亜鉛などのミネラル、葉酸などのビタミンが多い。食物繊維も皮の分多い。カルシウムが多い理由はわからないが、鉄は皮を含むと多くなる傾向がわかった。
- ひきわり納豆:ビタミンKが普通納豆と比べてわずかに 6.9% 多い
ビタミンKは、どちらも他食品と違いとても多いものであり、いずれも健康に良い食品であることは変わりがありません。
食べやすい方をしっかりとっていきましょう。
参考文献
- 文部科学省.日本食品標準成分表2020年版(八訂)(2025年9月9日 閲覧)
- 文部科学省.五訂増補 日本食品標準成分表
- 文部科学省 科学技術・学術審議会 資源調査分科会 食品成分委員会.日本食品標準成分表 2020 年版(八訂) 分析マニュアル(2025年9月9日 閲覧)
- 佐藤 敏郎 ら. 枯草菌によるメナキノン(ビタミンK2)-7の生産. Journal of Bioscience and Bioengineering. ;91(1):16-20(2025年9月9日 閲覧)
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
記事
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