子どもの偏食や好き嫌いはどうする?解決策を管理栄養士が解説
「うちの子、このまま食べられないままなのかな…?」
「好き嫌いがあっても栄養は大丈夫?」
そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。
けれど、子どもの偏食や好き嫌いは、味覚の発達や自己主張が育つ過程で多くの家庭に起こる、ごく自然な成長の一場面です。
この記事では、子どもが好き嫌いをする理由と、その背景にある発達の特徴、
そして今日からできる無理のない関わり方や工夫を年齢別に紹介します。
読み終わる頃には、「あ、これならできそう」と思えるヒントが見つかれば嬉しいです。
子どもの好き嫌いは成長の1つ
子どもは、食べ物の「好き」「嫌い」がはっきりしてくる時期があります。
これは、味覚が育ち、自分の気持ちを言葉や行動で表せるようになる成長のステップのひとつです。
とはいえ、せっかく作った料理を食べてくれないと、
「どうして食べてくれないの?」と戸惑ったり、
「栄養が偏ってしまうのでは?」と不安になることもありますよね。
でも、こうした好き嫌いは多くの子どもが経験するごく自然な過程で、決して珍しいことではありません。
発達とともに少しずつ食べられるものが増えていくことも多いので、今の段階で過度に心配する必要はないのです。

偏食と好き嫌いの違い
「好き嫌い」と「偏食」は似ているようで、実は意味が異なります。
好き嫌いは、ある食材を好まないものの、同じ仲間の食品で代わりがきく状態のことを指します。
偏食とは、特定の食品を全く口にしようとしない、もしくは特定の食品しか食べないことを指します。
好き嫌いくらいだと、同じ食品群でも他のもので補えればいいのですが、
偏食の場合は栄養も偏りが心配なレベルです。
子どもの偏食はいつまで続く?
「このままずっと食べないままなのかな…」と不安になることもあるかもしれません。
しかし、子どもの偏食にはピークがあり、一般的には2〜5歳頃に強く表れやすいと言われています。
この時期は、味やにおいに敏感な味覚の発達段階であるうえ、自分の意思をはっきり出せるようになる自己主張の芽生えも重なる時期です。そのため、好き嫌いが目立ちやすく、保護者としては戸惑うことが増えてしまうのです。
ただし、多くの子どもは成長とともに食べられるものが増え、偏食や好き嫌いは徐々に落ち着いていくことがほとんどです。
一時的な現象であることが多いので、焦らず、子どものペースに合わせて見守っていくことが大切です。
好き嫌いのおもな原因
子どもの好き嫌いには、いくつかの要因が重なっている場合があります。
ひとつの理由だけでなく、味・におい・見た目・経験・興味の有無などが組み合わさって苦手意識につながることも珍しくありません。
ここでは、よく見られる代表的な原因を紹介します。
お子さんの様子と照らし合わせながら、思い当たる部分がないか確認してみてくださいね。
味・食感・においが苦手
子どもは大人より味覚が敏感で、特定の味や食感に強く反応しやすい時期があります。
苦味のある野菜や、ぬるぬるとしたオクラなどは、その特徴が気になりやすく、拒否につながることもあります。
この段階では、「嫌がる=悪いこと」ではありません。
味覚が育っている最中だからこそ、はっきりと好みが出てくるのです。
見た目が苦手
食べ物の色や形が理由で、口に入れる前から拒否してしまうこともあります。
緑色の野菜や形が不揃いな食材は、「なんとなくイヤ」と感じてしまう子も少なくありません。
はじめて食べる食材が怖い
新しい食材に対する抵抗感も、苦手になる原因となることがあります。
これは実は当たり前のことで、危険回避のための防御本能の1つです。
例えば、初めて見る野菜や果物は、警戒心から食べたがらないことがありますが、
これは、私たち大人でも海外旅行で知らない食材が出てきたら食べることを少し恐れることとほぼ同じです。
この場合、少量ずつ試してみたり、親が一緒に食べて見せることで、安心感を与えることが有効です。
また、事前に絵本やお話しで知っている食材を増やしておくと、
「あ!あの食材だな」とわかることもあるかもしれませんので、事前学習も効果的でしょう。
食べ物のトラウマ
過去に食べて嫌な思いをした食材に対して、トラウマを持つこともあります。
専門的には「食物嫌悪学習」と呼ばれ、食べた経験と嫌な感情が結びつくことで起こります。
例えば、そのものを食べて吐いてしまった経験があると、その食材を避けるようになります。これは、その子自身ではなくても、お友達が吐いてしまったなどがあると、まるで自分の経験のように苦手になってしまうこともあります。
この場合、無理に食べさせず、時間をかけて少しずつ慣れさせることが大切で、少しずつ嫌いな感情を忘れられるように、楽しい学習に無理なく変えていく必要があります。
例えば楽しいパーティーの時に少しだけ中にいれてみるものも用意してみて、数日後に種明かしをしてみて、食べられていたよねーと言ってみたりするのもいいかもしれませんね。
食べることに興味がない
食べること自体に興味がない子どもがいると思っているかもしれませんね。
たしかに、食の興味に差はあります。もし、そう感じたら2つ工夫の方法があります。
1. テレビや遊びに夢中にならないように、食事時間や環境を整える
2. 大人や兄弟がおいしいねーと言いながら楽しそうに食事をしているシーンをたくさん見せる
いかがでしょうか。
子どもの食事の用意ばかりに気を配って、ママパパの食事を楽しんでいないことはありませんか?
子どものためにも健康には気を付けたいので、楽しい食事時間をもつことが大切です。
その時にお子さんが食べなくても、気にせずに焦らず待てるといいですね。怒らないこともポイントです。
その時にお子さんが食べなくても、気にせずに焦らず待てるといいですね。怒らないこともポイントです。
管理栄養士
食器類を上手に扱えない
子どもはまだまだ手指の発達をしている途中なので、スプーンやフォーク、お箸などを上手に使えないことがありますよね。
ママパパよりも実は子ども自身がそれをストレスに感じてしまい、「食べるのがいやだ!」と感じてしまうことがあります。
例えば、スプーンやフォークをうまく使えず、食べ物をこぼしてしまうことがありますが、
この場合、ちょっとお皿のふちがそりかえったものを選んでみたり、少し補助をしてあげたりするといいですね。
また普段の遊びの中でもスコップ(シャベル)などですくってみるような遊びなども有効だったりします。
苦手で食事が進みにくい食材こそ、「手づかみで食べてみてもいいよー」と声掛けをすることで、
スナック感覚で食べることができるかもしれませんので、たまには手づかみOKも効果があるかもしれませんね。

子どもの好き嫌いはどう対処すればいい?
大丈夫とはいえ、好き嫌いの対処の方法を知りたいですよね。ちょっとした工夫をお伝えします。
舌触りや食感が良くなる工夫
子どもが嫌がる食材でも、調理方法を工夫することで食べやすくなることがあります。
例えば、
- オクラは唐揚げにすることで、粘りが気になりにくくなります(ただし、破裂しないように竹串などで空気穴をあけてください。また油分が多いため食べすぎには注意です)
- 野菜が苦手な場合、ポタージュにして滑らかな食感にする、細かく刻んでスープに入れる、
- 柔らかく煮込んでペースト状にする
などの方法があります。
特にブロッコリーや人参など、食感が独特な野菜はこのような工夫で受け入れやすくなります。
2歳から5歳のお子さんは、食感に敏感な時期ですので、こうした工夫が効果的です。
味付けを変える工夫
いつもと違う味付けを試してみるのも一つの方法です。
例えば、
- カレー
- トマトソース
- ポン酢
- ホワイトソース
など、強い味付けのもので食べやすくすることができます。
もちろん、すべて濃い味にしてしまうと、濃い味に慣れすぎてしまい、塩や砂糖などの摂りすぎも心配です。
しかしながら、「苦手なものこそ濃い味付けで」と覚えておき、食べやすいものは薄味にできるといいでしょう。
苦手な原因を聞く
まず、子どもが特定の食べ物を嫌がる理由を直接聞いてみましょう。
例えば、食感や匂いが嫌いだったり、過去にその食べ物で嫌な経験をしたことがあるかもしれません。
また、同じものしか食べない場合、その食べ物が好きな理由も聞いてみると良いでしょう。
例えば、魚のにおいや、発酵食品のにおいが苦手な子どもがいます。
この場合、においを抑える調理法や、他の食材と組み合わせてにおいを和らげる方法を試してみましょう。
見た目が苦手な場合は、盛り付けや形を工夫して、興味が持てる見た目に変えることで受け入れやすくなることがあります。
カラフルな盛り付けや、キャラクターの形にすることも一つの方法です。
また、食べ物に関する絵本やお話を通じて事前に情報を知っておくと、「見たことのある食材だ」と思えて安心につながることがあります。
管理栄養士
一緒に買い物や料理をする
子どもと一緒に買い物や料理をすることで、食べ物に対する興味を引き出すことができます。
自分で選んだ食材や作った料理には、自然と愛着が湧き、食べる意欲が高まります。
また、料理前の食材を見ることで「これだったら大丈夫!」と思うこともあります。自分で育てた野菜を食べられるようになるのと同じ感覚です。特に3歳以上の子どもは、簡単な料理の手伝いができるようになります。
【関連記事】子どもの好き嫌い対策案*料理のお手伝い
美味しそうに食べる姿を見せる
親が美味しそうに食べる姿を見せることで、子どももその食べ物に興味を持つことがあります。
見た目や匂い、初めて食べるものだから食べたくない、食べることに興味がないといった場合でも、
親が楽しそうに食べる姿を見ることで、食事に興味を持つきっかけになります。
生活リズムと食事のリズムを整える
規則正しい生活リズムと食事のリズムを整えることも重要です。
決まった時間に食事を摂ることで、子どもの体内時計が整い、食欲が安定します。
特に幼児期は、生活リズムが乱れると食欲にも影響が出やすいので注意が必要です。生活リズムが乱れている場合は、早寝早起きや決まった時間に食事を摂る習慣をつけることで、自然と食事の時間にお腹が空くようになることもあります。
≫【関連記事】幼児食の悩み:子どもの好き嫌い解決!見直したい5つのポイント
好き嫌い改善には保護者の気持ちも大切!
好き嫌いを少しでもなくしたいなと思ったら、まず考えたいのは、保護者側の捉え方です。
少し難しいですが、食べて欲しいという気持ちが先行しすぎると、かえって大変になってしまうので、ぐっとこらえることもいいかもしれません。
食べることを強要しないこと
子どもに食べることを強要すると、食事がストレスになり、逆に偏食が悪化することがあります。
無理に食べさせようとせず、子どもが自分から食べたいと思うように促すことが大切です。
例えば、食卓に色々な食材を並べて、子どもが興味を持ったものから試してもらう方法があります。
食べることを楽しむ環境を作ることで、食の幅がぐんと広がるかもしれませんね。
怒らない・叱らないこと
偏食に対して怒ったり叱ったりすると、子どもは食事に対してネガティブな感情を抱くようになります。
食事の時間は楽しい時間でありたいですよね。
お子さんが食べられない食材があっても、焦らずに少しずつ慣れさせることが大切です。
褒めることでお子さんの自信を育てたり、食べることへの興味を引き出すことができます。
よくある質問
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偏食は放っておいても大丈夫ですか?
一時的なことが多いですが、同じ食品群でほかのものを食べているかはご確認を。体重減少・極端な食品拒否・食事への恐怖が見られる場合は専門家へ相談をお願いします。
-
好き嫌いは何歳頃までに改善しますか?
多くの場合は、5〜6歳頃に食べられるものが増えていきますがペースには個人差がありますので、あまり年齢にこだわらないほうがいいでしょう。大人でも好き嫌いを抱えている方もいます。「こういう食べ方なら食べられる」という調理方法で改善できるすべを知るのもいいですね。
-
食べないとき、無理に食べさせたほうがいい?
無理強いは逆効果。食卓の雰囲気が好き嫌いを固定化することもあります。
-
同じものばかり食べている場合、栄養は偏りますか?
食品群の中で代替できる場合は大きな心配はいりません。しかし、長い間同じものだけという偏りが続くと不足が出る可能性がありますので調理法を変えたりして、「食べられるようになるチャンス」はあるようにしましょう。
-
せっかく作ったのに、子どもが食べてくれなくてイライラします。
ほんとうにそうですよね。頑張って作ったのに・・と思いますよね。ただ、その思いが強すぎると、親のストレスが雰囲気に影響することもあるんです。もしストレスになりそうなら、作らないでも大丈夫です。お惣菜などを使ってみてもいいかもしれませんね。食事の量や完食にこだわりすぎず、楽しい時間を意識してみてください。難しいですけどね…
まとめ:あくまでも一例であることを忘れずに
好き嫌いの解決は、1つではありません。原因も複数あるために、1度で解決できるものではありません。
お友達や知り合いが、こうやったら食べられるようになった!という事例を教えてくれることもあるでしょう。
それはあくまでも一例にすぎませんので、「ふーん そういうこともあるんだな」くらいにとどめておくことがとても大切です。
この記事も同じです。
「こういう理屈なんだな。」「こういうこともあるかもしれないけど気長に構えてみよう。」という程度にとらえていただけますと幸いです。
好き嫌いを決めつけないことが大切です。
「まだ美味しさがわからないだけ」ととらえてみましょうね。
著者のプロフィール

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一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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