魚を食べると頭がよくなるって本当!?
「魚を食べると頭がよくなる」という歌があるように、子どもたちにもつい「お魚を食べると頭がよくなるから食べなさい」などといってしまったりしますよね。
魚に含まれるDHA成分は、頭がよくなるか
魚に多く含まれるDHAという成分は、「頭がよくなる」「脳にいい」と聞いたことはありませんか?
有名な歌にもあるので、「魚を食べると頭がよくなる」と思っている人は多いのではないでしょうか?
このような、「○○を食べたら、○○がよくなる」というものに関して、すぐに情報に飛びつくようなことがないように、少し冷静になって考えることが大切です。
何が正しいのか把握するまでに時間と労力が必要な時代ですが、今だからこそしっかり考えたいですね。
魚に多く含まれるDHA
魚に含まれる成分で「脳にイイ」として有名なのは、DHAです。
では、DHAとはどのような成分なのでしょうか。
DHAとは、不飽和脂肪酸の1種で、ヒトの脳には欠かせないものです。
脳にある神経細胞(情報を伝達する細胞)はDHAなどで作られているため、脳にDHAが多いと、この神経細胞がより情報伝達しやすくなることで、さまざまな情報が伝わりやすくなるといわれています。
例えば、見たもの、聞いたことなどをスピーディーに判断したり、記憶領域にいれたりすることができるといわれています。
DHAを多く含む魚
DHAは、さんま、いわし、まぐろ、かつおなど脂を多く含む青魚や赤身魚に含まれています。
脂がよくのっているものに多く含まれています。
上記のものは「特に多く入っている」ということであり、DHAやEPAなどの脂が含まれている魚は他にもたくさんあります。
DHAと学力に関する文献
DHAと学力については、沢山の文献がでています。
有名な実験は、モリス水迷路試験において、DHAを与えたラットは、与えないラットよりも餌の位置を記憶しやすかったというものです。
ほかにも、学力に違いがでた研究は、脂肪酸の摂取内容を変えることで、睡眠の質があがり、運動が良くなることで成績向上にも影響があるかもしれない3)というデータもあります。しかしながら本データの中では、朝食をとることや和食が有効であることが書かれています2)。
また、DHAを投与すると学生のストレスに対する敵意制を抑制できている3)ことや、他にもDHAを投与するとテスト中の緊張が軽減された4)という事例があります。
DHAは血液中にある程度一定に保たれるため、食べたからといってDHAが大幅にあがることはない とされていることもあり、魚に含まれるDHAというよりも、EPAが有効であるだろうとされる説もあります。5) この情報には、成長期にはDHAは脳を形成する上で必要だともしています。
また別の発表では、「DHAが欠乏すると、加齢に伴う脳機能異常、アルツハイマー病、うつ病などを誘発するとして、摂取が不足すると認知・学習機能を低下し、DHAを摂取によりこの機能は回復する」6)としているものもあります。
本発表の中には、「DHA入り人工乳を与えた早産児の方が与えない早産児に比べて8歳でのIQが高く、DHA入り人工乳で育った未熟児では、DHAの入らない人工乳で育った未熟児と比べて脳の発達や機能が良く、また、乳児の脳内DHA量は妊婦の魚油摂取量の増加に伴い増加し、脳機能の発達に有利であることが明らかにされている。」
とあります。これは未熟児であることや、ミルクの場合です。母乳にはDHAが豊富に含まれていますし、現在育児用ミルクにはDHAが含まれていますので、心配はいらないでしょう。
これらの研究発表などから、脳の発達には、DHAが欠かせないと言えますが、
実際にヒトが、DHAを多めに摂取することで
・テストの点数があがった
・記憶力が改善された
などのデータは今回は見つけることができませんでした。
つまり、容易に「魚を食べると頭がよくなる」とはいえません。
「魚を食べると頭がよくなる」という教えの重要性
しかし、このような状態でも、「魚を食べると頭がよくなる」という教えは、必要かもしれません。
苦手だけど、挑戦してみる魔法の言葉になるかも?
魚は、独特のにおいがあったり、骨があることで食べにくかったりすることで、苦手になってしまうお子さんもいますよね。
例えば、子どもに「好き嫌いなく、いろいろなものを食べて欲しい」という願いの中で、
「魚をたべると頭がよくなるよ」と伝えて食べてもらうことは、食育の1つとしては効果的かもしれませんね。
魚に含まれるたくさんの栄養素を摂りましょう
魚にはカルシウム、ビタミンDなど、骨をつよくする成分や、細胞などをつくるタンパク質なども含まれています。
また、今回着目した魚の不飽和脂肪酸のうち、EPAは、血管系には良い働きがありますし、DHAにもうつや精神的なメリットがあるのではないかと注目を集めています。
精神的に落ち着けば、勉強にも集中できるでしょうし、一概に、「頭がよくなるわけではない」とも言い切れないと思います。
魚に含まれる栄養素を摂ることは体をしっかり作り、成長を助けますので、しっかり食べてもらうために、いろいろな手法をとっていきたいですよね。
情報に左右されることなく、いろいろなものをしっかり摂り、そして「魚ばっかり」「肉ばっかり」という偏った食事をすることないように伝えていきたいですね。
参考文献
1)日本食品標準成分表2019
2)藤原,学業成績と脂質栄養との関連,脂質栄養学,2011 年 20 巻 1 号 p. 35-46
3)n-3系脂肪酸の新しい作用機序,日本農芸化学会誌 Vol.72, No.7, pp.846~848, 1998
4)北折一,食のメディアリテラシー
5)さらさら生活向上委員会
6)橋本,ドコサヘキサエン酸による脳機能改善作用と神経疾患への応用,オレオサイエンス,6 巻 2 号 p. 67-76,2006
著者執筆の記事一覧
-
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
著者の記事
- 2024年11月15日コラムくるみアレルギーが食物アレルギー原因物質2位に!
- 2024年10月12日コラム日本人の食事摂取基準(2025年版)乳幼児での変更点等を解説
- 2024年10月4日コラム野菜ジュースはどんな栄養がある?野菜の代わりになる?管理栄養士解説
- 2024年9月16日コラム子どもの偏食や好き嫌いはどうする?解決策を管理栄養士が解説