夏野菜で体を冷やすってホント?栄養学の観点から検証

今年も暑くなりそうですね。熱中症などににならないよう、どうやって暑さ対策をしようかと考えたいですね。今回は、「夏野菜でからだが冷えるのか?」を皆様と一緒に考えてみたいと思います。

夏野菜とは日本の夏に収穫される野菜

まず、夏野菜とは何かを考えてみましょう。

夏野菜とは、文字通り、日本の夏に収穫される野菜のことで、トマト・キュウリ・ナス・トウモロコシ・オクラ・ピーマン・カボチャなどを指します。

このうちカボチャは7月頃に収穫されるものの、甘くなるまで追熟させるので今回は除いて考えていきますね。
このうちカボチャは7月頃に収穫されるものの、甘くなるまで追熟させるので今回は除いて考えていきますね。
管理栄養士

管理栄養士

日本の夏野菜といえば、トマト、きゅうり、ナス、ピーマンをイメージする人が多いかもしれませんね。

夏野菜は体を冷やす!?

「夏野菜は体を冷やす」と聞いたことはありませんか?私はよく聞きます。

そして熱中症対策といえば、「夏野菜でクールダウン」なども対策の1つとしてあがってきたりもします。

なぜこのようなことがいわれているのでしょうか。漢方医学の考え方なのかもしれませんが、筆者は管理栄養士であるため、いわゆる栄養学の見地からみてみます。

夏野菜だから水分を多く含むということはない

夏野菜の水分含有は9割以上

おもな夏野菜の水分含有率は以下の通りです1)

  • きゅうり:95.4%
  • トマト:94.0%
  • なす:94.0%
  • ピーマン:93.3%

これらの夏野菜は9割以上が水分なのです。だから冷えると書いてある記事はWEB状に本当に多く存在します。

実際に生成AIに効くと、「夏野菜は9割以上が水分なので、体を冷やします!」となります。

さて、本当にそうでしょうか?

水分の多い野菜(夏野菜以外)

夏野菜よりも水分の多い野菜は他にもあります。

水分含有率1)

  • アルファルファ:96.0%
  • 青梗菜:96.0%
  • レタス:95.9%
  • 白菜:95.2%
  • 小松菜:94.1%

上の夏野菜のものと比較してわかりますように、夏野菜が特別水分が多いわけではありません。

どういうことですか?夏野菜は9割以上水なんですよね?すごくないですか?
どういうことですか?夏野菜は9割以上水なんですよね?すごくないですか?
そうなんです。でも、夏野菜に限らず、ほとんどの野菜は、9割以上水分です。見た目がそうなものは水分が少ないです。それでも、にんじんは89%が水分です。ごぼうでも81%が水分。 少ない方にカウントされる、かぼちゃは水分が76.2%ですが、夏に収穫されますよね。
野菜のほとんどは、9割が水分なのです。
そうなんです。でも、夏野菜に限らず、ほとんどの野菜は、9割以上水分です。見た目がそうなものは水分が少ないです。それでも、にんじんは89%が水分です。ごぼうでも81%が水分。 少ない方にカウントされる、かぼちゃは水分が76.2%ですが、夏に収穫されますよね。
野菜のほとんどは、9割が水分なのです。
管理栄養士

管理栄養士

夏野菜 トマトきゅうり 体を冷やす

夏野菜はカリウムが豊富で利尿作用がある?

また、夏野菜はカリウムが豊富で利尿作用があり、体を冷やすされている文章も多く目にします。

さて、カリウムには利尿作用があるのでしょうか。

カリウムはミネラルバランスに欠かせない役割

カリウムは、ナトリウムとともに、細胞の浸透圧を維持するなどの働きをしています。

つまり、体内の水分・ミネラルバランスの維持に重要な役割を果たしているということです。

では、よくある利尿効果もあるのでしょうか。

カリウムの作用|ナトリウムの尿中排泄作用

カリウムは「ナトリウム尿中排泄促進作用」があります。

ナトリウム(塩分)を尿として外に出すことによって血圧を低下させる方向に働きます。

つまり、体内に余分なナトリウムがあれば尿の中にナトリウムをいれてくれます。

カリウムには利尿作用はありません。

厳密に言うと、カリウムには単純な「利尿作用」(尿量を増やす)はありません。

カリウムにあるのは、「ナトリウム利尿作用」(ナトリウムの排泄を促進する)と呼ぶのがより正確です。

夏野菜のカリウム含有量

*可食部100g中のカリウム含有量1)は、下記の通りです。

  • トマト:210mg
  • きゅうり:200mg
  • なす:180mg

そのほかの野菜のカリウム量

  • ほうれんそう(生):690mg
  • ほうれんそう(ゆで):490mg*
  • 冷凍えだまめ:650mg
  • ブロッコリー(生):440mg
  • ブロッコリー(電子レンジ加熱):500mg*

*加熱されたもの100gあたりなので、生とは重量の変化があります

夏野菜は身体を冷やすという根拠はなし

  • 夏野菜は他の野菜と比べて水分が多いわけではない
  • 夏野菜は他の野菜と比べてカリウムが多いわけではない
  • カリウムが多くても利尿効果はない

以上の理由により、「夏野菜は身体を冷やす」ということは栄養学的には根拠が見つかりませんでした。

暑い日には、冷たいまま生で食べられる夏野菜を

しかしながら、夏野菜は冷やして生で食べることができる という最大の利点があります。

夏の暑い時に料理するのは大変ですよね。火の前で汗をかき、倒れてしまっては大変です。

夏野菜のトマトやきゅうりは、冷やしておいたものをそのまま食べることができ、調理の手間もいりません。

【関連レシピ】簡単トマトスープ

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まとめ

夏の暑い日に、麦茶だけ、素麺だけ…ということをしてしまうと、栄養バランスを崩してしまったりします。そんなことがないように、「夏は野菜をしっかり食べよう」という意味で、「夏野菜で身体を冷やそう」というキャッチコピーができたのかもしれませんね。 とてもいいキャッチコピーだと思いますので暑いなと思ったときには、是非夏野菜のトマトやキュウリを冷やして食べてみてください。ひんやりして気持ちよく食欲も進みそうですね!

FAQ

  • Q 夏野菜で体が冷えますか?
    A

    いいえ。夏野菜を食べても身体は冷えません。ですがよく冷えたトマトやキュウリを生のまま食べることは、一時的に口の中を冷やしてくれます。

  • Q 夏野菜の効果的な摂取方法は?
    A

    いわゆる夏野菜と呼ばれる、トマト、きゅうりなとは、生のまま食べることができるのが利点です。暑い中、火を使わずに食べられることは、最大の利点です。

  • Q 身体を冷やす野菜は妊婦は食べない方がいいですか?
    A

    いいえ。そんなことはありません。野菜を食べるから体がひえて、それで妊娠に影響することはありません。
    ただし、冷たい水ばかりをたくさんのんでお腹がいっぱいになってご飯が食べられないということは避けられるといいでしょう。

参考文献

  1. 文部科学省.日本食品標準成分表2020年版(八訂) (URL)(2025年5月28日 閲覧)

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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コラム
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#妊産婦食#野菜
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