切り干し大根、栄養価が高いって本当?

よく「切り干し大根はカルシウムが20倍!」や栄養が豊富!などと言われますが、本当なのでしょうか。
なぜ切り干し大根には栄養が豊富なのか、管理栄養士が解説します。

切り干し大根の栄養

切り干し大根は、大根を細切りにして乾燥させたもので、一部地域では「せん切り大根」などとも言われますが同じ意味です。
生の大根と比べて、栄養素が凝縮されているように見えますが、
実際のところ一概には言えないように思います。

管理栄養士

管理栄養士

切り干し大根とは、大根を切って干したものであり、大根そのままです!
乾燥によって水分が抜けるため、重量あたりの栄養素が増えるだけで、
それほど栄養素自体が増えるわけではありません。

切り干し 大根10g

生の大根と切り干し大根の栄養の比較

100gでの比較

以下の表は、日本食品成分表に基づいた切り干し大根と
生の大根の100gあたりの栄養成分を比較したものです。

栄養素	切り干し大根 (100g)	生の大根 (皮なし) (100g)エネルギー	280 kcal	15 kcal水分	8.4 g	94.6 gカルシウム	500 mg	23 mg鉄	3.1 mg	0.2 mg

上図は同じ100gで比較をしたものです。カルシウムの量は、切り干し大根は500㎎ 、生の大根は23mgなので、
一部情報では、「切り干し大根は、生の大根と比べて20倍のカルシウム!」など言われていますが、実際切り干し大根を100gも食べられませんよね。

そもそも乾燥しているものと生のものの違いがあることを考えましょう。

同じエネルギーで比較

切り干し大根も、生の大根も、同じ大根ですので、同じエネルギーで比較をするといいでしょう。

同じエネルギー(カロリー)で比較をすると、
生の大根100gと切り干し大根5gとがエネルギー同じくらいになります。

次に、生の大根100gと切り干し大根5gを比較した表です。
切り干し大根5gは水分を含むと約100gになるため、同じエネルギー量と水分量で比較できます。

栄養素切り干し大根 (5g)生の大根 (皮なし) (100g)エネルギー14 kcal15 kcal水分0.42 g94.6 gカルシウム25 mg23 mg鉄0.16 mg0.2 mg

このように、切り干し大根は乾燥状態で非常に栄養価が高く見えますが、
実際には元の大根と同じ栄養素を含んでいます。

推定乾燥比率からみる比較

100gあたりで比較すると、水分量が、生の大根とは大きくことなります。これを仮の乾燥率としてみていきましょう。

切り干し大根と生の大根でカルシウムやミネラル量の違い


94.6g、切り干し大根の水分は8.4gとなっています。ここから推定する乾燥度合いからみて、(94.6g/8.4g)で11.2となるので、切り干し大根も(100/11.2)の8.92gとしても計算することができるかもしれません。

乾燥度合いだけで比較がいいのかはわかりませんが、これをみると、カルシウムは約2倍になっていることになりますね。

しかしながら、あくまでこの計算は計算上の話であって、実際の戻した量ではありません。

実際に切り干し大根は、だいたい4-5倍くらいに膨れるかと思いますので、調理後のgであれば、切り干し大根のほうがかなり多いとはいえるでしょう。


乾燥によって重量あたりの栄養素が増えるため、少量でも多くの栄養素を摂取できることが特徴です。

実際食べるときの量で比較

切り干し大根の小鉢にするときは1人分は約15gくらいであり、おでんの大根は1個約80gくらいです。

おでん 大根 切り干し大根

実際に食べやすい量で比較してみますと下図のようになります。

食べやすさで比較

切り干し大根の小鉢1人前分程度と、おでん大根1個の調理前で比べると、
切り干し大根のほうがカルシウムや鉄、エネルギーもたくさん摂取することができます。

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メリットを考えて食べやすい方を選ぼう

乾燥された切り干し大根が栄養価が高いとは一概には言えないものの、
麺のような感覚だったり、ぎゅっとつまったまま食べることができるので、たくさん食べやすいかもしれませんね。

・切り干し大根のメリット:乾燥しているので、保存しやすい

・切り干し大根のデメリット:乾燥しているので硬い

・大根のメリット:煮溶けてやわらかくなりやすい

・大根のデメリット:買い物のときに重い、保管期限が切り干し大根と比べると短い

管理栄養士

管理栄養士

切り干し大根だと喜んで食べるというお子さんも多いですので、
とりいれてみるといいですよね!

まとめ

切り干し大根は栄養価が非常に高く見えますが、
実際には元の大根と同じ栄養素を含んでいるはずです。

しかし、噛み応えなどが変わったり、見た目が変わることによって、食べやすさが人によって変わることもあるでしょう。

乾燥によって重量あたりの栄養素が増えるため、少量でも多くの栄養素を摂取できることが特徴ですが、一方で、20倍多い!などの単純比較はできないことは覚えておいてくださいね。

ポイントは「どちらが食べやすいか?」です。

食材は、よりたくさん摂ることで、栄養計算だけではあらわせないさまざまな栄養素を摂取することができます。

カルシウムや鉄など、単体の栄養素を考えるのではなく、なんとなくのバランスで「ごはん・肉魚・野菜類」がお給食のようなバランスで食べられているかに注目し、その際に野菜が足りないなと思ったら、切り干し大根のような食材をぜひ活用してみてくださいね。

参考文献

栄養計算データ:日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(2024年7月16日)

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川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている