イグノーベル賞で話題!食事で母乳はどう変わる?にんにくの風味

母乳はお母さんの食事や生活によって香りや栄養が変化することが科学的に示されています。

2025年、「母親がニンニクを食べると母乳に匂いが移る」という研究が、ユーモラスな科学賞として知られるイグノーベル賞を受賞しました1)

一見ユーモラスに思えるこの研究ですが、実は「赤ちゃんの味覚や食習慣の形成」に深く関わる研究です。今回はこの研究について、管理栄養士がわかりやすく、実践レベルに落とし込んで解説します。

イグノーベル賞の研究:ニンニクが母乳に移る

以下のような研究です。

  • 米国の研究者 Mennella と Beauchamp は、授乳中の母親にニンニクカプセルを摂取してもらい、その後の母乳を嗅覚パネルが評価しました
  • 結果、摂取から2時間後に母乳の匂いが最も強くなり、赤ちゃんの授乳行動にも影響が出たことが確認されました2)
  • 赤ちゃんは、母乳がニンニク臭を帯びたときに乳首に吸いつく時間が長くなるなど、母乳の風味に敏感に反応していたのです
実際に、にんにく料理をたくさん食べたら、赤ちゃんがおっぱいを噛んだことがあります!
実際に、にんにく料理をたくさん食べたら、赤ちゃんがおっぱいを噛んだことがあります!
そうなのですね。
この研究では、いわゆる「吸いつく時間(授乳時間)が変わった」という研究です。
しかしながら、母乳の量の差はわからない(さまざまな差が考えるため有意差にいたらない)とされています。
飲みにくいから時間が長くかかったのか、飲みやすかったのか…はわからないのですが、いずれにしても風味が変わりそうですね。
そうなのですね。
この研究では、いわゆる「吸いつく時間(授乳時間)が変わった」という研究です。
しかしながら、母乳の量の差はわからない(さまざまな差が考えるため有意差にいたらない)とされています。
飲みにくいから時間が長くかかったのか、飲みやすかったのか…はわからないのですが、いずれにしても風味が変わりそうですね。
管理栄養士

管理栄養士

ニンジンやバニラでも母乳の風味が変わる

Mennellaさんの研究では、母親がにんじんジュースバニラを摂取したときも、母乳や羊水にその風味が移る3)というのもあります。

なんとも面白いなと思います。

また、妊娠中や授乳中に風味を経験した赤ちゃんは、離乳食で同じ風味を与えられたときに嫌がらず、むしろ受け入れやすい傾向を示した3)とされています。

母乳を通じて食事の多様な風味を伝えるのは、赤ちゃんの経験のいしずえになっているとも言えそうですね…(言いすぎでしょうか?)
母乳を通じて食事の多様な風味を伝えるのは、赤ちゃんの経験のいしずえになっているとも言えそうですね…(言いすぎでしょうか?)
管理栄養士

管理栄養士

魚と母乳:DHAはどう影響する?

食事の摂取が母乳に与える影響については、DHAや魚に注目した研究が多数あります。

例えば、ラトビアの研究では「魚を週2回以上食べる母親は、食べない母親に比べて母乳中のDHA濃度が有意に高い」ことが報告されています4)

DHAは赤ちゃんの脳や神経の発達に欠かせない、重要な脂肪酸です。

ですので、授乳期に魚を適度に食べると、赤ちゃんの脳や神経の発達に良いといえるかもしれません。

しかし、これは赤ちゃんにどの程度のDHAが必要なのか、妊娠中からの影響などなど、まだ簡単に結論付けることはできませんので、魚を食べるからいいとはひとことでは結論づけられません。

しかしながら、魚は食材ですので、もし、「魚食べていないな」と思ったら、食べるきっかけにしてみてください。

一方で、においも気になりますよね。

しかし、「魚の匂いが直接母乳に移る」ことを示した明確な研究はみられませんでした。

ニンニクやにんじんに比べると、魚のにおいと母乳に関する研究は、乏しいのが現状です5)

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まとめ

ニンニク・にんじん・バニラは、母乳の風味として移行することがわかっています。

しかしながら、それが授乳量や、母乳の質が上がる下がるなどの問題はわかりません。

ですので、ニンニクを食べたからといって
母乳の「質」ということで表現するような結論付けはできません。

一方で、魚のDHAは母乳の脂肪酸組成を変更し、
DHAをより多く赤ちゃんにあげることができます。

DHAは赤ちゃんの発達に影響があるとされています。

もし、なにか赤ちゃんのためにしたいと考えるなら、ママもしっかり魚を食べるといいかもしれません

いずれにしても、母乳は母親の食事を通じて香りや風味のメッセージを
赤ちゃんに伝えている可能性もあります。

また、母親の食事は赤ちゃんのためだけではなく、
今後のご自身での健康に影響がありますので、しっかりママも栄養をとっていきたいものですね。

参考文献

  1. improbable. イグノーベル賞. improbable. 2025年9月;:(2025年10月1日 閲覧)
  2. Mennella JA, Beauchamp GK. . The transfer of garlic odor into human milk. Pediatrics. 2016年6月;88(4):737-744(2025年10月1日 閲覧)
  3. Mennella JA, Jagnow CP, Beauchamp GK.. Prenatal and postnatal flavor learning by human infants. Pediatrics. ;107(6):E88(2025年10月1日 閲覧)
  4. Aumeistere L, et al.. Fish intake reflects on DHA level in breast milk among Latvian women.. International Breastfeeding Journal . 2018年7月;13: Article number: 33(2025年10月1日 閲覧)
  5. Spill MK, et.Influence of maternal diet on flavor transfer to amniotic fluid and breast milk and children's responses: a systematic review(2025年10月1日 閲覧)


著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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コラム
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#母乳
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