母乳の栄養を考えよう〜母乳の出が良くなる栄養素はある?

母乳にはどんな栄養があるの?なにを食べたら母乳にいいの?と心配になることもありますよね。
管理栄養士の私が、母乳の栄養についてわかりやすく解説いたします。
少し長くなりますがお読みくださると嬉しいです。
まずはじめに、母乳に含まれる栄養を、
その次に母乳分泌のメカニズム
続いて母乳に必要な栄養などについてお話します。

この記事は、「母乳が出ない」「何か食事を変更したら母乳が出るかな?」とご心配な方にむけての内容となっています。
ネット上にはさまざまな情報があり、なにかの食品を摂りたいと思うこともあるかもしれませんね。しかし、そのようなことはありませんので、まずはママが元気でいられるように食事バランスを無理なくとれるようにしたいですね。
この記事は、「母乳が出ない」「何か食事を変更したら母乳が出るかな?」とご心配な方にむけての内容となっています。
ネット上にはさまざまな情報があり、なにかの食品を摂りたいと思うこともあるかもしれませんね。しかし、そのようなことはありませんので、まずはママが元気でいられるように食事バランスを無理なくとれるようにしたいですね。
管理栄養士

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母乳に含まれる栄養は赤ちゃんに最適

世界保健機関(WHO)は、「生後6ヶ月間の完全母乳育児」を推奨しています1)

このように母乳に含まれる栄養は、赤ちゃんには欠かせません。

「赤ちゃんにとって母乳が最適」という言葉は、「母乳じゃないといけない」ということではありません。
ミルクは、なるべく母乳に近づけて作っています。ご心配されないようにお願いします。
(余談ですが、私自身は完全ミルクで育ちました。元気すぎる大人になっています。たった1人の例ではありますが。)
「赤ちゃんにとって母乳が最適」という言葉は、「母乳じゃないといけない」ということではありません。
ミルクは、なるべく母乳に近づけて作っています。ご心配されないようにお願いします。
(余談ですが、私自身は完全ミルクで育ちました。元気すぎる大人になっています。たった1人の例ではありますが。)
管理栄養士

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母乳の栄養成分(母乳・牛乳・ミルクの違い)

母乳の成分を見てみましょう。
育児用ミルクとどう違うのか、牛乳とどう違うのかを比べられるといいですね。

基本成分(100gあたり)

成分名は主な成分と特別記載したい成分を独断で選んでいますので、成分は他にもあります。また成分は多い(高い)ものが良いということではありません。

成分は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年より算出 *育児用ミルクは粉13g+水87mlとして算出しています

成分母乳牛乳育児用
ミルク
特徴
エネルギー (kcal)616168育児用ミルクが少し多い
水分 (g)88.087.486.6ほぼ同等
たんぱく質 (g)1.13.31.4牛乳は母乳の約3倍多い
脂質 (g)3.53.83.8ほぼ同等
炭水化物 (g)7.24.87.3母乳とミルクは多い

母乳や育児用ミルクのたんぱく質は少ないのが特徴です。これは赤ちゃんの腎臓に負担かけにくいようになっています。

また、母乳やミルクに炭水化物が多いと驚く方もいるかもしれませんが、乳糖は赤ちゃんに必要なエネルギー源なので効率よくとることができるように糖類の構成も最適になっています。

ミネラル・ビタミン(100mlあたり)

ミネラル類やビタミン類はこららの限りではありませんが、皆様が知りたいであろう特徴的なものは下記のようになります。

成分母乳牛乳育児用
ミルク
特徴
ミネラル類
カルシウム (mg)27110 48牛乳は母乳の約4倍多い
鉄 (mg)0.040.020.85育児用ミルクのみ強化
ナトリウム (mg)154118牛乳のほうが約2倍多い
カリウム (mg)4815065牛乳のほうが約3倍多い
リン (mg)149329牛乳のほうが3倍以上多い
亜鉛 (mg)0.30.40.4ほぼ同等
ビタミン類
ビタミンC (mg)5126牛乳<母乳<ミルク
β‐カロテン当量
(μg)
12611母乳やミルクは多い
ビタミンD (μg)0.30.31.2ミルクが約4倍多い
ビタミンE (mg)0.40.10.7牛乳には少ない
葉酸 (μg)0511ミルクは多い

脂肪酸組成比較(100gあたり)

脂肪酸名母乳牛乳育児用
ミルク
重要性
飽和脂肪酸 (g)1.322.331.47
一価不飽和脂肪酸(g)1.520.871.10
多価不飽和脂肪酸(g)0.610.120.66摂りたい栄養素(n-3系など)
n-3系
多価不飽和脂肪酸(g)
0.090.020.05α-リノレン酸、DHA、EPAなどは、
母乳に多く含まれます
n-6系
多価不飽和脂肪酸(g)
0.520.100.61リノール酸やアラキドン酸は、
母乳中のに多く含まれます。

【関連記事】脂質の種類などについて記載あり:オイルファーストはからだによい?

以上の表からもわかるように、母乳と牛乳は成分が異なります。
さらに細かくみると糖質やタンパク質の中の組成も異なります。

牛乳は、1歳までごくごく飲ませないようにするとよいとされています3)
その理由は、このように母乳や育児用ミルクと牛乳は成分が異なり、
脂肪酸組成やカルシウム量、糖質量、タンパク質量などが乳児に最適ではないためです。

母乳 栄養 よくなる 食事 ミルク 違い

母乳分泌のメカニズム

血液の赤色を母乳の白色に変更するために必要な栄養があると言われました。本当ですか?
血液の赤色を母乳の白色に変更するために必要な栄養があると言われました。本当ですか?
そのようなことはありません。血液が母乳になるのではなく、血液の一部が利用されるだけですよ。
そのようなことはありません。血液が母乳になるのではなく、血液の一部が利用されるだけですよ。
管理栄養士

管理栄養士

実際にSNSなどをみていると、血液から母乳に変えるのに、〇〇(栄養素)が必要というようなことがまことしやかに言われたりするようですが、そのようなことはありません。

母乳は血液から直接できるわけではありません

母乳は血液がそのまま乳腺に移行してできるのではなく、乳腺の上皮細胞(乳腺細胞)で血液から栄養素や水分を取り込み、それを原料に乳糖・脂肪・タンパク質などを合成して作られます8,9)

例えば、母乳中の主要成分である乳糖(ラクトース)やカゼインは乳腺で合成され、脂肪滴とともに母乳中に分泌されます。

この過程で、血液中の赤色成分であるヘモグロビンや赤血球は基本的に母乳には移行しません。(ごくまれに毛細血管から血液が混じることもありますが基本的には母乳には入りません)

つまり、血液の赤さは母乳を作る過程で使われないので、母乳には含まれないのです。

母乳が「白く見える」理由 母乳の白さは、主に乳脂肪(脂肪滴)とカゼイン(タンパク質)による光の散乱効果によって生まれます。

母乳中の脂肪は微細な粒として乳汁に浮遊し、光を乱反射します。 この乱反射のため、液体は白色や黄白色に見えます。 同様の現象は牛乳でも起きており、牛乳の白さも脂肪滴とカゼインによる光の散乱の結果です。

母乳の質を高める食事のポイント

母乳の出がよくなったり、質がよくなったりする食事のポイントはあるのでしょうか。
その答えは下記の3点に絞られます。それ以外は科学的根拠は薄いといえるでしょう。
情報に惑わされて、心配になることもあるかと思いますが、まずはしっかり休養してゆったりとした気持ちで構えましょう。

1.十分なエネルギー摂取

授乳期は350kcalほど多めに摂る必要があります4)。

これは単純に母乳のエネルギーを生み出す必要があるためです。
厳密に言えば、母乳のエネルギー分よりも産後の体重減少により得られるエネルギーがあるため、必要なエネルギーは母乳本来のエネルギーよりは少し少なくて済む計算になります4)。

2.バランスの取れた食事

なにか特定の食べ物を摂ることによって、栄養バランスが傾くことがあります。

例えば、なにかの食べ物や栄養素がいいと信じて食べることによって、大切な栄養を摂りにくくなったりすることも考えられます。

赤ちゃんにより良い母乳をあげたい、量をふやしたいと思い、なにかよい食べ物をと思うお気持ちはとてもよくわかりますが、残念ながらそのような食品はありませんので、いろいろなものをバランスよく食べて、少しでも多くからだを休ませましょう。
赤ちゃんにより良い母乳をあげたい、量をふやしたいと思い、なにかよい食べ物をと思うお気持ちはとてもよくわかりますが、残念ながらそのような食品はありませんので、いろいろなものをバランスよく食べて、少しでも多くからだを休ませましょう。
管理栄養士

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【関連記事】授乳中のアルコールはどのくらい大丈夫?

【関連記事】妊娠・授乳中、卵・牛乳アレルギー予防できる?

3.適切な水分摂取

母乳は、水分が多く含まれます。

水をとったからといって母乳がでるわけではありませんが、ママの脱水には気を付けたいですね。

母乳を出すために避けたい食品

良い母乳を出したいと思ったら、避けたい食品は以下の3点です

  • アルコール: 母乳に移行するため制限必要ですが、全くダメというわけではありません
  • 過度のカフェイン: コーヒー2-3杯程度までであればOK
  • 喫煙: 母乳の質と量に悪影響

母乳への影響がある食品

揚げ物・脂質

揚げ物や脂質を過度に控える必要はなく、食べても構いませんが、脂質過多は、母乳の質に関係はあります。

研究によると、高脂肪食や脂質の種類が母乳中の脂肪酸構成を短期間で変えることが示されています5)。特にトランス脂肪酸やn-6過多は1-3日間くらいの母乳に影響するとされるものがあります6)

一部情報で「脂肪分の多い食事(揚げ物)や甘いものでも、母乳中の脂肪が原因で乳腺が詰まることはない」などと言われることがあります。

母体が摂取する食事の脂質は母乳量には関係なくても母乳の質には影響はします

出来る限り、脂質の多いものをたくさんに食べることは避け、あくまでも「食事バランス」は考えておくといいでしょう。

また、他には下記のようなものが言われていますが、科学的根拠は不明です。

科学的根拠が不明瞭なもの(避ける必要がないもの)

以下の物は避ける根拠は特にありません。

  • 乳製品や卵:母親側がアレルギー等があって摂取できない場合はもちろん控えて構いませんが、それ以外は控えてはいけません。赤ちゃんのアレルギーが心配だからという理由だけで、卵や乳製品を控えてしまうと、さまざまな栄養の偏りが心配です。
    アレルゲンはごく微量母乳に移行するといわれていますが、だからといって赤ちゃんがアレルギーになりやすくなるというわけではありません7)
  • 香辛料(ニンニクやハーブなど): 一般的な料理での使用であれば問題はありません。
  • 餅: 迷信のようにいわれていますが、特に科学的根拠は見つかりません
  • ケーキなどの洋菓子:多量に食べなければ問題はありません。ただし食事バランスはなんとなく意識して、食事はしっかりとるように注意しましょう
ママが摂る栄養は、食事に影響します。しかし、何でも影響するわけではなく、母乳の成分は一定の栄養もあります。DHAなどの油や、ビタミンミネラルの一部は変動します。
このため、食事バランスを考えて野菜・肉魚類・穀類などをいろいろなものをとる必要があります。1つのものに偏らないでくださいね。
ママが摂る栄養は、食事に影響します。しかし、何でも影響するわけではなく、母乳の成分は一定の栄養もあります。DHAなどの油や、ビタミンミネラルの一部は変動します。
このため、食事バランスを考えて野菜・肉魚類・穀類などをいろいろなものをとる必要があります。1つのものに偏らないでくださいね。
管理栄養士

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よくある質問

  • Q 赤ちゃんは母乳だけで栄養は足りますか?
    A

    生後5ケ月までは母乳だけでほぼ十分です1)2)。足りないのは、ビタミンKです。出生後に投与されるのでそれ以降は心配要りません。また、日光浴が不十分な場合は適宜ビタミンDも必要になることがありますので日光浴を心がけましょう。

    また、6ヶ月以降は少しずつ食事で鉄やエネルギーを補う必要はあります。食事(離乳食)で少しずつ補っていきましょう。

  • Q 母乳の栄養高めるにはどうすればよいですか?
    A

    母乳の栄養を高めるバランスの取れた食事が最も重要です。特別な食品は必要ありません。

  • Q 母乳の出をよくする食べ物はありますか?
    A

    ありません。しかし、食事制限などをしてカロリー制限をしてしまうことは望まれません。しっかり適宜エネルギーを摂取しましょう。また、しっかりと休養すること、水分を適宜とることも必要です。

  • Q 血液の赤色が母乳の白色に変わるのはなぜですか?またそれに必要な栄養素はありますか?
    A

    母乳は血液がそのまま母乳になるのではありません。
    血液の赤い成分のヘモグロビンや赤血球は母乳には移行しません。
    それ以外の栄養素や水分をとりいれ、乳糖・カゼインなどが乳腺で合成され、脂肪滴とともに母乳になります。
    よって、赤が白に変わるのではなく、血液から赤い成分以外のものをとりいれて、

  • Q 授乳中でもケーキを食べてもいいですか?
    A

    はい。食べることは全く問題ありません。
    考えたいのは、食べる量と頻度、そして他の食事を食べられているか?です。 
    育児はとても大変なものです。ご褒美として少し食べる分には全く問題ありませんので、楽しみましょう。

  • Q 母乳の出がよくありません。水分不足でしょうか。水やハーブティなどを飲んだら母乳が出ますか?
    A

    母体が脱水状態になれば、母乳が出にくくなることもあるかと思いますが、尿が出ている状態であれば、特に水分をとったからといって母乳がでるとはいえません。まずは焦る気持ちを一回リラックスさせて、ゆっくり休養し、授乳の姿勢や吸わせ方などをいろいろ試してみましょう。 もし、水分を控えていたということに心当たりがあれば、こまめにとることができるといいですね。

まとめ

  1. 母乳やミルクは牛乳とは違うので、1歳未満では牛乳に置き換えたりしない。
  2. 母親の食事の質や影響は限定的です。なにかに偏ってとるのではなく、バランスの取れた食事を心がけましょう。
  3. 根拠のない食事制限はしないようにしましょう。ネット上には、さまざまな情報がありますが安易にとびつかないようにしましょう。

参考文献

  1. World Health Organization. Infant and young child feeding.. WHO Fact Sheet.. 2024年9月;:(2025年10月23日 閲覧)
  2. 文部科学省.日本食品標準成分表(八訂)増補2023年(2025年10月23日 閲覧)
  3. 厚生労働省.授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)(2025年10月23日 閲覧)
  4. 厚生労働省.日本人の食事摂取基準(2025年版)(2025年10月23日 閲覧)
  5. Francois CA, Connor SL, Wander RC. Connor WE. Acute effects of dietary fatty acids on the fatty acids of human milk. Am J Clin Nutr. ;67:301–8(2025年10月23日 閲覧)
  6. Nasser, R., Stephen, A.M., Goh, Y.K. et al.. The effect of a controlled manipulation of maternal dietary fat intake on medium and long chain fatty acids in human breast milk in Saskatoon, Canada. Int Breastfeed J 5. ;3:(2025年10月23日 閲覧)
  7. 日本小児アレルギー学会.食物アレルギー診療ガイドライン2021(2025年10月23日 閲覧)
  8. Witkowska-Zimny M, et al. . Cells of human breast milk. Cellular & Molecular Biology Letters. ;:(2025年10月23日 閲覧)
  9. 小林 謙. 培養ミルクと乳腺上皮細胞の培養モデル. 乳業技術. ;73:24-34(2025年10月23日 閲覧)

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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