甘酒の効果は本当?子どもはいつから飲めるかを管理栄養士が解説

甘酒は“飲む点滴”と言われるほど体に良い」と聞いたことはありませんか?
SNSや雑誌でも甘酒が紹介される機会が増え、「子どもにも良いのでは?」と考える方もいるかもしれません。ひなまつりなどでも使いますよね。

ですが、甘酒には種類による違いや、与え始める時期の目安、そして摂り方の注意点があります。
なんとなく身体に良さそう…というイメージだけで取り入れてしまうと、思わぬ落とし穴になることも。

この記事では、甘酒の効果のほんとうのところと、
子どもが飲める時期や適量について、管理栄養士の視点からわかりやすく解説します。

読み終える頃には、甘酒との付き合い方がクリアになり、
必要なところだけ上手に活用できるようになると嬉しいです。

甘酒 子ども

甘酒とは?どんな栄養がある?

甘酒は、米を麹で発酵させて作る伝統的な発酵飲料です。

米由来のでんぷんが麹菌の酵素によって分解されることで、でんぷんはブドウ糖に、たんぱく質はアミノ酸へと姿を変え、消化吸収しやすい形になります。

米そのままより体に取り込みやすい状態になるため、「飲む点滴」と呼ばれることがあります。
(もちろん、医療の点滴とは役割も成分も大きく異なります。)

甘酒にはビタミンB群・アミノ酸・オリゴ糖など、
発酵過程で生まれる栄養素が多く含まれている点が特徴です。

また、ビタミンB群は代謝を助けたり、疲労時のエネルギー代謝をサポートする働きがあります。
ごはんより喉ごしがよく、体調を崩しやすい時や食欲が落ちている時でも取り入れやすいことから、昔から栄養補給に使われてきました。

医療的な効果をもつわけではありませんが、発酵による栄養の変化という魅力は、甘酒ならではと言えるでしょう。
医療的な効果をもつわけではありませんが、発酵による栄養の変化という魅力は、甘酒ならではと言えるでしょう。

甘酒には「米麹甘酒」と「酒粕甘酒」の2種類がある

実は、甘酒とひとことで言っても、原料と作り方が異なる2つの種類があります。


ここを理解しておくと、選ぶときや子どもに与えるときの判断がとても楽になります。

● 米麹甘酒(こめこうじあまざけ)

  • 米と米麹を発酵させて作る
  • アルコールは含まれない
  • 自然な甘さが特徴で、砂糖を使わず甘みが出る
    子どもに使う場合はこちらが前提となります

● 酒粕甘酒(さけかすあまざけ)

  • 日本酒を作る過程でできる酒粕に、水や砂糖を加えて作る
  • 微量のアルコールが残る可能性がある
    子どもには不向き。大人向けの飲料として考えましょう

同じ「甘酒」という名前でも、性質は大きく異なります。
とくに育児中は、米麹甘酒を選ぶことが安心のポイントになります。

甘酒の効果は期待できる?本当と誤解の境界線

甘酒は「飲む点滴」と言われたり、腸活や美容に良いと紹介されたりすることが多く、なんとなく体に良い飲み物というイメージが広がっています。
実際に、甘酒には発酵の過程で生まれる栄養素が含まれていますが、すべての健康効果が科学的に確立しているわけではありません。
ここでは、期待できる点広まりやすい誤解を整理してみましょう。

期待できるポイント

● 消化吸収しやすいエネルギー源
発酵によって米のでんぷんがブドウ糖に分解されているため、体に取り込みやすく、疲れや体力低下時のエネルギー補給に向いています。

● からだの代謝を支えるビタミンB群
甘酒には、代謝を助けたり疲労感の軽減に関わるビタミンB群が含まれています。
過度に期待しすぎる必要はありませんが、普段の食生活の中での補助的役割として心強い存在です。

● 腸内環境への働き
発酵過程で生じるオリゴ糖は、善玉菌のエサとなり腸内環境を整える助けになる可能性が指摘されています。
ただし即効性というより、普段の食生活の積み重ねの中で活かせるものと考えると安心です。

誤解されやすいポイント

最近はSNSや広告で、甘酒に対して

  • 飲むだけで痩せる
  • 免疫力が劇的に上がる
  • 美容効果が絶大
  • どんな人にも万能に効く

といったメッセージが見られることがあります。

しかし、これらは科学的な根拠が十分に示されているわけではありません。
甘酒はあくまで食品としての良さがあるのであって、医薬品のような効果を期待できるものではありません。

甘酒を生活に取り入れるときは、

「栄養補給の補助」
「やさしい甘さの選択肢」

この程度にとらえておくと、無理なく上手に使えます。

甘酒はいつから飲める?子どもへの活用と注意点

甘酒は発酵食品として魅力があり、体に良さそうなイメージがありますが、子どもに与える場合は時期と量に注意が必要です。

離乳食期はおすすめできない理由

甘酒は優しい甘さが特徴ですが、離乳食期の子どもには必要のない強い甘味であり、味覚形成にも影響します。
また、飲み物として摂ると糖分を摂りすぎやすく、食事量が減ってしまうこともあります。

そのため、離乳期に甘酒を取り入れる必要はありません

幼児食期以降なら活用できるが、量と頻度に注意

幼児食期(おおむね1歳半~)であれば、甘酒を「甘みの一部」として使うことは可能です。
ただし、ここで大切なのは毎日飲む習慣にしないことです。

日本食品標準成分表では、甘酒はアルコール飲料やジュース類と同じ「し好飲料類」に分類されています。
小さめのコップ1杯(約100g)の甘酒には約81kcal
が含まれ、これは食パン半分程度のエネルギーに相当します2)

甘酒のおすすめレシピ

レシピ

甘酒のごまドレッシング

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    評価

  • 監修: 木下麗子
甘酒のごまドレッシング

ごまドレッシングは作らなくても、甘酒があれば簡単に混ぜるだけで作れます。蒸し野菜やお肉などのソースとしておすすめです

対象 対象
妊産婦食, 離乳食, 幼児食, 学童食
調理時間 調理時間
(準備時間:)

材料 材料

白ねりごま
大さじ2
甘酒
大さじ1
しょうゆ
大さじ1
和風だし(かつお・昆布)
大さじ2

作り方 作り方

  1. Step1

    上記材料を、甘酒とねりごまで少し溶かし、そのあとしょうゆをいれてまぜ、最後に和風だしでとかしながら混ぜ合わせる

レシピ

米粉と甘酒のココアマフィン

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    評価

  • 監修: 木下麗子
米粉と甘酒のココアマフィン

甘酒の甘さをつかってつくる、甘さ控えめのマフィンです。

対象 対象
妊産婦食, 幼児食, 学童食
カテゴリ カテゴリ
おやつ
調理時間 調理時間
(準備時間:)
量の目安 量の目安
マフィンカップ3個分

材料 材料

卵 
2個
米粉
80g
甘酒
50g
こめ油
50g
レーズン
30g
純ココア
5g

作り方 作り方

  1. Step1

    卵は卵黄と卵白に分け、卵白は角がたつくらいのメレンゲにする

    卵は卵黄と卵白に分け、卵白は角がたつくらいのメレンゲにする
  2. Step2

    卵黄は溶きほぐし、甘酒、こめ油としっかり混ぜ合わせる

  3. Step3

    2に米粉と純ココア、細かく刻んだレーズンを加え、混ぜる

  4. Step4

    4. 3に1のメレンゲを4回くらいに分けて入れ、メレンゲをつぶさないように混ぜる

  5. Step5

    5. マフィンカップに流し入れ、180℃のオーブンで22分焼く

手作り甘酒の落とし穴

甘酒は50~60℃で長時間保温という作り方が一般的ですが、糖化を目的としているため、麹菌が死んでしまう温度帯と考えられます。

冷蔵保管時に、生き残った胞子から発芽し、麹菌が活躍することもありますが、密封容器での保管やその衛生状態を考えると、良質な菌の生育より雑菌の繁殖が優勢となる可能性もあります。

長期保存を目的とせず、早めに使い切れる量をこまめに手作りしましょう。

【関連記事】離乳食の味付け・塩分量について管理栄養士解説

【関連記事】化学調味料 無添加とは?消費者庁のガイドラインに学ぶ

よくある質問

  • Q 子どもは甘酒をいつから飲めますか?
    A

    離乳食期には必要ありません。ダメというわけではありませんが、甘酒は甘味が強く、飲みものとして摂ると糖分過多になりやすいためです。
    幼児食期(おおむね1歳半頃)以降であれば、米麹甘酒を少量、おやつや料理の甘みとして使う形がおすすめです。

  • Q 酒粕の甘酒を子どもに与えても大丈夫ですか?
    A

    おすすめできません。
    酒粕甘酒にはアルコールが微量残る可能性があり、子ども向けではありません。
    与える場合は米麹甘酒を選びましょう。

  • Q 甘酒は毎日飲ませてもいいですか?
    A

    毎日は推奨しません。
    100gで約81kcalとエネルギー量が高く、習慣化すると甘味への依存につながる可能性があります。
    「体にいいから」といって食事にプラスするのではなく、甘みの一部として時々使う程度が安心です。

  • Q 手作り甘酒は安全ですか?
    A

    作り方や保管方法によっては、雑菌が繁殖するリスクがあります。
    長期保存を前提にせず、少量ずつ作り、できるだけ早く使い切ることが大切です。

  • Q 甘酒は腸に良いって本当ですか?
    A

    発酵過程で生まれるオリゴ糖が腸内細菌のエサになりやすいと言われています。
    ただし、即効性や劇的な変化を期待するものではなく、日々の食生活の中で活用できる食品と考えると安心です。

まとめ

まとめ:甘酒は“万能薬”ではなく、上手につき合える食品

甘酒は、昔から親しまれてきた発酵食品です。
発酵の力によってブドウ糖やアミノ酸が生まれ、代謝を支えるビタミンB群やオリゴ糖など、魅力ある成分が含まれています。

しかし、健康効果を過度に期待しすぎる必要はありません。
甘酒は医療目的の点滴とは違い、あくまでも品として栄養や甘みを楽しむ存在です。

子どもに使う場合は、

  • 米麹甘酒を選ぶこと
  • 甘味の一部として少量を活用すること
  • 毎日ではなく、時々取り入れる程度にすること

この3つを意識すれば、上手に生活に取り入れられます。

伝統的な食文化としての甘酒は、
「体にいいから」ではなく、
「こういう背景があって飲まれてきた」というやさしい知識とともに受け継いでいきたいもの。

無理なく、ちょうどいい距離感で。
甘酒は、そんなつきあい方が似合う食品です。

参考文献

  1. 文部科学省.カビとは(基礎編)(2018年2月13日 閲覧)
  2. 文部科学省. 食品群別留意点「し好飲料類」. 日本食品標準成分表 . ;:(2018年2月13日 閲覧)

著者のプロフィール

川口由美子
川口由美子
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
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