赤色3号:食品添加物の安全性と日本の対応
食品添加物の安全性について、最近話題になっているのが「アメリカで赤色3号が使用禁止となった」というニュースです1)。
日本ではどうなのでしょうか?
なぜ規制されないのかと不安になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、赤色3号の安全性と日本の対応について詳しく見ていきましょう。
アメリカで赤色3号がの使用禁止の背景
アメリカ食品医薬品局(FDA)が、赤色3号の食品および経口薬への使用を禁止すると
2025年1月15日に発表しました2)。
禁止されるようになった理由として、
ラットを使った実験で発がん性が確認されたため1)と一部報道では書かれています。
原著やその元論文をみることによると、
赤色 3 号が雄ラットでがん(悪性腫瘍)を引き起こことはあれど、
人間では発生しないと結論づけられていました。また、実験では、赤色3号(エリスロシン)を5%添加したエサを与えたものは、ラット特有のホルモン機構により、甲状腺腫瘍がみられたとしていますが、
2.5%添加のエサを1年あたえてもガンの発生は見られなかったようです2)。
いずれにしても、今回のFDAでは、科学的情報に基づいたものではなく、
嘆願書(color additive petition)によるものだとしています2)。
赤色3号を使用することで、ヒトがガンになるなど、
なにかヒトに危険が及ぶということは入手可能な科学的情報によって裏付けられていない
と結論づけられています2)。
赤色3号は何に使われている?
アメリカでは、キャンディー、飲料、さくらんぼ缶などに使われているそうです1)。
しかし、日本ではほとんど使われておらず、
原料メーカーによると、かまぼこ、漬物に使えるとされていますが、
厚生労働省の実際の買い物調査によると、日本では魚加工品にそのような商品があるようです5)。
筆者が調べた限りでは、日本で赤色3号を使っている食品はみつけられませんでした。
他の色素は大丈夫?
赤色3号以外の、色素は大丈夫なのでしょうか?これらのものは「タール色素」といいます。
化粧品などに使われるものは 88種類。
食用に使われる食用タール色素は 12種類です。
管理栄養士
食用タール色素とは、
日本では「食品衛生法第25条第1項」で政令で定めるものに指定されているので、
毎年検査されています3)。
心配なときはこれらが適正か、どんな試験なのか・・・などを見てみるのもいいですね。
他にも、海外とは違う理由があります。それが、下に示す、マーケットバスケットの考え方です。
心配なときはこれらが適正か、どんな試験なのか・・・などを見てみるのもいいですね。
他にも、海外とは違う理由があります。それが、下に示す、マーケットバスケットの考え方です。
管理栄養士
日本は、赤色3号が問題ないとしている理由
日本の厚生労働省は赤色3号を「天然に存在しない添加物」に分類していますが、
食品添加物としての使用を認めています。
つまり、日本の消費者庁では赤色3号について問題ないと判断しています。
その理由は「マーケットバスケット」の評価が大きくかかわっています。
マーケットバスケット方式とは
マーケットバスケット方式とは、実際の食品摂取量に基づいて添加物の摂取量を推定する方法4)です。
この方法では、以下の手順で調査が行われます:
- スーパーなどで一般的に売られている食品を購入する
- 購入した食品に含まれる食品添加物量を分析・測定する
- 平均的な1日当たりの食品摂取量を乗じて、添加物の摂取量を算出する
厚生労働省は、この方式を用いて定期的に食品添加物の一日摂取量調査を実施しています4)。
実際にどんなものが売られているのか、生活レベルで調査をする必要があるんですね。
実際にどんなものが売られているのか、生活レベルで調査をする必要があるんですね。
管理栄養士
日本での赤色3号の使用状況
日本では、赤色3号の使用量が非常に少ないことが分かっています。
令和2年度マーケットバスケット方式による摂取量調査によると、赤色3号の摂取量はほぼ0に近い、0.001(㎎/人/日)でした。
赤色3号の日本の安全基準
日本の赤色3号の安全基準(1日摂取許容量)は
ADI:0-0.1(mg/kg体重/日)5)
なので、(ADIの上限)×(58.8(20歳以上の人の平均体重、kg))として計算すると、
1人当たりの1日摂取許容量:6(mg/人/日)
となります5)。
つまり、1日摂取許容量が1人あたり6㎎のところ、実際の摂取は0.001㎎のため、
日本人は、いわゆる安全基準の0.02%程度の摂取しかないのが現状です5)。
安全性の考え方
食品安全委員会では、食品添加物の安全性は、”科学的な根拠が必要”としています。
下記の記載がとても良い文章だと思うので、引用します。
観察された毒性や体内での残留性等が、栄養状態等の添加物以外による偶発的な影響ではなく、添加物の持つ特性であることを科学的に考察する必要がある。
食品安全委員会「添加物に関する食品健康影響評価指針」5)
「量」の概念を忘れずに
現時点で、日本において認められている添加物は、人が食べても問題のない量(ADI)のごくわずかしか摂取していないのが現状です。
しかし、「適度におそれ、同じものばかりを食べない」必要もあるのかと筆者は考えます。
たとえば、一般的に食べている量をあきらかに超えれば安全といえないこともあります。
管理栄養士
例えば、通常考えられる量の100倍量を毎日食べるなどがあれば、問題が生じる可能性もゼロではありません。
そのようなことが起きないようにするために、
よく、栄養士は「バランスよくいろいろなものを食べましょう」といいます。
これは栄養素の話をするときにも用いますが、添加物が気になるときにも同様のことがいえます。
例えば、着色料が多く入っている食べものの、その色素の部分だけで1日のエネルギー全部を補っているような状況であれば、安全とは言い切れないかもしれません。
一つの食品添加物に偏らず、バランスの取れた食生活を心がけることが重要です。
まとめ
赤色3号などを含む食用タール色素は、日本での使用量が少ないことや、マーケットバスケット方式による評価結果から、現時点では安全性に問題がないと判断されています。
私たち消費者は、特定の食品や添加物に過度に偏らず、バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。
心配であれば、その気になるものばかりを食べすぎないようにしましょう。
参考文献
1)CNN.co.jp「食品や飲料の「赤色3号」使用、米FDAが禁止」2025年1月15日(2025年1月16日閲覧)
2) FDA,Program, Human Foods ,FDA to Revoke Authorization for the Use of Red No. 3 in Food and Ingested Drugs,2025年1月15日(2025年1月16日閲覧)
3)厚生労働省「食品衛生法第25条第1項に基づくタール色素の検査結果」(2025年1月17日閲覧)
4) 厚生労働省「マーケットバスケット方式による年齢層別食品添加物の一日摂取量の調査」(2025年1月17日閲覧)
5)令和2年度マーケットバスケット方式による保存料及び着色料の摂取量調査の結果について (2025年1月17日閲覧)
6)食品安全委員会「添加物に関する食品健康影響評価指針」2021年9月(2010年5月の全部改正)(2025年1月17日閲覧)
著者執筆の記事一覧
-
一般社団法人 母子栄養協会 代表理事
女子栄養大学 生涯学習講師
NHK「すくすく子育て」他 出演
女子栄養大学 卒(小児栄養学研究室)。企業にて離乳食の開発を行ったのち独立、管理栄養士として多くの離乳食相談を聞き、母親に寄り添った講演会を開いている
著者の記事
- 2025年1月17日コラム赤色3号:食品添加物の安全性と日本の対応
- 2025年1月12日コラム令和5年「国民健康・栄養調査」の結果と考察
- 2024年12月18日レシピフリージングおかゆの冷凍法、解凍法
- 2024年12月13日コラム減塩食をおいしく楽しめるスプーン「エレキソルト」で感じたこと
お問い合わせ
母子栄養協会のWebサイトをご覧いただきありがとうございます。
当協会の事業内容や資格講座についてのお問い合わせは下記のフォームより承ります。